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第二章 バスク子爵領

第八十八話 強制捜査捜査開始!

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 ビアンカ殿下達が建物の反対側に着いたのを確認して、いよいよ作戦決行です。

「ミケ、音はたてても良いけど、民家を燃やしてはダメだよ」
「ふふふ、そこはバッチリだよ。ここはミケにお任せだよ」
「何かあったら、シロの水魔法で火を消すよ」

 だからシロよ、何かあっては困るんだよ。
 リンさん達も俺達の漫才発言を聞いて、思わず苦笑しているよ。
 では、ミケさん。
 やっちゃって下さい。

「えーい!」

 ズドーン!

「「「な、何だ何だ?」」」

 ミケの必殺技、バーストライジングが天高く放たれた。
 この魔法はあくまでも作戦開始を告げる為の物で、派手な音と火を高く放つ事が目的だ。
 そして、ミケのバーストライジングを合図として、ワース商会にもラルフ様の部隊と馬が突入する事になっている。

 ザッザッザ。

 俺達は、あえて存在を明かす様にゆっくりと建物に向かって歩いていった。
 悪い顔で歩いているから。ある意味俺達の方が悪役って感じだな。

「な、な、何だよ」
「何だ何だ?」
「何が起きているんだ?」

 建物の前にいた冒険者らしい者と玄関を警備していたならず者は、突然打ち上がった猛烈な火柱に度肝を抜かれていた。
 
 ザッザッザ。

 尚も俺達が建物に近づく中、ブレッドだけは動揺する事もなく俺達の顔を睨んでいた。
 そして、俺達が建物の前に着くとリンさんが一歩前で出た。
 ならず者は落ち着きを取り戻して俺達を睨みながら刃物を抜いていたが、新人冒険者と思われる四人の若い男性は尚も俺とブレッドの方を交互に見ながら戸惑っていた。

「国家指名手配犯ブレッドとその一味、組織犯罪と誘拐罪で逮捕並びに強制捜査を行う」
「「「「ええ!」」」」
「「「ぐっ、舐めるな」」」

 リンさんが胸元から捜査命令書を取り出して、ブレッドとならず者に見せつけた。
 新人冒険者は余りの展開に驚いて動けないでいたが、俺達とならず者は直ぐに動き出して戦闘を開始していた。
 そんな中、ブレッドは胸元から何か魔道具を取り出して発動させようとしていた。
 あれは、ビルゴが逃走した時に使用した魔道具と同じでは?
 俺がブレッドを止めようとすると、既に動いていた人がいた。

 シュ。

「ぐっ、しまった」

 シュ、シュ、シュ。
 ばきん!
 シュー、ブスブス。

「失礼致しました」

 マルクさんがブレッドに向けて、優雅に一礼していた。
 マルクさんが投げナイフをブレッドの腕に投げて、ブレッドが投げナイフを叩き落とした際に魔道具を地面に落としたのだ。
 間髪入れずにマルクさんが魔道具目掛けてナイフを投げ、見事転移の魔道具を破壊する事に成功したのだ。
 マルクさんカッコいいと思いつつ、俺は刀を抜いてブレッドに切りかかった。

 ガキン。

「ちっ、中々やる」
「まだまだ若造には負けんよ」

 ブレッドは胸元から素早くダガーを抜き、俺の刀を防いでいた。
 一度俺はブレッドから離れて再度切りかかるが、ブレッドは難なく俺の剣を防いでいた。
 連日のシロとミケとの訓練のお陰で俺の回避力はかなり上がっているので、ブレットの剣を受ける事はない。
 しかし、俺の剣技のレベルがまだまだなので、俺もブレッドに一撃を食らわせる事が出来ないでいた。

「新人冒険者よ、そこから動くでない。壁際にしゃがみこんでおれ」
「はあああ!」
「わ、分かりました。ひい!」

 ドゴン。 

「グフゥ」

 一方、他の人の戦闘は着実に終わりを迎えていた。
 ビアンカ殿下が新人冒険者に指示をさせ座らせると、新人冒険者の直ぐ横にエステル殿下がならず者を吹き飛ばしていた。
 ならず者は建物の壁に激突して、完全に伸びていた。

「ちょやー!」
「えりゃー!」
「ぐへあ」

 ズササササ。

 別のならず者はシロとミケのダブルパンチをモロに受けていて、暗闇の中の街道を転がっていた。
 吹き飛ばされたならず者が死んでいないか、ちょっと心配でもある。

「ふっ」
「はあ」

 ゴキン。

「ぎゃあああ!」

 今度はマルクさんがならず者の鳩尾に強烈な一撃を入れ、ならず者が怯んだ隙にマリリさんがならず者を組み伏せて腕をへし折った。
 余りの痛みに、ならず者は大きな悲鳴を上げていた。
 しかし、流石はマルクさんとマリリさん。
 婚約者だけあって、息のあったコンビネーションだ。
 因みに、オリガさんとマルクさんはリンさんの護衛に徹底していた。
 俺達の役割分担はばっちりだ。
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