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第7話
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渉くんと南、それから本社から出向してきた市原が揃って部長室へ行くと、俺たちは通常通りの仕事に戻った。
けど、俺はどうも仕事に集中できずにいた。
あの市原という社員が渉くんの従弟だったということにも驚きだけど・・・。
年の離れた従兄弟がいるということは聞いたことがあったけど、本人とは会ったことがなかった。
しかも同じ会社の、本社に勤めていたなんて。
あんまり自分のことは話さない人ではあるけども。
いや、それよりも。
なんで南が一緒にいるんだ?
渉くんと市原がどんな話をしているのかは知らないけど、どうしてそこに南まで呼ばれるのか。
まるで意味が分からなかった。
「課長、この得意先の件ですけど―――」
「あ、ああ、何?」
社員に話しかけられ、俺は慌てて頭を切り替えたのだった。
しばらくすると南と市原は自分の席へ戻り、仕事を始めた。
市原は南の隣で、南の説明を熱心に聞いていた。
南の肩越しに、パソコンの画面を見ている市原。
その距離が妙に近くて、俺の胸がざわざわする。
いや、一緒に仕事するわけだし、南のパソコンを見ているだけだと思えばなんてことないんだろうけど。
なんて言うか・・・・
時折南の顔を見る市原の目が、妙に熱っぽいような、そんな気がしたのだ。
「市原さんの歓迎会やりましょうよ!」
昼休憩に入ると、入社5年目の女性社員、菊池がそう言って部署内を見渡した。
「お、いいね~、どこでやる?いつもの駅前の居酒屋?」
「あ、あそこ先週から改装中で休みだよ、確か」
「マジで?じゃあどっかいいとこないかな。南、お前知らない?」
菊池と同期の宮本が南を見る。
突然振られた南が目を瞬かせる。
「え・・・俺ですか?」
「だってお前の自宅が一番会社から近いし。この辺、地元だろ?どっかいいとこ知らないの?」
宮本の言葉に南はしばし考え。
「ないこともないですけど・・・・ちょっと、聞いてみてからでもいいですか?」
と言ったのだった。
外で昼飯を済ませ戻ると、ちょうど廊下で南が電話をしているところだった。
「―――ほんとに?大丈夫?結構人数多いから、もし迷惑なら―――そお?それなら―――うん、詳しいこと決まったらまた連絡するよ。ありがと、直くん」
そう言ってほほ笑むと電話を終えた南がくるりと向きを変え、俺に気づいた。
「あ、課長」
「電話、もしかして歓迎会の件か?」
「あ―――はい、まあ。友達の家が居酒屋やってて、そこなら紹介できるかなって。広くはないですけど、味は保証します」
そう言って笑う南。
ちょっと恥ずかしそうに、でもなんだか誇らしげにそう言う南はかわいかった。
「そうなのか。迷惑じゃなければ、ぜひお願いするよ」
「はい」
「そう言えば、さっき部長室で何話してたんだ?あの市原と」
「え・・・・それはその・・・・仕事のことで、ちょっと」
南の目が泳ぐ。
素直というか、なんと言うか。
嘘が下手だ。
そんなところもかわいいと思ってしまう俺も、相当重症かもしれない、と思った・・・・。
けど、俺はどうも仕事に集中できずにいた。
あの市原という社員が渉くんの従弟だったということにも驚きだけど・・・。
年の離れた従兄弟がいるということは聞いたことがあったけど、本人とは会ったことがなかった。
しかも同じ会社の、本社に勤めていたなんて。
あんまり自分のことは話さない人ではあるけども。
いや、それよりも。
なんで南が一緒にいるんだ?
渉くんと市原がどんな話をしているのかは知らないけど、どうしてそこに南まで呼ばれるのか。
まるで意味が分からなかった。
「課長、この得意先の件ですけど―――」
「あ、ああ、何?」
社員に話しかけられ、俺は慌てて頭を切り替えたのだった。
しばらくすると南と市原は自分の席へ戻り、仕事を始めた。
市原は南の隣で、南の説明を熱心に聞いていた。
南の肩越しに、パソコンの画面を見ている市原。
その距離が妙に近くて、俺の胸がざわざわする。
いや、一緒に仕事するわけだし、南のパソコンを見ているだけだと思えばなんてことないんだろうけど。
なんて言うか・・・・
時折南の顔を見る市原の目が、妙に熱っぽいような、そんな気がしたのだ。
「市原さんの歓迎会やりましょうよ!」
昼休憩に入ると、入社5年目の女性社員、菊池がそう言って部署内を見渡した。
「お、いいね~、どこでやる?いつもの駅前の居酒屋?」
「あ、あそこ先週から改装中で休みだよ、確か」
「マジで?じゃあどっかいいとこないかな。南、お前知らない?」
菊池と同期の宮本が南を見る。
突然振られた南が目を瞬かせる。
「え・・・俺ですか?」
「だってお前の自宅が一番会社から近いし。この辺、地元だろ?どっかいいとこ知らないの?」
宮本の言葉に南はしばし考え。
「ないこともないですけど・・・・ちょっと、聞いてみてからでもいいですか?」
と言ったのだった。
外で昼飯を済ませ戻ると、ちょうど廊下で南が電話をしているところだった。
「―――ほんとに?大丈夫?結構人数多いから、もし迷惑なら―――そお?それなら―――うん、詳しいこと決まったらまた連絡するよ。ありがと、直くん」
そう言ってほほ笑むと電話を終えた南がくるりと向きを変え、俺に気づいた。
「あ、課長」
「電話、もしかして歓迎会の件か?」
「あ―――はい、まあ。友達の家が居酒屋やってて、そこなら紹介できるかなって。広くはないですけど、味は保証します」
そう言って笑う南。
ちょっと恥ずかしそうに、でもなんだか誇らしげにそう言う南はかわいかった。
「そうなのか。迷惑じゃなければ、ぜひお願いするよ」
「はい」
「そう言えば、さっき部長室で何話してたんだ?あの市原と」
「え・・・・それはその・・・・仕事のことで、ちょっと」
南の目が泳ぐ。
素直というか、なんと言うか。
嘘が下手だ。
そんなところもかわいいと思ってしまう俺も、相当重症かもしれない、と思った・・・・。
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