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第33話
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「へ~~~~~~~え、あの水族館でポーチを、ねえ」
イチが思いっきりじろりと龍也くんを睨みつけた。
「俺が、そのポーチが欲しいって言っちゃったから・・・・」
俺が慌ててそう言うと、イチがちろりと俺を見た。
「いいんだ、南。俺が南のために何かしたかっただけだから」
「え・・・・」
龍也くんの言葉にドキッとする。
「悠太くん!なんで赤くなってんの!」
「べ、別に俺は―――」
「龍也くん、まさか抜け駆けして悠太くんと会ってたんじゃ―――」
「おい!お前、会社では課長って呼べよ!」
「いいじゃん、今他に誰もいないんだから!」
「そういう問題じゃねえだろ!」
・・・・なんか問題が、ずれて来てる気が・・・・?
「・・・あのさ、イチ」
「なに!!」
「・・・・こわ」
「あ・・・・ご、ごめん」
イチが慌てて謝るから、俺は思わず噴き出した。
「ふ・・・別にいいけど。あのさ、渉くん、今日は来ないのかな?って聞きたかったんだけど」
いつも屋上で一緒にお昼ご飯を食べる渉くんとイチ。
部署を出るとき、渉くんは部長室で誰かと電話で話しているようだったけど―――
「ああ、なんかN社の友利さんから来月のイベントについて電話が来たみたいで、これから会ってくるって」
「え、そうなの?」
「うん。さっき、コンビニに行った帰りにちょうどエレベーターのところで会って聞いたよ」
「そうなんだ。じゃ、午後もいないのかな。渉くんがいないとちょっと寂しいね」
「「え!?」」
イチと渉くんの声が重なり、俺は思わず顔を上げた。
「え、何?」
「寂しいって、悠太くんそれ・・・」
「悠太、まさか渉くんのこと―――」
龍也くんまで、俺のこと名前で呼んじゃってるし―――
「いや、渉くんて仕事中もちょいちょい部長室から出てきて俺らの仕事見てくれたりするし、最近お昼も一緒だから・・・・そういう意味でだよ?」
「そっか」
龍也くんがほっとしたように胸をなでおろしていた。
イチは
「・・・・じゃ、龍也くんのことは?」
と言って俺を見た。
「ポーチのお礼とか言ってお弁当まで作ってあげちゃってさ。大体、龍也くんの話するときに顔赤くしたりするし」
「それは・・・・そりゃ、龍也くんはかっこいいし、仕事もできるから憧れてるけど」
「え、ほんと?」
龍也くんが頬を染め、俺を見る。
「入社したころから、龍也くんは俺の目標だったから。上司として、憧れてるんだよ」
「あ・・・・そう・・・・だよな・・・・」
「龍也くん、あからさまにがっかりしないでよ」
そう言って、イチは苦笑した。
「がっかりって・・・・別に、がっかりはしてないでしょ?龍也くんは」
俺がそう言って笑うと、イチと龍也くんはちょっと顔を見合わせ、同時に俺をちらりと恨めしそうに見た。
「な、なに?」
「悠太くん・・・・けっこう残酷だよ、その鈍感さは」
「残酷って・・・・」
「だから、龍也くんは―――」
「イチ、いいよ。俺が言うから」
龍也くんが口を開きかけたイチの肩を掴み、一歩俺に近づいた。
「悠太、俺ね」
「・・・・はい」
「俺、悠太が好きなんだよ」
そう言って、龍也くんは俺をまっすぐに見つめた―――。
イチが思いっきりじろりと龍也くんを睨みつけた。
「俺が、そのポーチが欲しいって言っちゃったから・・・・」
俺が慌ててそう言うと、イチがちろりと俺を見た。
「いいんだ、南。俺が南のために何かしたかっただけだから」
「え・・・・」
龍也くんの言葉にドキッとする。
「悠太くん!なんで赤くなってんの!」
「べ、別に俺は―――」
「龍也くん、まさか抜け駆けして悠太くんと会ってたんじゃ―――」
「おい!お前、会社では課長って呼べよ!」
「いいじゃん、今他に誰もいないんだから!」
「そういう問題じゃねえだろ!」
・・・・なんか問題が、ずれて来てる気が・・・・?
「・・・あのさ、イチ」
「なに!!」
「・・・・こわ」
「あ・・・・ご、ごめん」
イチが慌てて謝るから、俺は思わず噴き出した。
「ふ・・・別にいいけど。あのさ、渉くん、今日は来ないのかな?って聞きたかったんだけど」
いつも屋上で一緒にお昼ご飯を食べる渉くんとイチ。
部署を出るとき、渉くんは部長室で誰かと電話で話しているようだったけど―――
「ああ、なんかN社の友利さんから来月のイベントについて電話が来たみたいで、これから会ってくるって」
「え、そうなの?」
「うん。さっき、コンビニに行った帰りにちょうどエレベーターのところで会って聞いたよ」
「そうなんだ。じゃ、午後もいないのかな。渉くんがいないとちょっと寂しいね」
「「え!?」」
イチと渉くんの声が重なり、俺は思わず顔を上げた。
「え、何?」
「寂しいって、悠太くんそれ・・・」
「悠太、まさか渉くんのこと―――」
龍也くんまで、俺のこと名前で呼んじゃってるし―――
「いや、渉くんて仕事中もちょいちょい部長室から出てきて俺らの仕事見てくれたりするし、最近お昼も一緒だから・・・・そういう意味でだよ?」
「そっか」
龍也くんがほっとしたように胸をなでおろしていた。
イチは
「・・・・じゃ、龍也くんのことは?」
と言って俺を見た。
「ポーチのお礼とか言ってお弁当まで作ってあげちゃってさ。大体、龍也くんの話するときに顔赤くしたりするし」
「それは・・・・そりゃ、龍也くんはかっこいいし、仕事もできるから憧れてるけど」
「え、ほんと?」
龍也くんが頬を染め、俺を見る。
「入社したころから、龍也くんは俺の目標だったから。上司として、憧れてるんだよ」
「あ・・・・そう・・・・だよな・・・・」
「龍也くん、あからさまにがっかりしないでよ」
そう言って、イチは苦笑した。
「がっかりって・・・・別に、がっかりはしてないでしょ?龍也くんは」
俺がそう言って笑うと、イチと龍也くんはちょっと顔を見合わせ、同時に俺をちらりと恨めしそうに見た。
「な、なに?」
「悠太くん・・・・けっこう残酷だよ、その鈍感さは」
「残酷って・・・・」
「だから、龍也くんは―――」
「イチ、いいよ。俺が言うから」
龍也くんが口を開きかけたイチの肩を掴み、一歩俺に近づいた。
「悠太、俺ね」
「・・・・はい」
「俺、悠太が好きなんだよ」
そう言って、龍也くんは俺をまっすぐに見つめた―――。
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