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第18話
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「なんでお前がいるんだよ」
俺は思わず和樹を睨んだ。
昼休み、俺はコンビニでカップ麺を買ってきていた南を屋上へ誘った。
俺もいつもコンビニでおにぎりやパンを買ってきていた。
屋上にはベンチが数台並んでいて、晴れている日はここで昼食を取っている社員も多かった。
南はいつも自分の席で済ませているようだったが、誘うとちょっと照れながらも着いてきてくれた。
と、ここまでは良かったのだが、なぜか部署を出たとこでばったり会った和樹までついてきたのだ。
「俺も今、コンビニでパン買ってきたから、ちょうどよかった」
なんてにこにこ南に笑いかけながらちゃっかりその隣に座る和樹。
ひとつのベンチに、俺と和樹が南を挟んで座る。
そんな奇妙な状況に、南もなんだか居心地が悪そうだった。
「ちょうど、おじさんと悠太くんに聞きたいことがあったんですよ」
「聞きたいこと?」
「お前、おじさんて呼ぶのよせって言ってるだろ」
むっと顔をしかめる俺のことはスルーして。
「昨日、おじさん何したの、悠太くんに」
その言葉に、南はぴたりと動きを止めた。
その顔が、見る間に真っ赤になっていく。
「・・・・マジで、なんかあったんすね」
和樹の声に、南ははっとしたように目を見開いた。
「ち!違くて!あの、昨日は―――」
「ちゅーした」
「――――はい?」
俺の言葉に、南は固まり和樹も・・・・
「どういうこと?」
「い、イチ、あの―――」
「南はなんもしてない。俺が、勝手にしただけ」
「しただけって・・・・」
「南が好きだから。ちゅーした」
正直な気持ち。
俺は隠すつもりなんてなかったから。
そんな俺の言葉に、和樹はショックを受けたようにその顔をこわばらせた。
「・・・・悠太くんは?」
「え?」
「悠太くんは、渉くんのことどう思ってるの?」
「俺は・・・・」
「今日、ずっと様子おかしかったのは渉くんのせいなわけでしょ?それは、渉くんのことが好きだから?」
「え・・・・」
南は、俺と和樹の顔を交互に見ていた。
その顔は戸惑っているようで、困っているようで・・・・
「俺は・・・・わからない」
それでも、絞り出すように声を出す南。
「部長から告白されたときは驚いて・・・正直信じられなくて。でも、嫌な気持ちはしなかったです。昨日も・・・・だから・・・嫌では、なかったです。嫌ではなかったけど・・・・でもそれがどういう気持ちからなのか、よくわからない・・・・ごめんなさい」
クソ真面目なその答えに、和樹はちょっと驚いたように目を瞬かせた。
そして俺は―――
「―――ぶっ、く、あははは」
思わず堪えきれなくなって噴き出した。
「おもしれえ。上司に告られて、断るにしてももっとうまい言い方あるのに、お前そういうの全く考えてねえな」
「え・・・だって、部長いい人だし、真剣に言ってくれたのに嘘つけない・・・・」
「ふ・・・・ふふ、そういうとこ。そういうとこだよ。俺、南のそういうとこが好きなんだ」
「そ・・・そうなんですか・・・・?」
「うん。だから、大丈夫。今すぐ答えだせなんて言わねえし」
俺の言葉にほっとして笑顔になる南。
そう。いつでも正直にその気持ちを俺にぶつけてくれる、そんな南だから好きなんだ。
ちらりと和樹を見ると、むっと顔をしかめ俺を睨みつけていた。
こいつもわかりやすいな。
けど―――
「・・・・それに、これからどんなライバルが現れたとしても・・・・俺は、諦めるつもりないからさ」
たとえ身内でも。
本気で惚れた相手を、簡単に渡したりしない・・・・。
俺は思わず和樹を睨んだ。
昼休み、俺はコンビニでカップ麺を買ってきていた南を屋上へ誘った。
俺もいつもコンビニでおにぎりやパンを買ってきていた。
屋上にはベンチが数台並んでいて、晴れている日はここで昼食を取っている社員も多かった。
南はいつも自分の席で済ませているようだったが、誘うとちょっと照れながらも着いてきてくれた。
と、ここまでは良かったのだが、なぜか部署を出たとこでばったり会った和樹までついてきたのだ。
「俺も今、コンビニでパン買ってきたから、ちょうどよかった」
なんてにこにこ南に笑いかけながらちゃっかりその隣に座る和樹。
ひとつのベンチに、俺と和樹が南を挟んで座る。
そんな奇妙な状況に、南もなんだか居心地が悪そうだった。
「ちょうど、おじさんと悠太くんに聞きたいことがあったんですよ」
「聞きたいこと?」
「お前、おじさんて呼ぶのよせって言ってるだろ」
むっと顔をしかめる俺のことはスルーして。
「昨日、おじさん何したの、悠太くんに」
その言葉に、南はぴたりと動きを止めた。
その顔が、見る間に真っ赤になっていく。
「・・・・マジで、なんかあったんすね」
和樹の声に、南ははっとしたように目を見開いた。
「ち!違くて!あの、昨日は―――」
「ちゅーした」
「――――はい?」
俺の言葉に、南は固まり和樹も・・・・
「どういうこと?」
「い、イチ、あの―――」
「南はなんもしてない。俺が、勝手にしただけ」
「しただけって・・・・」
「南が好きだから。ちゅーした」
正直な気持ち。
俺は隠すつもりなんてなかったから。
そんな俺の言葉に、和樹はショックを受けたようにその顔をこわばらせた。
「・・・・悠太くんは?」
「え?」
「悠太くんは、渉くんのことどう思ってるの?」
「俺は・・・・」
「今日、ずっと様子おかしかったのは渉くんのせいなわけでしょ?それは、渉くんのことが好きだから?」
「え・・・・」
南は、俺と和樹の顔を交互に見ていた。
その顔は戸惑っているようで、困っているようで・・・・
「俺は・・・・わからない」
それでも、絞り出すように声を出す南。
「部長から告白されたときは驚いて・・・正直信じられなくて。でも、嫌な気持ちはしなかったです。昨日も・・・・だから・・・嫌では、なかったです。嫌ではなかったけど・・・・でもそれがどういう気持ちからなのか、よくわからない・・・・ごめんなさい」
クソ真面目なその答えに、和樹はちょっと驚いたように目を瞬かせた。
そして俺は―――
「―――ぶっ、く、あははは」
思わず堪えきれなくなって噴き出した。
「おもしれえ。上司に告られて、断るにしてももっとうまい言い方あるのに、お前そういうの全く考えてねえな」
「え・・・だって、部長いい人だし、真剣に言ってくれたのに嘘つけない・・・・」
「ふ・・・・ふふ、そういうとこ。そういうとこだよ。俺、南のそういうとこが好きなんだ」
「そ・・・そうなんですか・・・・?」
「うん。だから、大丈夫。今すぐ答えだせなんて言わねえし」
俺の言葉にほっとして笑顔になる南。
そう。いつでも正直にその気持ちを俺にぶつけてくれる、そんな南だから好きなんだ。
ちらりと和樹を見ると、むっと顔をしかめ俺を睨みつけていた。
こいつもわかりやすいな。
けど―――
「・・・・それに、これからどんなライバルが現れたとしても・・・・俺は、諦めるつもりないからさ」
たとえ身内でも。
本気で惚れた相手を、簡単に渡したりしない・・・・。
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