1 / 37
プロローグ
しおりを挟む
あぁ、今日はなんて素晴らしき日なんだろう。
きらびやかな調度品が、シャンデリアの光を浴びて輝く様子を眺めながら、頬に手をあて感嘆のため息をついた。
「ユキノ・フォン・グレード! 今日この場を以って、お前との婚約破棄を宣言する!」
壇上の、シミ一つない赤い絨毯の上でふんぞり返る彼は、私の婚約者だ。
金髪碧眼のイケメン。
王族の象徴であるそれを受け継いだ、正真正銘この国の王子である。
最高権力者の息子に、学園の卒業パーティーという公衆の面前で婚約破棄を言い渡された私は、何を言えばいいのだろうか。
適切な言葉が思い付かず黙り込んでいれば、自分の都合よく解釈した彼がにやりと笑う。
「婚約破棄がショックだったみたいだな? だが男に二言は無い」
「えぇ、承知しております。殿下」
「僕はカーミラと結婚する」
ざわりと空気が揺れた。
「カーミラ様ですか。それはそれは……お幸せになって下さいませ。私、心から応援しております。それでは御前を失礼させて頂きます」
「ふん! 潔いことだな」
その言葉を質問に対する肯定と受け取り、私はゆったりと優雅に淑女の礼をし会場を後にした。
人気のない廊下を進む。
たった今婚約破棄をされた女とは思えないほど、私の頬は緩みきっているだろう。
「ふふふふ……。やっと終わったわ」
彼は知らない。この世界の誰も知らない。私だけの秘密。
それは──
この世界が、R18指定の女性向けエロゲーだという事。
そしてこのゲームの主人公は私、ユキノ・フォン・グレード。
腰まである絹のようなウェーブがかった白髪。紫紺の瞳はまるでアメジストを埋め込んだみたいで。
豊満な胸。くびれたウエスト。小さな身長。
男性の理想を体現した姿は誰をも魅了した。
そして、魔法ありありなこの世界で私は最強だった。
回復魔法以外は何でもこなしてしまう天才で、攻略対象はそんなユキノに劣等感を抱き、快楽という逃れられない楔を刻み、蹂躙して、自尊心を守るのだ。
婚約者であった王子も攻略対象で、主人公を三日三晩抱き潰しても足りないという、絶倫王子だ。
その他の攻略者もドSから始まりハードなアブノーマルは勿論のこと、触手プレイや人外まで取り揃えているという、少し、いやかなり、マニアックな陵辱モノのエロゲーだった。
エロゲ好きの友人に頼み込まれ、仕方なくプレイしたがあまり面白くもなかった為、内容はあまり覚えていない。
それが功を奏したのか、絶倫王子を悪役令嬢に譲る事ができた。
これでゲームのストーリーから解放され、晴れて私は自由の身になったわけだ。
きらびやかな調度品が、シャンデリアの光を浴びて輝く様子を眺めながら、頬に手をあて感嘆のため息をついた。
「ユキノ・フォン・グレード! 今日この場を以って、お前との婚約破棄を宣言する!」
壇上の、シミ一つない赤い絨毯の上でふんぞり返る彼は、私の婚約者だ。
金髪碧眼のイケメン。
王族の象徴であるそれを受け継いだ、正真正銘この国の王子である。
最高権力者の息子に、学園の卒業パーティーという公衆の面前で婚約破棄を言い渡された私は、何を言えばいいのだろうか。
適切な言葉が思い付かず黙り込んでいれば、自分の都合よく解釈した彼がにやりと笑う。
「婚約破棄がショックだったみたいだな? だが男に二言は無い」
「えぇ、承知しております。殿下」
「僕はカーミラと結婚する」
ざわりと空気が揺れた。
「カーミラ様ですか。それはそれは……お幸せになって下さいませ。私、心から応援しております。それでは御前を失礼させて頂きます」
「ふん! 潔いことだな」
その言葉を質問に対する肯定と受け取り、私はゆったりと優雅に淑女の礼をし会場を後にした。
人気のない廊下を進む。
たった今婚約破棄をされた女とは思えないほど、私の頬は緩みきっているだろう。
「ふふふふ……。やっと終わったわ」
彼は知らない。この世界の誰も知らない。私だけの秘密。
それは──
この世界が、R18指定の女性向けエロゲーだという事。
そしてこのゲームの主人公は私、ユキノ・フォン・グレード。
腰まである絹のようなウェーブがかった白髪。紫紺の瞳はまるでアメジストを埋め込んだみたいで。
豊満な胸。くびれたウエスト。小さな身長。
男性の理想を体現した姿は誰をも魅了した。
そして、魔法ありありなこの世界で私は最強だった。
回復魔法以外は何でもこなしてしまう天才で、攻略対象はそんなユキノに劣等感を抱き、快楽という逃れられない楔を刻み、蹂躙して、自尊心を守るのだ。
婚約者であった王子も攻略対象で、主人公を三日三晩抱き潰しても足りないという、絶倫王子だ。
その他の攻略者もドSから始まりハードなアブノーマルは勿論のこと、触手プレイや人外まで取り揃えているという、少し、いやかなり、マニアックな陵辱モノのエロゲーだった。
エロゲ好きの友人に頼み込まれ、仕方なくプレイしたがあまり面白くもなかった為、内容はあまり覚えていない。
それが功を奏したのか、絶倫王子を悪役令嬢に譲る事ができた。
これでゲームのストーリーから解放され、晴れて私は自由の身になったわけだ。
13
お気に入りに追加
2,044
あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる