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第一章 バルガス公爵領

第五十七話 急いで旅の準備

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 あまり買い物に時間をかけたくないので、今回は市場ではなく商会に向かいます。
 バルガス様が馬車を用意してくれたので、バスク子爵領へ向かうメンバーで乗り込みます。
 行き先は、魔導具屋のおばあさんがいる商店街の会長さんのお店です。
 馬車だと、屋敷からあっという間に商会に到着です。

「おやまあ、久々に見た顔がいるのう」
「「あ、おばあちゃんだ!」」

 ちょうど店頭では、あのおばあさんが椅子に座っていた。
 今日は暖かいし、日向ぼっこするにはちょうど良いのだろう。
 すると、おばあさんは俺達の方を向いてびっくりする話をしてきた。

「そういえば、朝宿で起きた戦闘はお主らが関わっていたんしゃな」
「え? おばあさん、何で知っているのですか?」
「ふぉふぉふぉ、商人は耳が命じゃ。長年商売をやっておると、情報が直ぐに入ってくるのじゃ」
「「おお、おばあちゃん凄い!」

 シロとミケだけでなく、リンさん達も驚いていた。
 商人の情報網って、本当に凄いな。

「おや、皆様お揃いで。何かお求めですか?」

 店頭でお婆さんと話をしていたら、店の奥から息子さんが顔を出してきた。
 ちょうど良い、ここは専門家に品物を選んでもらおう。

「リンさん、バルガス公爵領からバスク子爵領まではどの位かかりますか?」
「馬車でしたら、一泊二日あればバスク子爵領へ着きます。途中、野営になります」
「成程。では会長さん、旅のセットを野営の準備込みで八人分お願いします」
「畏まりました。直ぐにご用意いたします」

 会長さんは、俺の要望を聞いて直ぐに品物の準備を始めた。
 幸いにもテントは全員分あるし、食事の準備に必要な道具も揃っている。
 後は、お隣のお店などで食べ物を買うだけだ。
 水はラムネが水魔法を使って出せるとアピールしていたので、ここはラムネにお任せしよう。
 
「シロとミケは、どうする?」
「おばあちゃんとお話ししているよ」
「お兄ちゃんは?」
「隣の店で買い物しているよ」
「「分かった!」」

 シロとミケに加えて従魔達もおばあさんの元にいる様なので、俺はリーフを連れて食材の買い出しに向かった。

「野菜とかを買っていこう。肉も買うか」
「果物も買って!」
「はいはい、分かりましたよ」

 野菜と肉を買いながら、胸ポケットにいるリーフの要望で果物を幾つか購入する。
 香辛料も売っているし、買っておこう。
 多めに買ったところで、俺のアイテムボックスに入れて置けば問題ない。
 念の為に、タオルや毛布なども多めに購入しておこう。
 これで、食料品とかの買い出しは終了。
 元の商会に戻って、会長さんが用意してくれた荷物を購入してお金を支払った。

「道中馬車で移動されるという事なので、クッションなどを購入される事をお勧めします。また、酔い止めなどもお勧めします」
「確かに長時間座りっぱなしになるので、クッションと酔い止めもあった方が良いですね」

 流石は商売人だ。
 馬車移動に必要な物をお勧めしてくれた。
 勿論、クッションと酔い止めも購入しておく。

 さて、各自必要な物を購入できたのだが、エステル殿下の姿がない。
 商会の店頭で待っていたら、エステル殿下が大量の荷物を抱えてやってきた。

「いやあ、皆お待たせ。気に入ったのが沢山あったから、つい全部買っちゃった」

 エステル殿下の荷物から、何やら甘い匂いがしてきた。
 もしかしてもしかすると、これって全部お菓子?

「そう! 全部お菓子だよ。マジックバッグに入れておけば腐らないし、これだけあったら一日は持つよ」

 あまりの豪快な王女様の買い物に、俺達はびっくりしていた。
 エステル殿下はとても良い笑顔でいるけど、あのシロもミケもエステル殿下のお菓子の量を見て唖然としている。
 あえてエステル殿下のお菓子について触れないでおこう。
 俺達は顔を見合わせて、静かに頷いていた。

「では、おばあさん。また来ますね」
「元気でやっといてな」
「「ばいばーい」」

 おばあさんとさよならの挨拶をして、俺達は馬車に乗り込みます。
 なんだかんだで初めての冒険者としての依頼をこなした場所だから、何だかこの商会も思い出深い所になったな。
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