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第14話
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「俺、片付け手伝ってから帰るんで」
そう言って南は店に残った。
だいぶ酔っぱらってふらふらしていて、あれで手伝えるのか?と首を傾げるくらい。
だから、俺はぞろぞろと駅へと向かう社員たちからそっと外れ、南が店から出てくるのを待っていたのだ。
社員たちはそれぞれ仲のいいグループで固まっていて、和樹もいつの間にかその一つの輪の中に入っていた。
たっちゃんも部下の一人と何やら話し込んでいて俺の行動には気づいていない。
そもそも、こういう飲み会では部長なんていない方が気も楽だろう。
なんて自分で勝手に結論付けて、俺は店に戻った。
南をあの状態で1人で返すのは心配だった。
―――というのは建前で。
南の幼馴染だという店員の坂井という男。
どうやら和樹とは高校の同級生だったらしい。
すらっとした明るく優しそうな青年。
人のよさそうな笑顔で・・・・
南と本当に仲がよさそうだった。
その様子にもやもやしていた俺は、南と坂井の様子をうかがっていた・・・・というのが正直なところだった。
だって、いくら幼馴染とはいえ、南はあの坂井に気を許し過ぎだ。
坂井の方も南のことがかわいくってしょうがないっていう目で見てる―――ように俺には見えた。
「ほら悠太、帰るよ。しっかりして」
しばらく待っていると、南が坂井に支えられるようにして出てきた。
体を密着させるように2人寄り添って歩く姿に、思わずむっとする。
が、突然そこに飛び出していくわけにもいかず、とりあえず俺は2人の後を着いて行くことにした。
5分ほど歩くと、ある家に入って行った。
どうやらそこが南の家らしかった。
造りは古いがしっかりと落ち着いた感じの一軒家。
引き戸をガラガラと開ける音とともに2人が入っていく。
『おばちゃん―――』
坂井の声が聞こえる。
南の母親とも当然顔見知りだろう。
しばらくすると坂井が出てきて、来た道を足早に戻って行った。
俺はほっと息をつき、しばらくそこで中の様子をうかがった。
玄関の戸はすりガラスになっていて、うっすらと南らしき人影が座っているのが見えた。
そのまま帰ってもよかったけれど、何となくそのままガラス越しに南の姿を見つめていた。
入社時から、南のことは気になっていた。
色白で整った顔立ち。
派手に見えるその容姿とは裏腹に、南はとてもまじめな男だった。
人の話は真剣に聞くし、何より誰に対しても態度が変わらない。
ちょっと不器用で天然だが、本人はいたって真面目でとても素直。
そんな南を見ているうちに、いつしか俺は自分が南を恋愛対象として見ていることに気づいた。
気付かぬうちに目で追い、そばにいる社員にまで嫉妬していた。
少しでもその姿を見ていたくて、隠し撮りした画像をパソコンに保存したり。
そして、本人に言わずにはいられなくなったのだ。
自分の気持ちを―――
もしかしたら気持ち悪がられるかもしれない。
会社を辞めてしまうかもしれない。
そんな思いもあったけれど・・・・
南は、全く俺を気持ち悪がったりすることはなかった。
いや、もしかしたら上司である俺を目の前にそんな振りをしたのかもしれないけど。
でも、南は嘘をつくような男じゃない―――と思う。
戸惑っていたのは確かだったけれど。
それでも、俺の気持ちを真剣に受け止めてくれた。
それだけで、俺は嬉しかった・・・・。
「・・・・あいさつくらいなら、いいかな」
と、俺は自分を納得させ、玄関に近づいた。
ただ単に、南の顔を見たかっただけだけれど。
親がいるだろうし。
ちょっと、挨拶するだけなら―――
そう思って、俺は南の家の玄関チャイムを鳴らしたのだった・・・・。
そう言って南は店に残った。
だいぶ酔っぱらってふらふらしていて、あれで手伝えるのか?と首を傾げるくらい。
だから、俺はぞろぞろと駅へと向かう社員たちからそっと外れ、南が店から出てくるのを待っていたのだ。
社員たちはそれぞれ仲のいいグループで固まっていて、和樹もいつの間にかその一つの輪の中に入っていた。
たっちゃんも部下の一人と何やら話し込んでいて俺の行動には気づいていない。
そもそも、こういう飲み会では部長なんていない方が気も楽だろう。
なんて自分で勝手に結論付けて、俺は店に戻った。
南をあの状態で1人で返すのは心配だった。
―――というのは建前で。
南の幼馴染だという店員の坂井という男。
どうやら和樹とは高校の同級生だったらしい。
すらっとした明るく優しそうな青年。
人のよさそうな笑顔で・・・・
南と本当に仲がよさそうだった。
その様子にもやもやしていた俺は、南と坂井の様子をうかがっていた・・・・というのが正直なところだった。
だって、いくら幼馴染とはいえ、南はあの坂井に気を許し過ぎだ。
坂井の方も南のことがかわいくってしょうがないっていう目で見てる―――ように俺には見えた。
「ほら悠太、帰るよ。しっかりして」
しばらく待っていると、南が坂井に支えられるようにして出てきた。
体を密着させるように2人寄り添って歩く姿に、思わずむっとする。
が、突然そこに飛び出していくわけにもいかず、とりあえず俺は2人の後を着いて行くことにした。
5分ほど歩くと、ある家に入って行った。
どうやらそこが南の家らしかった。
造りは古いがしっかりと落ち着いた感じの一軒家。
引き戸をガラガラと開ける音とともに2人が入っていく。
『おばちゃん―――』
坂井の声が聞こえる。
南の母親とも当然顔見知りだろう。
しばらくすると坂井が出てきて、来た道を足早に戻って行った。
俺はほっと息をつき、しばらくそこで中の様子をうかがった。
玄関の戸はすりガラスになっていて、うっすらと南らしき人影が座っているのが見えた。
そのまま帰ってもよかったけれど、何となくそのままガラス越しに南の姿を見つめていた。
入社時から、南のことは気になっていた。
色白で整った顔立ち。
派手に見えるその容姿とは裏腹に、南はとてもまじめな男だった。
人の話は真剣に聞くし、何より誰に対しても態度が変わらない。
ちょっと不器用で天然だが、本人はいたって真面目でとても素直。
そんな南を見ているうちに、いつしか俺は自分が南を恋愛対象として見ていることに気づいた。
気付かぬうちに目で追い、そばにいる社員にまで嫉妬していた。
少しでもその姿を見ていたくて、隠し撮りした画像をパソコンに保存したり。
そして、本人に言わずにはいられなくなったのだ。
自分の気持ちを―――
もしかしたら気持ち悪がられるかもしれない。
会社を辞めてしまうかもしれない。
そんな思いもあったけれど・・・・
南は、全く俺を気持ち悪がったりすることはなかった。
いや、もしかしたら上司である俺を目の前にそんな振りをしたのかもしれないけど。
でも、南は嘘をつくような男じゃない―――と思う。
戸惑っていたのは確かだったけれど。
それでも、俺の気持ちを真剣に受け止めてくれた。
それだけで、俺は嬉しかった・・・・。
「・・・・あいさつくらいなら、いいかな」
と、俺は自分を納得させ、玄関に近づいた。
ただ単に、南の顔を見たかっただけだけれど。
親がいるだろうし。
ちょっと、挨拶するだけなら―――
そう思って、俺は南の家の玄関チャイムを鳴らしたのだった・・・・。
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