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第一章 バルガス公爵領

第二十一話 闇組織 ブラッククロウ

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 マリシャさんによってソファーから吹き飛ばされたガンドフさんが座り直した所で、話し合いはスタートです。

「先ずは俺から話そう。魔物が大量に現れた原因が大体判明した。結論からいうと、魔物を呼び寄せる魔導具が使われた可能性が非常に高い。しかも、その場で発動するタイプのものだ」
「こう見えて、ガンドフは魔導具の専門家なのよ。残念ながら、ガンドフがこうやって判断した以上は、間違いなさそうですわ」
「成程、だからオークが現れる前に魔法が使われた気配がしたのですね」
「うむ、サトーの言う通りだ。この手の魔導具は、魔力に敏感なものなら発動すれば直ぐに分かる」

 ガンドフさんの言う事に間違いがないとなると、魔導具を使用した者は自ずと絞り込める。

「まあ、馬車の護衛についていた者が魔導具を使ったと判断するべきじゃな」
「はい、私も同じ考えです。情けない事に、騎士団の内に犯人がいるとは」
「騎士団長の責任では無い。しかし、騎士一人の犯行とは考え難いのう」

 ビアンカ殿下の指摘に、騎士が力なく答えていた。
 というか、騎士の中でも偉い人かと思ったけど、騎士団長だったとは。
 それにビアンカ殿下の言う通りだろう。
 これだけの魔導具を、一人で用意できるとは考え難い。

「となると、協力者の存在にこれだけの魔導具を扱える存在がいると言う事ですね」
「相変わらず、サトーは理解が早くて助かる。そして、危険な魔導具を扱う存在を確認しにきたのじゃ」

 確認しないとならない事の内、一つ心当たりがあるのは大きな事だ。
 ビアンカ殿下は、そのまま話を続けた。

「サトー達は知らぬ事なので、少し説明をしよう。我が国の周辺には、帝国と公国がある。勿論、遠地には他の国があるがな。そして、我が国に隣接している地域に宗教国家である人神教国を名乗っている勢力があるのじゃ」
「名乗っているという事は、正式な国ではないのですね」
「うむ。王国、帝国、公国とも人神教国の独立を認めていない。幾つかの要因があるが、最大の要因が、人神教国が闇組織を抱えている事だ」
「闇組織」

 既に話がきな臭くなってきたぞ。
 前の世界でも、宗教対立から発生した独立地域に犯罪組織の問題があった。
 今回の件は、同じ様な話なのかもしれない。

「闇組織、ブラッククロウ。様々な犯罪を行なっている犯罪組織じゃ。お金さえあればどんな事も行うのじゃ」
「そして、その闇組織が魔物を出現させる魔導具を犯人に売り渡したと。そう言う事ですね」
「簡易な魔導具を扱う犯罪組織は他にもおるが、あれだけの大規模な魔導具を扱う犯罪組織は、ブラッククロウ以外にない」

 そんな危険な犯罪組織を持っているなら、多くの国が人神教国の独立を認めないはずだよな。
 宗教を隠れ蓑にした犯罪組織という訳か。

「ブラッククロウは、残念ながら王国内でも暗躍しておる。王国内では貴族の勢力争いが起きていて、そこにブラッククロウが入り込んでいるのじゃ」
「となると、王国内で王族や王族に近い貴族に反抗している貴族がいて、ブラッククロウと手を組んでいると。そして、今回の襲撃事件もそいつらが怪しいという訳ですね」
「うむ、間違いないじゃろう。サトーは本当に理解が早くて助かるな」

 我が意を得たりと言った感じで、ビアンカ殿下が答えてくれた。
 そうなると、襲撃事件を起こした犯人の目星もつきやすいという訳か。

「とは言え、犯行の証拠を集めないといけません。まだ暫くは捜索を行わないとならないでしょう」

 騎士団長の言葉が全てだろう。
 まだ憶測で物事を進めているだけで、確固たる証拠を掴んでいない。
 逆にいうと事件の捜索を沢山の兵や騎士が行うから、犯人も動き難い可能性が高いな。

「サトーには、暫く冒険者活動をしてもらいながら、情報を集めてもらう予定じゃ。思わぬ所から、事件解決の糸口が掴める事もあるのでな」
「おお、シロも頑張るよ」
「ミケも頑張る!」
「ふふ、頼りにしておるぞ」

 シロとミケもやる気になっているし、情報を集めるだけなら危険な事も少ないだろう。
 そう思っていたら、早速釘を刺されてしまった。

「実は、冒険者ギルドから闇組織に人員が流れているのが確認できたの。どの様な手を使っているかは確認中なのだけど、怪しい冒険者の方から近づいてくる可能性もあるからね」
「何かあったら、遠慮なく職員に相談する事だ」
「はい、分かりました」

 確かに冒険者になる人には、荒くれ者もいるだろう。
 そんな人は、闇組織がスカウトしてもおかしくはないな。
 俺達に接触してくる人にも、十分気をつけよう。
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