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第九話「逃げられないシナリオ」
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第九話「逃げられないシナリオ」
それから、グレンが私を離してくれたのは、一ヶ月経ってからだった。
それが今日の朝。
寝台に二人寝転んで休息を満喫中だ。
「蜜月、なんて最初に言ってくれればよかったのに……」
彼の国では蜜月という文化があり、番になった夫婦は一ヶ月の間、誰の目にも晒されることなく、まぐわうらしい。
一ヶ月もの間休む間もなく交わり続け、イかされ調教された身体は彼なしでは耐えられないほどになってしまっている。
そう、夫婦がやるべき蜜月を私とした。
つまりは私とグレンは結婚したという事になる。
私が婚約破棄され酔っ払っている間に根回しを済ませ、ちゃっかりと両親から承諾を得ていたらしい。
そこまでして私を嫁に貰いたい理由は分からないが、この一ヶ月、嫌というほど愛を囁かれてしまえば絆されるのは仕方のない事だと思う。
「蜜月だと言ったら逃げただろ?」
「うっ……それは確かに否定できないかも」
そしてこの一ヶ月で公爵令嬢として培ってきた仮面を剥がされてしまった。
さらには素で話してもいいと言われ、話し合った結果、公的な場面以外では楽に話す事になった。
「俺は君を愛しているし、逃がす気もさらさらなかったけど、万が一ということもあるから」
「性悪」
「なんとでも?」
にやりと笑うグレンに少しだけ心臓が跳ねる。
これが恋心なのか定かではないが、彼との情事に抵抗感はない。
「どうして私なのか分からないし、私がグレンを好きになるかも不明瞭。そんなので、本当にいいの? 私の心が欲しいと思わないの?」
「もちろん欲しいさ。だが、そう簡単に手に入れられるものでもない。なら俺は外堀から埋めていくさ」
「王子らしい考えね」
無いとは思うがこの結婚生活が嫌になり、逃げ出そうと思えば簡単に出来ると、この主人公補正でなんとかなると信じている。
「俺なしじゃ生きられないようにしてあげる」
ちゅっという可愛らしいリップ音を立てて頬にキスを落とされた。
艶めかしい行為ではなく、純粋な愛情からくるそれに照れずにはいられない。
赤く染まったであろう自身の顔を布団で隠すも「可愛い顔見せてよ」と布団を取られる。
「ずるい。私ばっかり照れて」
「ユキノが可愛いのが悪い」
「答えになってないじゃない。グレンはどうしたら照れるの?」
「それは君が模索する事じゃないかな?」
むうっと頬を膨らませれば、クスクスと笑われた。
「ユキノ。もう二度と離さない」
グレンは綺麗な肌を惜しげもなく晒し、寝台に肘をつき髪を掻き上げてこちらに優しい笑みを向ける。
その一枚絵さながらの様子に既視感を感じた。
ああああああああああ!!!!????
スチルだ! これはスチルだ!!
嘘、いつからルート入ってたの!?
愕然とした。
ゲームのストーリー通りに進んでしまった事に、頭を抱える。
思い出した。グレンは隠しルートだ。
濃厚な蜜月が素晴らしいのだと友人が語ってスチルも見せてくれた。
よし、やっぱり逃げよう。そうしよう。
決められた人生なんてまっぴらだ。
私はそう決意を新たにしたのだった。
それから、グレンが私を離してくれたのは、一ヶ月経ってからだった。
それが今日の朝。
寝台に二人寝転んで休息を満喫中だ。
「蜜月、なんて最初に言ってくれればよかったのに……」
彼の国では蜜月という文化があり、番になった夫婦は一ヶ月の間、誰の目にも晒されることなく、まぐわうらしい。
一ヶ月もの間休む間もなく交わり続け、イかされ調教された身体は彼なしでは耐えられないほどになってしまっている。
そう、夫婦がやるべき蜜月を私とした。
つまりは私とグレンは結婚したという事になる。
私が婚約破棄され酔っ払っている間に根回しを済ませ、ちゃっかりと両親から承諾を得ていたらしい。
そこまでして私を嫁に貰いたい理由は分からないが、この一ヶ月、嫌というほど愛を囁かれてしまえば絆されるのは仕方のない事だと思う。
「蜜月だと言ったら逃げただろ?」
「うっ……それは確かに否定できないかも」
そしてこの一ヶ月で公爵令嬢として培ってきた仮面を剥がされてしまった。
さらには素で話してもいいと言われ、話し合った結果、公的な場面以外では楽に話す事になった。
「俺は君を愛しているし、逃がす気もさらさらなかったけど、万が一ということもあるから」
「性悪」
「なんとでも?」
にやりと笑うグレンに少しだけ心臓が跳ねる。
これが恋心なのか定かではないが、彼との情事に抵抗感はない。
「どうして私なのか分からないし、私がグレンを好きになるかも不明瞭。そんなので、本当にいいの? 私の心が欲しいと思わないの?」
「もちろん欲しいさ。だが、そう簡単に手に入れられるものでもない。なら俺は外堀から埋めていくさ」
「王子らしい考えね」
無いとは思うがこの結婚生活が嫌になり、逃げ出そうと思えば簡単に出来ると、この主人公補正でなんとかなると信じている。
「俺なしじゃ生きられないようにしてあげる」
ちゅっという可愛らしいリップ音を立てて頬にキスを落とされた。
艶めかしい行為ではなく、純粋な愛情からくるそれに照れずにはいられない。
赤く染まったであろう自身の顔を布団で隠すも「可愛い顔見せてよ」と布団を取られる。
「ずるい。私ばっかり照れて」
「ユキノが可愛いのが悪い」
「答えになってないじゃない。グレンはどうしたら照れるの?」
「それは君が模索する事じゃないかな?」
むうっと頬を膨らませれば、クスクスと笑われた。
「ユキノ。もう二度と離さない」
グレンは綺麗な肌を惜しげもなく晒し、寝台に肘をつき髪を掻き上げてこちらに優しい笑みを向ける。
その一枚絵さながらの様子に既視感を感じた。
ああああああああああ!!!!????
スチルだ! これはスチルだ!!
嘘、いつからルート入ってたの!?
愕然とした。
ゲームのストーリー通りに進んでしまった事に、頭を抱える。
思い出した。グレンは隠しルートだ。
濃厚な蜜月が素晴らしいのだと友人が語ってスチルも見せてくれた。
よし、やっぱり逃げよう。そうしよう。
決められた人生なんてまっぴらだ。
私はそう決意を新たにしたのだった。
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