90 / 143
第二章 バスク子爵領
第九十話 ブレットとの決戦
しおりを挟む
悔しそうな表情をしているブレッドに向けて、リンさんが再度通告した。
一応形式的なものだろう。
「国家指名手配犯ブレッド、今一度無条件降伏を勧める」
すると、ブレッドは開き直った様に俺達に話しかけてきた。
「ははは、最初から死刑が分かっているのだ。俺にもプライドってものがある。ここは一つ大暴れさせて貰うぞ」
俺達にそう言うと、ブレッドは胸元から薬を取り出して飲み込んだ。
「グゴゴゴゴ」
たちまちブレッドの体は異質に盛り上がり、着ている服も千切れていく。
「サトー、今じゃ」
「ブレッド、俺がただ単に引き下がる訳ないだろう、が!」
キラーン。
「グオオオ!」
ブレッドが魔獣化したタイミングで、俺はビアンカ殿下の合図と共に溜めておいた魔力を使って状態異常回復の魔法を使った。
既に大犯罪を犯しているブレッドの事だ。
状態異常回復の魔法をかけられても、人間に戻る事はないだろう。
「グフ、グォー」
「ふむ、妾達の目論見通りじゃ。魔獣化の途中で状態異常回復をかけられたから、中途半端な魔獣化になっておる」
「確かに、この作戦はかなり有効ですね」
魔獣化の薬を飲むと急激に身体が異常に発達する為、全ての魔獣化を止める事は出来ない。
しかしバルガス公爵領の時のバンの様に、完全に魔獣化をするのを防ぐ事ができた。
「ビアンカ殿下、流石に疲れたので後衛に下がります」
「うむ、サトーよ良くやったのじゃ。後は妾達に任せて、スライム達の指揮に専念せよ」
ビアンカ殿下だけでなく、エステル殿下やマルクさんも前に出た。
そして、この人も動き出した。
「さて、ここからは私達も戦いましょう」
「「はい」」
リンさんがスラリと剣を抜いて構えた。
そして、オリガさんとガルフさんも盾と剣を構えている。
「「ブルル」」
俺達の事を忘れてはいけないよと、二頭の馬もやる気を見せていた。
「私は念の為に、後衛に下がる。リンよ、思いっきりやるのだ」
「はい、お兄様」
そして、俺の隣にやってきたラルフ様から、リンさんに檄が飛んだ。
一瞬にしてこちらも陣形を作り、一気に攻撃を仕掛ける。
俺以外のメンバーは大して疲れていないし休憩も取れたので、とても元気一杯だ。
「ぶどう、グラビティを。あんこはブライトネスとサイレスを」
ブォン。
「グォ? グア?」
先ずは補助魔法が得意なスライムのぶどうとあんこによって、ブレッドの動きを封じ込める。
ブレッドは突然目と耳が使えなくなり、更には体が重くなってかなり混乱している。
「ではいくぞ!」
バリバリバリバリ。
「グシャアー!」
ビアンカ殿下の先制の雷撃が、ブレッドに命中した。
もしブレッドの目が見えたなら雷撃は避けられていた可能性もあるが、今の視力と聴力を奪われたブレッドなら雷撃は当て放題だ。
「せい」
「とう」
ズシャ。
「ギャー」
そして、リンさんとエステル殿下がブレッドの背後から斬りつけた。
ブレッドとしては、突然の激痛で訳が分からないだろう。
それでもブレッドは、腕を振り回してなんとか反撃をしようと試みる。
ガコン。
「させません」
「このくらいなら平気だ」
しかし、乱暴に振り回された腕もオリガさんとガルフさんの盾で簡単に防がれてしまった。
この隙に、マルクさんがブレッドの顔目掛けて短剣を投げつけた。
「ギシャー!」
マルクさんの投げた短剣は、ブレッドの両目を正確に突き刺した。
これでブレッドは、完全に視力を失う事になった。
「一旦離れて下さい。魔法による飽和攻撃を行います」
「「はい」」
俺の指示に従ってオリガさんとマルクさんが素早く離れて、スライム達による魔法の一斉掃射が行われます。
ズドドドドド。
ズドドドドド。
「グオオオ」
流石というか、ブレッドは野生の本能で防御をしてスライム達による魔法の連射を防いでいた。
しかし、俺はスライム達の魔法の連射でブレッドを倒せるとは思っていない。
この魔法の連射は、あくまでも次の攻撃への布石なのだから。
ズドドドドド。
ズドーン。
「グギャアー!」
一瞬スライム達の魔法の連射が止み、その瞬間に魔法障壁を展開した馬二頭がブレッド目掛けて猛スピードで突っ込んできたのだ。
完全に不意を突かれた形のブレッドは、馬の突進をモロに受けて叫びながら宙を舞い、そして地面に激突した。
馬二頭による突進攻撃はとんでもない威力で、地面に落下したブレッドは殆ど動かなくなっていた。
「「はあ!」」
ズドン。
「グフゥ……」
間髪入れず、リンさんとエステル殿下がジャンプして、落下の勢いを利用してブレッドの両胸に剣を突き立てた。
ブレッドは空気の抜ける様な声を出したと思ったら、完全に動かなくなった。
俺は、念の為にブレッドの事を鑑定した。
「ビアンカ殿下、鑑定したらブレッドは死亡と出ています」
「そうか。しかし、今回は作戦が上手くハマったな。殆どブレッドに攻撃させずに倒す事ができたのじゃ」
俺がビアンカ殿下に話をしたのを聞いて、メンバーは剣をしまった。
うまくブレッドの魔獣化の弱体化が成功し、更には視力を奪う事もできた。
今回の戦闘は、ほぼ完勝といえる内容だった。
一応形式的なものだろう。
「国家指名手配犯ブレッド、今一度無条件降伏を勧める」
すると、ブレッドは開き直った様に俺達に話しかけてきた。
「ははは、最初から死刑が分かっているのだ。俺にもプライドってものがある。ここは一つ大暴れさせて貰うぞ」
俺達にそう言うと、ブレッドは胸元から薬を取り出して飲み込んだ。
「グゴゴゴゴ」
たちまちブレッドの体は異質に盛り上がり、着ている服も千切れていく。
「サトー、今じゃ」
「ブレッド、俺がただ単に引き下がる訳ないだろう、が!」
キラーン。
「グオオオ!」
ブレッドが魔獣化したタイミングで、俺はビアンカ殿下の合図と共に溜めておいた魔力を使って状態異常回復の魔法を使った。
既に大犯罪を犯しているブレッドの事だ。
状態異常回復の魔法をかけられても、人間に戻る事はないだろう。
「グフ、グォー」
「ふむ、妾達の目論見通りじゃ。魔獣化の途中で状態異常回復をかけられたから、中途半端な魔獣化になっておる」
「確かに、この作戦はかなり有効ですね」
魔獣化の薬を飲むと急激に身体が異常に発達する為、全ての魔獣化を止める事は出来ない。
しかしバルガス公爵領の時のバンの様に、完全に魔獣化をするのを防ぐ事ができた。
「ビアンカ殿下、流石に疲れたので後衛に下がります」
「うむ、サトーよ良くやったのじゃ。後は妾達に任せて、スライム達の指揮に専念せよ」
ビアンカ殿下だけでなく、エステル殿下やマルクさんも前に出た。
そして、この人も動き出した。
「さて、ここからは私達も戦いましょう」
「「はい」」
リンさんがスラリと剣を抜いて構えた。
そして、オリガさんとガルフさんも盾と剣を構えている。
「「ブルル」」
俺達の事を忘れてはいけないよと、二頭の馬もやる気を見せていた。
「私は念の為に、後衛に下がる。リンよ、思いっきりやるのだ」
「はい、お兄様」
そして、俺の隣にやってきたラルフ様から、リンさんに檄が飛んだ。
一瞬にしてこちらも陣形を作り、一気に攻撃を仕掛ける。
俺以外のメンバーは大して疲れていないし休憩も取れたので、とても元気一杯だ。
「ぶどう、グラビティを。あんこはブライトネスとサイレスを」
ブォン。
「グォ? グア?」
先ずは補助魔法が得意なスライムのぶどうとあんこによって、ブレッドの動きを封じ込める。
ブレッドは突然目と耳が使えなくなり、更には体が重くなってかなり混乱している。
「ではいくぞ!」
バリバリバリバリ。
「グシャアー!」
ビアンカ殿下の先制の雷撃が、ブレッドに命中した。
もしブレッドの目が見えたなら雷撃は避けられていた可能性もあるが、今の視力と聴力を奪われたブレッドなら雷撃は当て放題だ。
「せい」
「とう」
ズシャ。
「ギャー」
そして、リンさんとエステル殿下がブレッドの背後から斬りつけた。
ブレッドとしては、突然の激痛で訳が分からないだろう。
それでもブレッドは、腕を振り回してなんとか反撃をしようと試みる。
ガコン。
「させません」
「このくらいなら平気だ」
しかし、乱暴に振り回された腕もオリガさんとガルフさんの盾で簡単に防がれてしまった。
この隙に、マルクさんがブレッドの顔目掛けて短剣を投げつけた。
「ギシャー!」
マルクさんの投げた短剣は、ブレッドの両目を正確に突き刺した。
これでブレッドは、完全に視力を失う事になった。
「一旦離れて下さい。魔法による飽和攻撃を行います」
「「はい」」
俺の指示に従ってオリガさんとマルクさんが素早く離れて、スライム達による魔法の一斉掃射が行われます。
ズドドドドド。
ズドドドドド。
「グオオオ」
流石というか、ブレッドは野生の本能で防御をしてスライム達による魔法の連射を防いでいた。
しかし、俺はスライム達の魔法の連射でブレッドを倒せるとは思っていない。
この魔法の連射は、あくまでも次の攻撃への布石なのだから。
ズドドドドド。
ズドーン。
「グギャアー!」
一瞬スライム達の魔法の連射が止み、その瞬間に魔法障壁を展開した馬二頭がブレッド目掛けて猛スピードで突っ込んできたのだ。
完全に不意を突かれた形のブレッドは、馬の突進をモロに受けて叫びながら宙を舞い、そして地面に激突した。
馬二頭による突進攻撃はとんでもない威力で、地面に落下したブレッドは殆ど動かなくなっていた。
「「はあ!」」
ズドン。
「グフゥ……」
間髪入れず、リンさんとエステル殿下がジャンプして、落下の勢いを利用してブレッドの両胸に剣を突き立てた。
ブレッドは空気の抜ける様な声を出したと思ったら、完全に動かなくなった。
俺は、念の為にブレッドの事を鑑定した。
「ビアンカ殿下、鑑定したらブレッドは死亡と出ています」
「そうか。しかし、今回は作戦が上手くハマったな。殆どブレッドに攻撃させずに倒す事ができたのじゃ」
俺がビアンカ殿下に話をしたのを聞いて、メンバーは剣をしまった。
うまくブレッドの魔獣化の弱体化が成功し、更には視力を奪う事もできた。
今回の戦闘は、ほぼ完勝といえる内容だった。
80
お気に入りに追加
367
あなたにおすすめの小説
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
異世界転生したので、のんびり冒険したい!
藤なごみ
ファンタジー
アラサーのサラリーマンのサトーは、仕事帰りに道端にいた白い子犬を撫でていた所、事故に巻き込まれてしまい死んでしまった。
実は神様の眷属だった白い子犬にサトーの魂を神様の所に連れて行かれた事により、現世からの輪廻から外れてしまう。
そこで神様からお詫びとして異世界転生を進められ、異世界で生きて行く事になる。
異世界で冒険者をする事になったサトーだか、冒険者登録する前に王族を助けた事により、本人の意図とは関係なく様々な事件に巻き込まれていく。
貴族のしがらみに加えて、異世界を股にかける犯罪組織にも顔を覚えられ、悪戦苦闘する日々。
ちょっとチート気味な仲間に囲まれながらも、チームの頭脳としてサトーは事件に立ち向かって行きます。
いつか訪れるだろうのんびりと冒険をする事が出来る日々を目指して!
……何時になったらのんびり冒険できるのかな?
小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しました(20220930)
おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。
ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。
全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。
もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。
貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。
思いつきで適当に書いてます。
不定期更新です。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる