異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた! 〜仲間と一緒に難題を解決します!〜

藤なごみ

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第一章 バルガス公爵領

第五十話 犯行の理由

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「よし、行くぞ。各自警戒を」

 俺達は、アルス殿下の合図で会議場のドアを蹴破って中に入った。
 すると、部屋の中には四人が立っていた。
 バルガス様が、剣を四人に向けながら話し始めた。

「オーカス子爵家グラン、騎士バビル、冒険者バン、そしてブラッククロウのビルゴ。バルガスが命ずる、大人しく投降せよ」

 オーカス子爵家のグランがバルガス様の元で勉強をしていた法衣貴族の跡取りらしく、かなりぽっちゃりとした体型で茶髪の髪をオールバックにしていた。
 この部屋まで走ってきて疲れたのか、ゼーゼー言っている。
 騎士バビルは、ビアンカ殿下とバルガス様が襲撃された際に馬車の護衛についていた騎士の一人でもある。
 今は騎士服を着ておらず、赤い短髪で頬には傷があった。
 そして冒険者ギルドで暴れていたバンは、不釣り合いな豪華な衣装を着込んでいた。
 バンは、キョロキョロと不安そうにあたりを見渡している。
 そして、ビルゴは初心者向け講習の時と同じく盗賊の様な服装をして、クククとコチラを見てニヤニヤしていた。
 と、ここでオーカス子爵家のグランが、バルガス様の会話に入ってきた。

「おやおや、これはバルガス様ではないでしょうか。こんな時間に何故こんな所に来ているのでしょうか?」

 グランは俺達を馬鹿にした様な表情で、バルガス様に話しかけた。
 バルガス様は厳しい表情を変えないまま、剣先をグランに向けたまま話を続けていた。

「言わないと分からぬなら、こちらから説明しよう。オーカス子爵家によるトリーノ地域復興支援金横領、この件が今回の襲撃事件の根本にある」
「ちっ」
「えっ……」

 バルガス様の話に、グランは舌打ちをした。
 そして、バビルは寝耳に水といった表情でグランを見ていた。
 
「ここからは私が話そう。王国直轄地であるトリーノ地域で、三年前に風水害による災害が起きた。この件で復興支援の為に緊急支援金を出したのだが、先月査察団による査察の際に、被害者遺族に払われるべき見舞金が支払われていない事が判明した。その他、多数の横領の証拠が見つかったのだ」

 アルス殿下が、バルガス様の後を受けて話を始めた。
 グランは苦虫を噛み締めた様な顔をしていて、バビルは現実が受け止められない表情をしていた。

「ただし、この件はまだ公になっていない。今回の襲撃事件の件を調べている内に繋がった事だ。元々オーカス子爵は貴族主義派で、改革派の公爵や王家の存在が邪魔だった。そして貴族主義派内での勢力拡大を目指し、更には改革派の勢力を削ぐ為に公爵とビアンカの殺害を目論んだのだ」

 アルス殿下の続けた言葉に、グランは顔を横に向けている。
 バビルは、もうなんだか分からない表情だ。

「オーカス子爵は自分の手を汚さないで、バルガス様とビアンカ殿下の殺害を目論んだ。ちょうど、故郷の復興支援の件で不満を持っている騎士が近くにいた。この騎士を利用する事にしたんだ。有る事無い事吹き込んで、バルガス様と王家に恨みを抱く様にしたようだな。まあ、実際の襲撃はたまたま近くにいた俺とシロとミケによって防がれた訳だ」
「ぐっ」

 俺が話をすると、グランは俺の事を睨んできた。
 バビルは全ての事が分かり、頭を抱えてしまった。

「そしてビルゴの件も大体把握したのじゃ。お主らは各地で冒険者の新人研修を進んで受け持っていた様じゃが、それは闇組織に合いそうな人物を探す為じゃ。現にビルゴ達が担当した新人研修の殆どから行方不明の冒険者が出ており、全てがビルゴが新人研修で褒めていた者じゃ」
「それにね、講習の時に後で会おうって言っていたんだよ」
「ミケ達は耳が良いから、バッチリと聞こえたんだよ」
「ほう、これはどうして。獣人のお嬢ちゃんはやりますな」

 ビルゴに対しては、ビアンカ殿下の言葉が全てだろう。
 決定的なのが、ビルゴがバンに言った言葉をたまたまシロとミケが聞いた事だろう。
 というか、シロとミケの聴力って凄いな。
 当のビルゴはというと、自分のやった事がバレた事よりもシロとミケの聴力の良さを褒めていた。
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