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第37話
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「ゆ・・・南は休み?」
南の隣の席に座るイチに声を掛けた。
始業時間の5分前になっても現れない悠太。
まだ連絡もなかった。
「何も聞いてないですけど・・・まだ寝てるとか?電話してみますね」
言いながら、イチが自分のスマホを取り出した。
部長室から、渉くんが出てくるのが見えた。
「なあ、南は?」
「まだ連絡ないんですよ。今電話してもらってます」
俺の言葉に、渉くんは心配そうに頷いた。
「―――出ない。おかしいな・・・・」
イチが首を傾げる。
「寝てるんじゃないですか?」
社員の一人がそう言った。
もちろんその可能性はある。
昨日、ずいぶん酔っぱらってたし。
でも、俺たち4人の想いを聞かされて、悠太はだいぶ動揺していた。
そのことが、俺たちは気になっていたのだ。
「・・・・ちょっと、坂井に電話してみます」
そう言いながら、イチは席を立ち廊下に出て行った。
俺と渉くんはちらりと視線をかわし。
「―――じゃあ、とりあえず仕事を始めてようか」
「だな。じゃ、後は頼むね」
そう言って渉くんは再び部長室へと戻った。
5分ほどすると、イチが席に戻ってきた。
「どうだった?」
「坂井も何も知らないみたいですね。一応坂井からも電話してみて、出ないようなら家に様子見に行ってみるって言ってました」
「そうか」
ほっと息をつく。
本当は俺が悠太の家に行きたいところだが、さすがに社員の手前それはできない。
直の家から悠太の家までは5分。
今は、直に任せるしかなかった。
だがその20分後。
突然、イチがスマホを手に席を立った。
「イチ―――原?どうした?」
スマホの画面を見つめるイチの顔は真っ蒼になっていた。
ただ事じゃない。
「市原?南に何か―――」
「・・・・倒れてたって」
「―――は?」
一瞬、部署内が静まり返った。
仕事の手が止まり、みんながイチのことを見ていた。
「倒れてたって、どういう―――」
「坂井が家に行ったら、悠太くんが階段の下に倒れてて、すごい熱で―――すぐに救急車呼んで、今救急車を待ってるところだって」
イチの、スマホを持つ手が微かに震えていた。
いつもどちらかと言うと冷静なイチが、こんなに動揺しているところを見るのは初めてだ。
それでも、素早くスマホを操作し、直に何かメッセージを送っているようだった。
「―――とりあえず坂井はそのまま救急車に同乗して、搬送先がわかったら連絡するそうです」
「それで、南の意識は?怪我してるのか?」
気付けば渉くんがそばにいて、いつもとは違う厳しい表情でそう聞いた。
俺も、知らずに拳を握り締めていた。
嫌な汗が背中を伝うのがわかる。
「―――意識は、ないそうです。怪我は、わからないけど・・・・でもたぶん、階段を落ちたんじゃないかって―――。悠太くんのスマホは、2階の寝室にあったそうです」
「―――分かった。どこの病院かわかったら、すぐに教えて」
「はい」
渉くんはそれ以上は何も言わず、再び部長室へ戻った。
仕事なんて、手につかなかった。
嫌な考えばかりが頭に浮かぶ。
悠太に、何かあったら・・・・・
そんなこと
考えたくもないのに―――
南の隣の席に座るイチに声を掛けた。
始業時間の5分前になっても現れない悠太。
まだ連絡もなかった。
「何も聞いてないですけど・・・まだ寝てるとか?電話してみますね」
言いながら、イチが自分のスマホを取り出した。
部長室から、渉くんが出てくるのが見えた。
「なあ、南は?」
「まだ連絡ないんですよ。今電話してもらってます」
俺の言葉に、渉くんは心配そうに頷いた。
「―――出ない。おかしいな・・・・」
イチが首を傾げる。
「寝てるんじゃないですか?」
社員の一人がそう言った。
もちろんその可能性はある。
昨日、ずいぶん酔っぱらってたし。
でも、俺たち4人の想いを聞かされて、悠太はだいぶ動揺していた。
そのことが、俺たちは気になっていたのだ。
「・・・・ちょっと、坂井に電話してみます」
そう言いながら、イチは席を立ち廊下に出て行った。
俺と渉くんはちらりと視線をかわし。
「―――じゃあ、とりあえず仕事を始めてようか」
「だな。じゃ、後は頼むね」
そう言って渉くんは再び部長室へと戻った。
5分ほどすると、イチが席に戻ってきた。
「どうだった?」
「坂井も何も知らないみたいですね。一応坂井からも電話してみて、出ないようなら家に様子見に行ってみるって言ってました」
「そうか」
ほっと息をつく。
本当は俺が悠太の家に行きたいところだが、さすがに社員の手前それはできない。
直の家から悠太の家までは5分。
今は、直に任せるしかなかった。
だがその20分後。
突然、イチがスマホを手に席を立った。
「イチ―――原?どうした?」
スマホの画面を見つめるイチの顔は真っ蒼になっていた。
ただ事じゃない。
「市原?南に何か―――」
「・・・・倒れてたって」
「―――は?」
一瞬、部署内が静まり返った。
仕事の手が止まり、みんながイチのことを見ていた。
「倒れてたって、どういう―――」
「坂井が家に行ったら、悠太くんが階段の下に倒れてて、すごい熱で―――すぐに救急車呼んで、今救急車を待ってるところだって」
イチの、スマホを持つ手が微かに震えていた。
いつもどちらかと言うと冷静なイチが、こんなに動揺しているところを見るのは初めてだ。
それでも、素早くスマホを操作し、直に何かメッセージを送っているようだった。
「―――とりあえず坂井はそのまま救急車に同乗して、搬送先がわかったら連絡するそうです」
「それで、南の意識は?怪我してるのか?」
気付けば渉くんがそばにいて、いつもとは違う厳しい表情でそう聞いた。
俺も、知らずに拳を握り締めていた。
嫌な汗が背中を伝うのがわかる。
「―――意識は、ないそうです。怪我は、わからないけど・・・・でもたぶん、階段を落ちたんじゃないかって―――。悠太くんのスマホは、2階の寝室にあったそうです」
「―――分かった。どこの病院かわかったら、すぐに教えて」
「はい」
渉くんはそれ以上は何も言わず、再び部長室へ戻った。
仕事なんて、手につかなかった。
嫌な考えばかりが頭に浮かぶ。
悠太に、何かあったら・・・・・
そんなこと
考えたくもないのに―――
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