【完結】子猫のいる生活

菊花

文字の大きさ
上 下
9 / 18

お手伝いとお勉強 前編

しおりを挟む
体が重く苦しい感覚で目が覚める。
時計を見ると7時半を回ったところだ。

「うーん、これが毎朝ってのは、これはこれで嬉しいんだが困ったな。」

見ると相変わらず俺の上で茶羽さう黒羽くうが寝ている。
体を起こすと二人も体を起こすが眠そうに顔をごしごししている。

「ほら、朝だよ、顔洗ってご飯食べるぞ。」
「「ふぁーい」」

まだ寝ぼけている二人を抱き上げて洗面所に向かう。
顔を洗ってタオルで拭いてから、顔を洗った順に拭いてあげる。

「「おはよう」」
「おはよう、目は覚めたか?」
「「うん」」

顔を洗って目が覚めたようで、すぐに洗面所からリビングまで走っていく二人。

「走ると危ないぞ。」

注意しても聞かずにリビングに飛び込んでいく。
仕方ない奴らだな、と思いながら俺もリビングに入り、キッチンに向かう。
昨日香織が作ってくれたサラダの残りが有ったので、それと卵焼きを作って、それからご飯をよそう。
すると茶羽と黒羽が後ろにいるのに気づく。

「どうしたんだ?」
「さうがはこぶ、おてつだい」
「くうもはこぶ、おてつだい」
「運んでくれるのか?じゃあこれを頼もうかな。」

手伝いたいと言うのでご飯をよそった茶羽と黒羽のお茶碗を渡す。
すると嬉しそうに自分たちの席に慎重にゆっくりと持って行く。
残りを持ってテーブルに並べて、席に着くと、茶羽と黒羽も席に着いた。
いただきますと言うと茶羽と黒羽は首を傾げてなに?という顔をしていた。
そこではじめて気づいた、『いただきますとごちそうさま教えてない』ことに。

「教えてなかったな、ご飯食べる前に『いただきます』って言って、食べ終わったら『ごちそうさま』って言うんだよ。」
「なんで?」
「いわないとたべれないの?」
「いただきますって言うのはな、ご飯を作ってくれた人へのお礼や食材になった生き物の命をもらいますって意味で言うんだよ。」
「「そうなんだ」」
「だからご飯食べる前にはいただきますって言うんだ。」
「「わかった、いただきます」」
「いただきます」

そう言うと相変わらず勢い良く食べ始める茶羽と黒羽。
もうちょっと落ち着いて食べるのも教えた方がいいかな、と思いながらおかずに手を付ける。
食べ終わると二人は俺の事をじっと見ていた。

「どうした?まだ食べたいのか?」
「ちがう」
「たべたらまたいうの」
「ああそうか、ご飯食べ終わったらごちそうさまって言うんだ。」
「「なんで?」」
「そうだな、ご飯作るために食材買ってこないといけないだろ。」
「うん」
「おみせでかう」
「そうだな今は簡単に買ってこれるけど、昔はあちこち行って買って来ないといけなかったんだ、それであちこち走り回って買ってきてくれた人にお礼を言うのが『ごちそうさま』なんだよ」
「「わかった」」
「じゃあ、ごちそうさま」
「「ごちそうさま」」

そう言うと食器を重ねていく、席を立って二人の食器もと思ったら、俺と同じようにお皿にお茶碗を載せて運ぼうとしていた。

「危ないから無理しなくてもいいんだぞ。」
「「おてつだいする」」

そう言うと、ゆっくりと食器を持ってキッチンに歩いていく。
俺は先回りをして流し台の前に行き、二人が持ってくる食器を受け取る。

「ありがとな、助かったよ。」

そう言って二人をなでると笑顔で尻尾もゆらゆら揺れていた。
そして満足した顔でリビングに走っていった。
食器を洗い終わりリビングに行くと二人が見えない。
探そうとすると、洗面所の方からにぎやかな声が聞こえる。
そっと覗くと茶羽が洗濯物を洗濯機に投げ込んでいた、視線を変えて風呂場の方を見ると黒羽が風呂洗い用のブラシで浴槽をこすっていた。
『昨日教えたお手伝いしてくれてるのか』そう思って終わる直前までそっと眺めて、終わるころを見計らいリビングに戻ってパソコンの前に座り、二人が戻るのを待ってるふりをした。

「「おてつだいおわった」」
「お手伝い終わったか、よくできたな。」

そういうと二人の撫でる、が黒羽がびっしょりなのに気づく、それにまだ二人ともパジャマのままだ。

「黒羽はびっしょりだな着替えて乾かさないと風邪ひいちゃうぞ。」

そう言うとタオルと二人の着替えを持って来て、軽く水気をふいてから着替えさせて、ドライヤーで黒羽の髪を乾かす、黒羽が終わるとなぜか入れ替わりで茶羽も座ったので、乾かすふりをしながらドライヤーの風を当ててあげる。

「よしこれで二人とも朝のお手伝いは終わりだ。」

そういうと飛び跳ねて喜んでいた。
リビングに行くと茶羽と黒羽は一冊の絵本を持って来た。
見ると昨日香織が読んであげていた絵本だった。

「「これよんで」」

そう言うのでテレビの前に座り茶羽と黒羽を膝の上に乗せ絵本を読んであげることにした。
しばらく読んでこの絵本の内容に気づく、お手伝いをする良い子とお手伝いをしない悪い子の話だった、
話の最後はお手伝いしていた子は偉い人になって幸せになって、お手伝いしない悪い子は悪いことをする人になって捕まって牢屋にいれられて不幸になってしまうという内容だった。
『なるほど昨日読んでもらったから今朝からお手伝いいっぱいしようとしてたんだな』と今朝からの二人の行動の意味が分かった。

一通り読み終わると今度は『これなに?』とひらがなを指してくる、これは「は」だよと教えると次々とひらがなを教えることになった。
そこで確かひらがなの学習ドリルを買ったなと思い出し、二人に待っててもらい、昨日片づけた本棚を探すと二冊のひらがなドリルを見つける。
テーブルに座ると二人を手招きで呼び席につかせると、

「ひらがな勉強するならこっちがいいぞ。」

そう言ってドリルを渡す、そして鉛筆を削って最初のページを見せる。
そしてこれは「あ」だよ、と教えると、

「「あー」」

と言って確認する、それで書き方はね、とプリンターからコピー用紙を取り二人に見えるように大きくゆっくりと書いてあげる。
するとドリルに二人は「あ」と書いていく。

「そうそう、二人ともうまいな。」

そう言うと二人とも笑顔になり「あ」をいっぱい書いていく。
そして書くスペースがなくなると、次のページに書こうとしだすので止めてコピー用紙を1枚づつ渡し、これに書いていいよと説明する。
すると嬉しそうにコピー用紙に書き始めた。
数枚のコピー用紙いっぱいに色んな大きさの「あ」が書きこまれた頃に洗濯機が乾燥まで終わった音がする。

「「せんたくおわった、おてつだい」」

二人はそう言うと走ってリビングから飛び出していく。
しばらくすると洗濯物を抱えて戻ってきた。

「「つぎわけるの」」

そう言うと床に置いた洗濯物から自分の服を取り出していく。
一緒に分けていてふと気づく、シーツや二人が昨日着てた服などが混ざっていた、

「そうか入れっぱなしだったか」

そうつぶやいてシーツやタオルを自分の方にまとめていく。
昨日香織が洗濯したまま取り出さずに入れっぱなしにしていて、今朝それごとまた洗濯したのだ。
洗濯物を分け終わると二人は慣れない手つきで畳もうとするが、うまくできないようで何度も広げては畳んでを繰り返していた。

「これはこうやって・・・」

そういうと二人から洗濯物を受け取り、二人に見えるように畳んでいく。
うまくできなかったからかしゅんとして耳もぺたんとなっていた

「畳むのは難しいからね、わからなかったらまた教えるから今は失敗しても大丈夫だよ」

そう言って二人をなでる、すると耳をピンと立ててうんと頷く。

「後はこれを片付けて終わりだな」
「「はーい」」

そう言うと各自畳んだ洗濯物を持ってしまいに行く。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

3/25発売!書籍化【完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
一二三書房/ブレイド文庫様より、2025/03/25発売! 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2025/03/25……書籍1巻発売日 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

処理中です...