異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた！ 〜仲間と一緒に難題を解決します！〜

第二章 バスク子爵領

第八十七話 配置完了

　カラカラカラ。

　ワース商会から出た馬車は、夜の闇の中を進んでいく。
　慎重に進んで行っているのか、かなり遅い速度で馬車は進んでいる。
　その為に、歩きで馬車の後を追っている俺達でも、十分に馬車の後を追えていた。
　そして、馬車はとある場所に入って行った。

「予想通りに、王都側門のスラム街に馬車が入りましたね」
「うむ。ここまでは予想通りじゃが、まだまだ慎重に行かんとならぬぞ」

　小声で話すビアンカ殿下の言う通りだ。
　ここで俺達が焦って変な行動をしてしまえば、今まで準備した全てが台無しになってしまう。
　抜き足差し足忍び足で、俺達は馬車の後を追っています。
　そして、馬車はとある一軒家の前に到着した。
　側から見ると何処にでもありそうな普通の一軒家なのだが、玄関にならず者っぽい人が玄関で辺りを護衛している時点で既にとても怪しい。
　そして俺達は、決定的瞬間を目撃した。

「夜中にご苦労。中に入ってくれ」

　とある男が一軒家から出てきて、御者を務めた新人冒険者っぽい人に声をかけていた。
　建物から出てきた男を見て、俺とシロとミケが直ぐに反応した。

「奴はビルゴの仲間で間違いないですね。鑑定したら、指名手配犯のブレッドと出てきました」
「あのビ○コの仲間に違いないよ」
「新人冒険者講習の時にいた人と、匂いが一緒だよ」

　俺とシロとミケが、ビアンカ殿下とエステル殿下とリンさんの方を向いて話をした。
　自ら決定的な証拠を晒すとは、奴らも詰めが甘いぞ。
　しかしシロとミケよ、敵の名前とは言え良い加減覚えてあげなさい。
　前にも言ったけど、間違えている名前は美味しい幼児も食べられるお菓子の名前だぞ。
　おや？
　俺達の事を、ビアンカ殿下とエステル殿下とリンさんが変人を見る様なジト目で見ているぞ。

「サトー、何であんなに遠くにいる奴を鑑定できるのじゃ？」
「シロちゃんとミケちゃんも、よくあんな遠い所からの臭いが分かったね」
「相変わらず、サトーさんとシロちゃんとミケちゃんは高性能ですね」
「「？」」
「はあ、この際どうでもいいですよ。では行きましょうか」

　シロとミケは悪口を言われていないのではてなマークを頭に浮かべていたが、三人の俺を見る目が変人扱いそのものだ。
　俺はちょっと落ち込みながらも、突入の準備をと伝えた。

「皆宜しくね」
「頑張ってね」
「「「任せて！」」」

　屋敷の裏に配置する騎士と共に、屋敷に忍び込む従魔達が手と触手を振りながら建物に向かって行った。
　そして、建物を挟み込む様にする為に、反対側にも人が移動する。
　メンバーは、ビアンカ殿下とエステル殿下にガルフさんとマルクさん。
　こちらはリンさんを筆頭にして、俺とシロとミケとオリガさんとマリリさんが待機している。
　いよいよ作戦準備は完了です。
　ここからは、俺達も派手に動きます。