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第二十八話「絶望に抗え 前編」
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他国に嫁いだ私を追うように付いてきてくれたヒルダ。幼い頃からずっと一緒で、嬉しいことも、悲しいことも、全て共有してきた。
有能な私の侍女。
だというのに、この状況は一体なんなのだろうか。
「ヒルダ……嘘、よね? 貴女も捕まっただけ。そうよね?」
「申し訳ございません。ユキノ様」
震える声で呟いた言葉は無情にもヒルダ自身の言葉で否定されてしまう。
「なんで? 私の知るヒルダはこんなことして、平気な顔する人じゃない。何か、何か理由があるんでしょう!?」
口を固く閉ざしたヒルダの横からいるはずのない人物の声が聞こえた。
「残念。信頼を寄せる侍女の裏切りと攫われ拘束された恐怖で、もっと泣き叫ぶかと思ったのに」
甘い匂いを漂わせ部屋へと足を踏み入れる男。
ギリッと嫌な音がする。私が歯を噛み締めた音だ。
「ッ!? なぜここにいるのですか!? 国境は……グレンはどうしたのです⁉ 笑ってないで答えて下さい! セクト様!!」
親しげにヒルダの肩に手を置き、初めて会った時と同じ笑みを浮かべたセクトがそこにいた。
セクトは先遣隊として国境へ向かったはずではなかったか。
第二王子とはいえど、王族がいなくなれば大問題だ。先遣隊は彼を血眼になって探すだろう。人質とされる前になんとか探し出さなければと。
国境へと向かうグレンの耳にもセクトがいなくなったと届くはずだ。
そして、セクトを探しながら敵軍を相手にしなければならないグレン達には、とてつもない心労と労力がかかるだろう。
だというのに、目の前の男ときたら……。
「だって、ずるいだろ? 兄様だけ本懐を果たして」
「……どういう事ですか?」
「あぁ、兄様から聞いてないんだっけ。俺達シエロニア王族の呪いのこと」
「呪い……?」
呪いってあの呪い?
怨念的なのが、死に至らしめる的な?
でもそれなら本懐の意味がわからない。
意味が分からず首を傾げれば、左耳の下で何かが揺れた。
思い当たるものといえば、握り締めて寝落ちたイヤリングだけだ。
何故? と思考を巡らせようとした刹那、ナイフが私の頬を掠めた。
「痛っ⁉」
容易く壁へと突き刺さったナイフに背筋が凍る。
「僕を前にして考え事なんていい度胸だね」
「……呪いなんて考えさせるような事を仰るからでは?」
少しでも弱みを見られてはいけないと虚勢を張る。
「それもそうだ。で、見当はついた?」
「考える時間も頂けないのに分かるはずもないでしょう?」
「つれないなぁ。何か思い当たる事とかないの?」
「いえ、特には」
呪いがエロゲーの設定だと仮定しよう。
本当に呪いに侵されているのであれば、痣など何かしらの形になって目に見えるはずだ。その方がビジュアル的にも分かりやすい。
しかし、何度も肌を重ねているがそのようなモノを見たことがない。
そのため思い当たるものなどあるはずもなかった。
大きなため息と共にセクトからヒントが出される。
「シエロニアに伝わる建国神話は知ってるよな?」
「ええ。もちろん。それがなにか?」
この国へ嫁ぎ、妃教育として初めに習ったのだから知っていて当然だろう。
シエロニアの国民であれば幼い頃から聞かされる物語。
竜が人間に恋をした。という文が冒頭にくる、ありきたりな話だ。
「聞かせて」
「……なぜ?」
「いいから。ほら、早く」
セクトに急かされ、なぜか語り部にされた私は渋々口を開く。
その昔。
竜とは孤高の存在であり、意思疎通は不可能な生き物とされていました。
ある時、神聖な竜と意思疎通の出来る少女が現れたのです。
竜と意思疎通の出来る少女はとても異質な存在でした。罪深い人間はその少女を気味が悪いと迫害してきました。
たった一つの居場所である竜の巣で、少女は一頭の黒竜と出会ったのです。
それが全てのはじまりでした。
ある朝。
黒竜と心を通わせ竜と恋に落ちた少女は、竜を恐れた人間に殺されてしまいました。迫害してきた少女が人間を恨み、竜に人間たちを襲わせないためでした。
運命の番である唯一無二の少女を殺された竜は、少女の亡骸を大事に抱え大粒の涙が雨に変わるほど嘆きながらも村々を壊して回りました。
まるで少女のいない世界は無価値だと言わんばかりに。
竜が破壊の限りをつくしていると、神の思し召しのように奇跡が起きました。
竜の涙を口にした少女が生き返ったのです。
少女が竜を安心させるよう口づけを落とすと、驚くべきことに竜はその姿を人間へと変化させたではありませんか。
人間になった竜は自身が破壊した村々を見て「自分はなんてことをしてしまったんだろう」とたいそう心を痛めたそうです。
焦土と化した少女の生まれ故郷を復興させるため、竜は村々をまとめ上げ国を作り統治すると決意しました。
王となった竜は二度と元の姿に戻ることはなく、愛する少女と幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
この物語に出てきた竜が統治したという国。
それが今のシエロニアだと言われている。
「これで満足ですか」
「うまいうまい」
「……どうも」
ニコニコと手を叩くセクトに少し苛立ちを感じる。
「それが本当の歴史だとしたら?」
「そんな事、誰が信じるというの?」
ただの作り話。神話なんてそんなものだ。
先祖が竜だなんて、あるはずもない。
「俺ら王族の男は運命の相手が分かる、と言っても?」
「セクト様がそんな茶目っ気のある方だとは思いませんでした」
セクトの言葉を一蹴し、動揺を隠すよう不敵に笑う。
『人間はそうね。でも、彼は普通の人間とは違う。生涯を通してあなただけを愛してくれるわ』
そう言ったナーシャの顔が浮かぶ。
本来であれば「彼は他の人とは違う」と言うべきところではないだろうか。なのに「普通の人間とは違う」と言い切った。
ナーシャはこの世界をよく知っている。そんな彼女が紡いだ言葉。
その心は?
まさか、本当に竜の末裔だとでも言うの……?
それなら私を番だと言うのも、竜に誓う形式も辻褄が合う。
「ふぅん? 良いことを教えてあげようか」
「え?」
「自分にとっての唯一無二の相手が分かるのは喜ばしい事だと思うでしょ? それが違うんだよ。だからこそ呪いと呼ばれるんだ。一度番を見つけてしまえば、他の女に見向きもしないどころか、番しか受付なくなる。それって子孫繁栄をしなければならない王族としてはどうなんだろうね? まっ弱点になるからいいんだけど」
「私が、グレンの足を引っ張ってるというの?」
「そうとも言うね。自分の置かれた状況がやっとわかった?」
いやらしく笑うセクトの瞳に映る私が頼りない顔をしている。
シナリオが終わったって事は、これは決められたレールの上じゃない。私の言動一つで生死が決まる……。
嫌な汗が背中を伝う。
でもシナリオが終わっても変わらない事実はある。
私はこの世界の最強だ。
天地が逆さになったとしても、この事実だけは覆らない。
きっと抜け出すチャンスはくる。
相手が油断するその時まで、虎視眈々と機会を伺わなければ。
「ちなみに、番がいなくなったらどうなると思う?」
「知らないわよ、そんなの」
楽しそうに会話をするセクトを睨む。
「ボンッ!」
いきなり大きな声で叫ばれ、ビクリと肩が跳ねた。
私の反応にセクトが笑い出す。
「あっははは!」
「いきなり何なんですか!!」
「番がいなくなった王子の末路」
「は?」
「魔力暴発で消し炭だよ。周り諸共ね」
にやにやと笑うセクトには人間の心がないのだろうか。
グレンほどの魔力量を保有する人間が、魔力を暴発させればあたり数キロは焦土と化すだろう。
今国境にいるはずの軍も道連れということだ。その中にはセクトと親しい騎士達もいるはずで。
「なんてことを考えているの⁉ 正気の沙汰とは思えない」
「僕は至って正気だよ」
どれだけ説得を試みようと意味がない。それが理解できるからこそ手の打ちようがない。
それゆえ自室に私が居ないことに衛兵が気がつき、捜索する時間を稼ぐ事しか出来ない。
「目的は王位継承権? 第二王子であるあなたじゃ、よほどの事がない限り手に入らない代物だわ」
「正解。だからよほどの事を起こすんだ」
「その結果、血を分けた兄が死んでもいいと」
「そうさ。そもそも兄上ばかりずるいじゃないか」
ずるい?
「何がずるいというの?」
「お前なんかには分からないだろうさ。完璧すぎる兄を持った僕の気持ちなんて」
「グレンが天賦の才に恵まれているから、なんでもそつなくこなせると、本気で思っているの?」
夜遅くまで実務をし、終わった後は勉学に励むグレンの姿を幾度となく見てきた。
彼が日々どれほど努力をしているか理解しようともしないセクトに、腸が煮えくり返りそうだ。
今、激高しては駄目。冷静にならなければ。
一度大きく深呼吸をし、荒ぶる心を落ち着かせる。
「兄様は僕の持っていない全てを持っているんだ。さらに番まで見つけて、王族の本懐を成し遂げるなんて……ずるいと思わない? 僕だって運命の番というものを見つけたいし、兄様みたいに信頼され必要とされたい」
グレンが積み上げてきた信頼を欲しがるセクトは、ずるいずるいと駄々をこねる子供のようだ。
「ただの嫉妬でこんな事態を引き起こしたとでもいうの……?」
うっかり口から滑り出た言葉。
しまったと思った時にはすでに遅く、セクトの機嫌が急降下した。
一瞬にして雰囲気が変わったにも関わらずニコニコとした笑みを崩さないセクトは不気味で、私が萎縮するには十分だ。
「そういえば月の休息日を僕が把握しているって言ったらどうする?」
月の休息日とは、女性特有のアレが始まる日のことだ。
それを把握されているということは、つまり――
頭の中で警戒音が一際大きく響いた。
有能な私の侍女。
だというのに、この状況は一体なんなのだろうか。
「ヒルダ……嘘、よね? 貴女も捕まっただけ。そうよね?」
「申し訳ございません。ユキノ様」
震える声で呟いた言葉は無情にもヒルダ自身の言葉で否定されてしまう。
「なんで? 私の知るヒルダはこんなことして、平気な顔する人じゃない。何か、何か理由があるんでしょう!?」
口を固く閉ざしたヒルダの横からいるはずのない人物の声が聞こえた。
「残念。信頼を寄せる侍女の裏切りと攫われ拘束された恐怖で、もっと泣き叫ぶかと思ったのに」
甘い匂いを漂わせ部屋へと足を踏み入れる男。
ギリッと嫌な音がする。私が歯を噛み締めた音だ。
「ッ!? なぜここにいるのですか!? 国境は……グレンはどうしたのです⁉ 笑ってないで答えて下さい! セクト様!!」
親しげにヒルダの肩に手を置き、初めて会った時と同じ笑みを浮かべたセクトがそこにいた。
セクトは先遣隊として国境へ向かったはずではなかったか。
第二王子とはいえど、王族がいなくなれば大問題だ。先遣隊は彼を血眼になって探すだろう。人質とされる前になんとか探し出さなければと。
国境へと向かうグレンの耳にもセクトがいなくなったと届くはずだ。
そして、セクトを探しながら敵軍を相手にしなければならないグレン達には、とてつもない心労と労力がかかるだろう。
だというのに、目の前の男ときたら……。
「だって、ずるいだろ? 兄様だけ本懐を果たして」
「……どういう事ですか?」
「あぁ、兄様から聞いてないんだっけ。俺達シエロニア王族の呪いのこと」
「呪い……?」
呪いってあの呪い?
怨念的なのが、死に至らしめる的な?
でもそれなら本懐の意味がわからない。
意味が分からず首を傾げれば、左耳の下で何かが揺れた。
思い当たるものといえば、握り締めて寝落ちたイヤリングだけだ。
何故? と思考を巡らせようとした刹那、ナイフが私の頬を掠めた。
「痛っ⁉」
容易く壁へと突き刺さったナイフに背筋が凍る。
「僕を前にして考え事なんていい度胸だね」
「……呪いなんて考えさせるような事を仰るからでは?」
少しでも弱みを見られてはいけないと虚勢を張る。
「それもそうだ。で、見当はついた?」
「考える時間も頂けないのに分かるはずもないでしょう?」
「つれないなぁ。何か思い当たる事とかないの?」
「いえ、特には」
呪いがエロゲーの設定だと仮定しよう。
本当に呪いに侵されているのであれば、痣など何かしらの形になって目に見えるはずだ。その方がビジュアル的にも分かりやすい。
しかし、何度も肌を重ねているがそのようなモノを見たことがない。
そのため思い当たるものなどあるはずもなかった。
大きなため息と共にセクトからヒントが出される。
「シエロニアに伝わる建国神話は知ってるよな?」
「ええ。もちろん。それがなにか?」
この国へ嫁ぎ、妃教育として初めに習ったのだから知っていて当然だろう。
シエロニアの国民であれば幼い頃から聞かされる物語。
竜が人間に恋をした。という文が冒頭にくる、ありきたりな話だ。
「聞かせて」
「……なぜ?」
「いいから。ほら、早く」
セクトに急かされ、なぜか語り部にされた私は渋々口を開く。
その昔。
竜とは孤高の存在であり、意思疎通は不可能な生き物とされていました。
ある時、神聖な竜と意思疎通の出来る少女が現れたのです。
竜と意思疎通の出来る少女はとても異質な存在でした。罪深い人間はその少女を気味が悪いと迫害してきました。
たった一つの居場所である竜の巣で、少女は一頭の黒竜と出会ったのです。
それが全てのはじまりでした。
ある朝。
黒竜と心を通わせ竜と恋に落ちた少女は、竜を恐れた人間に殺されてしまいました。迫害してきた少女が人間を恨み、竜に人間たちを襲わせないためでした。
運命の番である唯一無二の少女を殺された竜は、少女の亡骸を大事に抱え大粒の涙が雨に変わるほど嘆きながらも村々を壊して回りました。
まるで少女のいない世界は無価値だと言わんばかりに。
竜が破壊の限りをつくしていると、神の思し召しのように奇跡が起きました。
竜の涙を口にした少女が生き返ったのです。
少女が竜を安心させるよう口づけを落とすと、驚くべきことに竜はその姿を人間へと変化させたではありませんか。
人間になった竜は自身が破壊した村々を見て「自分はなんてことをしてしまったんだろう」とたいそう心を痛めたそうです。
焦土と化した少女の生まれ故郷を復興させるため、竜は村々をまとめ上げ国を作り統治すると決意しました。
王となった竜は二度と元の姿に戻ることはなく、愛する少女と幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
この物語に出てきた竜が統治したという国。
それが今のシエロニアだと言われている。
「これで満足ですか」
「うまいうまい」
「……どうも」
ニコニコと手を叩くセクトに少し苛立ちを感じる。
「それが本当の歴史だとしたら?」
「そんな事、誰が信じるというの?」
ただの作り話。神話なんてそんなものだ。
先祖が竜だなんて、あるはずもない。
「俺ら王族の男は運命の相手が分かる、と言っても?」
「セクト様がそんな茶目っ気のある方だとは思いませんでした」
セクトの言葉を一蹴し、動揺を隠すよう不敵に笑う。
『人間はそうね。でも、彼は普通の人間とは違う。生涯を通してあなただけを愛してくれるわ』
そう言ったナーシャの顔が浮かぶ。
本来であれば「彼は他の人とは違う」と言うべきところではないだろうか。なのに「普通の人間とは違う」と言い切った。
ナーシャはこの世界をよく知っている。そんな彼女が紡いだ言葉。
その心は?
まさか、本当に竜の末裔だとでも言うの……?
それなら私を番だと言うのも、竜に誓う形式も辻褄が合う。
「ふぅん? 良いことを教えてあげようか」
「え?」
「自分にとっての唯一無二の相手が分かるのは喜ばしい事だと思うでしょ? それが違うんだよ。だからこそ呪いと呼ばれるんだ。一度番を見つけてしまえば、他の女に見向きもしないどころか、番しか受付なくなる。それって子孫繁栄をしなければならない王族としてはどうなんだろうね? まっ弱点になるからいいんだけど」
「私が、グレンの足を引っ張ってるというの?」
「そうとも言うね。自分の置かれた状況がやっとわかった?」
いやらしく笑うセクトの瞳に映る私が頼りない顔をしている。
シナリオが終わったって事は、これは決められたレールの上じゃない。私の言動一つで生死が決まる……。
嫌な汗が背中を伝う。
でもシナリオが終わっても変わらない事実はある。
私はこの世界の最強だ。
天地が逆さになったとしても、この事実だけは覆らない。
きっと抜け出すチャンスはくる。
相手が油断するその時まで、虎視眈々と機会を伺わなければ。
「ちなみに、番がいなくなったらどうなると思う?」
「知らないわよ、そんなの」
楽しそうに会話をするセクトを睨む。
「ボンッ!」
いきなり大きな声で叫ばれ、ビクリと肩が跳ねた。
私の反応にセクトが笑い出す。
「あっははは!」
「いきなり何なんですか!!」
「番がいなくなった王子の末路」
「は?」
「魔力暴発で消し炭だよ。周り諸共ね」
にやにやと笑うセクトには人間の心がないのだろうか。
グレンほどの魔力量を保有する人間が、魔力を暴発させればあたり数キロは焦土と化すだろう。
今国境にいるはずの軍も道連れということだ。その中にはセクトと親しい騎士達もいるはずで。
「なんてことを考えているの⁉ 正気の沙汰とは思えない」
「僕は至って正気だよ」
どれだけ説得を試みようと意味がない。それが理解できるからこそ手の打ちようがない。
それゆえ自室に私が居ないことに衛兵が気がつき、捜索する時間を稼ぐ事しか出来ない。
「目的は王位継承権? 第二王子であるあなたじゃ、よほどの事がない限り手に入らない代物だわ」
「正解。だからよほどの事を起こすんだ」
「その結果、血を分けた兄が死んでもいいと」
「そうさ。そもそも兄上ばかりずるいじゃないか」
ずるい?
「何がずるいというの?」
「お前なんかには分からないだろうさ。完璧すぎる兄を持った僕の気持ちなんて」
「グレンが天賦の才に恵まれているから、なんでもそつなくこなせると、本気で思っているの?」
夜遅くまで実務をし、終わった後は勉学に励むグレンの姿を幾度となく見てきた。
彼が日々どれほど努力をしているか理解しようともしないセクトに、腸が煮えくり返りそうだ。
今、激高しては駄目。冷静にならなければ。
一度大きく深呼吸をし、荒ぶる心を落ち着かせる。
「兄様は僕の持っていない全てを持っているんだ。さらに番まで見つけて、王族の本懐を成し遂げるなんて……ずるいと思わない? 僕だって運命の番というものを見つけたいし、兄様みたいに信頼され必要とされたい」
グレンが積み上げてきた信頼を欲しがるセクトは、ずるいずるいと駄々をこねる子供のようだ。
「ただの嫉妬でこんな事態を引き起こしたとでもいうの……?」
うっかり口から滑り出た言葉。
しまったと思った時にはすでに遅く、セクトの機嫌が急降下した。
一瞬にして雰囲気が変わったにも関わらずニコニコとした笑みを崩さないセクトは不気味で、私が萎縮するには十分だ。
「そういえば月の休息日を僕が把握しているって言ったらどうする?」
月の休息日とは、女性特有のアレが始まる日のことだ。
それを把握されているということは、つまり――
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