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第37話(最終話)
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「ムウちゃん!!お帰り!やっと帰ってきてくれたね!!」
家に戻り、2人に知らせるとその15分後、諒がやってきてムウに飛びついた。
「諒ちゃん、久しぶり」
「もう、ほんとだよ~~~、超会いたかったんだから~!!」
調子のいい諒に、俺も苦笑するしかない。
「俺も会いたかったよ」
ムウも、嬉しそうだった。
そして―――
「ムウくん!!」
その10分後に飛び込んできたのは奈央だった。
「ナオ、久しぶり」
ムウの笑顔に、奈央が涙ぐむ。
奈央のそんな表情、見たことがなかったからちょっとびっくりした。
「ムウくん・・・・よかった。ちゃんと思い出したんだね、俺たちのこと―――」
「うん。心配かけてごめんね。―――今ご飯作ってるから、上がって」
久しぶりの、4人での食事はにぎやかだった。
諒が笑い、ムウが笑い、奈央が笑い、そして俺も笑った。
4人が忘れていた1ヶ月を取り戻すため、ずっとしゃべり続けていた。
ムウの作ってくれた料理を食べながら。
「あ、ビールなくなっちゃった」
諒が空き缶を振ると、ムウが立ち上がる。
「あ、俺持ってくる」
「あ、ムウくん、俺が―――」
「ついでにトイレ行ってくるから、ナオは座ってて」
そう言ってムウがキッチンへ入っていくと、奈央が何か言いたげに俺を見た。
「なに?」
「なに?じゃないでしょ?天国で何があったの?リロイさんは?ちゃんと話してよ」
「そうだよ!ムウちゃん、記憶をなくしてたんでしょ?どうやって思い出したの?」
「ちゃんと後で話すよ。今は・・・・」
その時だった。
『キャアーーーーー!!!』
「ムウ!?」
俺たちは慌ててキッチンへと飛び込んだ。
「ムウ!どうし―――」
「アキ!」
キッチンへ入った途端、ムウが俺に飛びついてきた。
「ど、どうした?」
「ゴキブリ!!すごいおっきいやついた!あれ怖い!おっきい!怖い!!」
―――また、ゴキブリかい・・・・・
「大丈夫だよ、ムウ。もういなくなったよ」
「やだやだ、気持ち悪い~~~~~」
ムウの目から、涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「―――これ、どういうこと?」
キッチンの入り口から今の光景を見ていた奈央が呟いた。
「なんで・・・・何で、ムウくん、普通に泣いてるの?」
「え?何言ってんの?奈央」
諒が、不思議そうに奈央を見た。
「諒さん、気付かないの?ムウくんの涙・・・・」
「へ・・・・?―――あ!!水晶・・・・じゃない・・・・?」
「・・・・そうだよ。ムウは、人間になったんだ」
俺の言葉に、2人はしばし呆然とその場に立ち尽くしていたのだった・・・・・。
「じゃあ・・・・本当にムウちゃんは人間になったの?」
リビングに戻った俺たちは、天国での出来事を2人に話していた。
「うん。もう、人間だよ」
「じゃあ・・・・もう、羽、ついてないの?天使の輪も?」
諒の言葉に、笑顔で頷くムウ。
「うん」
「でも・・・・リロイさんと会えなくなっちゃうのに・・・・?」
奈央が心配そうにムウを見つめる。
「リロイが・・・・会いに来てくれるって言ってた。でも俺ね、神様に1日考える時間をやるって言われたけど、本当は悩んでなんかなかった」
ムウの言葉に、今度は俺も驚く。
「俺の力は、世の中の役に立つって言われたけど、それも悩まなかった。だって、俺1人がその力を使ったところで、根本的な解決にはならないって思ったから。もちろん、何の役にも立たないってことはないだろうけど―――それでも、俺が世の中を変えるなんて、そんな大きなこと言えないって思った」
「でもさ、神様はそれを望んでたんでしょ?」
諒の言葉に、今度は俺が答える。
「確かにそうして欲しかったって言ってたけど、でも神様もそれがどうしても必要だとは思ってなかったみたい。結局誰かの力に頼らなきゃ得られない平和なんて、意味ないって言ってたよ。それに・・・・ムウがその力を使えなくても、水晶が役に立つって」
「水晶って・・・・ムウくんの涙の?どういうこと?」
「あの水晶は、ムウの力が結晶化したものなんだ。だから、あの水晶には全部、ムウの力が込められてるっていうことらしい。直接使う時みたいな強力な力はないみたいだけど・・・・それを持つだけで苛立つ気持ちを鎮める効果とか、優しい気持ちになれる効果があるんだって。だから、今後はムウのお父さんとリロイが、仕事をするのに役立てていくって」
「へえー、そうなんだ・・・・そんな効果があるなんて、知らなかったな」
諒も感心したように言って奈央と頷きあった。
「・・・・リロイと別れるのはね、すごく寂しいなって思った。でも・・・・俺、アキといたいんだ」
そう言って、ムウは俺を見つめた。
「1ヶ月前、ミカエル様に俺が記憶を消される前、アキの中から俺の記憶を消してもらって・・・・・その時、俺悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった。自分が死ぬことよりも、アキに忘れられてしまうことが、すごく悲しかった。こんなに悲しい気持ちになるのなら・・・・感情なんてない方がいいって思った。何も、感じなくなってしまえばいいって・・・・」
「ムウ・・・・」
「でも、アキのことを忘れるのだけは嫌だった。死んでも、忘れたくなかった。その時―――初めて、後悔したんだ。あんな約束しなければよかったって。だって、アキもきっとあとで記憶が戻った時に俺がいないことに気付いたら、すごく悲しむだろうって思ったから。俺と同じ悲しい気持ちを、アキにもさせてしまうかもしれないって思ったら・・・・すごく後悔したよ。もっと他に、方法があったかもしれないのにって。どうしてもっと深く考えなかったんだろうって・・・・・。だから、アキが天国まで来てくれて、俺の記憶を取り戻してくれたってわかった時、もう、離れたくないって思ったんだ。もう、アキのことを忘れたくない・・・・もう、アキに悲しい思いをさせたくないって」
「だから、悩まなかったの?でも、リロイさんとは―――」
「うん・・・・だけど、天使の一生は長いから・・・・きっと、リロイとはまた会えるって思った。リロイが、俺のことを忘れないでいてくれたら、きっと会いに来てくれるんじゃないかなって。その時は漠然と思っただけだけど、二度と会えないとは思わなかったんだ」
そう言って、ムウは笑った。
明るいその笑顔に、2人もほっとしたように笑った。
あの時―――ムウが、自分が無意識に力を使ったんじゃないかと心配し、泣いたことは内緒だった。
『女々しいって思われそうでやだ』
とムウが言ったのだ。
この2人はそんなこと思わないと思うけど・・・・
でも、意外と気にしぃなムウに、思わず笑みが零れた。
こんなに、愛されてるのに・・・・
「・・・・ここにいたのか」
俺は、アトリエにいたムウに声をかけた。
4人で食べて飲んで、夜中まで騒いでいた。
そして気付けばリビングで寝てしまっていた俺たち。
ふと目を覚ますと、奈央と諒は大の字で寝ていて、ムウの姿はなかった。
でも慌てることはなかった。
きっとアトリエだろうと思ったから・・・・。
アトリエには、俺が描いた顔のない天使―――ムウの絵が。
ムウが天国へ持って行っていた2枚の絵は、今はムウの寝室にあった。
「・・・・これ、顔も描いてくれる?」
ムウが、俺の絵をそっと指でなぞった。
「もちろん。明日から、描き始めるよ。ムウ、またモデルになってね」
「うん」
ムウが笑顔で頷く。
俺はムウの隣に立つと、そっとその手を握った。
ムウも俺の手を握り返してくれる。
じわじわと、暖かい、幸せな気持ちが溢れてくる。
「・・・・俺、やっぱりこのアトリエ、好きだな」
「そお?」
「うん。なんか、落ち着くんだ。ここにいるだけで、アキの温もりを感じるみたい」
「俺がいなくても?」
「うん。―――でも、いた方がいいけど」
「ふふ」
「笑うなよぉ」
ぷうっと頬を膨らませるムウが、可愛くて仕方ない。
「ふふ、ごめん。愛してるよ」
「・・・・俺も」
ふと見つめ合い、どちらからともなくキスをする。
「・・・・後悔、してない?」
「・・・・人間になってなかったら、きっと後悔してたよ」
「リロイに・・・・会いたくなる?」
「それは・・・・なると思うけど」
こういう、正直なところも好きだ。
天国で唯一の兄弟で、味方だったリロイ。
そのリロイへの愛は、きっと変わらないだろう・・・・・。
ときどきは、嫉妬するのも仕方ない・・・・と思うんだけど。
「・・・・・ムウ、旅行行こうか」
「旅行?」
ムウが、首を傾げる。
「うん。新婚旅行」
「新婚・・・・?」
「今、俺の父親がスペインにいるんだ。ムウのことを紹介したいし・・・・2人で、行かない?」
俺の言葉に、ムウは目をキラキラと輝かせた。
「うん!行きたい!」
無邪気に笑うムウに、もう一度キスをする。
そのまましばらく抱き合って・・・・
俺たちは手を繋ぎ、アトリエを後にした。
そのあとどうしたかって?
そんなの、教えてあげないよ。
2人だけの秘密だからね・・・・
ずっと一生、ムウといようと誓った。
こんなに人を好きになることは、この先ないって思えるから。
ムウは人間になったけど―――
でも、俺にとってはいつまでも天使だよ。
その頬を流れる涙は、いつまでも水晶のようにきれいで・・・・・
俺の胸に沁み込んで来るんだ・・・・・・
fin.
家に戻り、2人に知らせるとその15分後、諒がやってきてムウに飛びついた。
「諒ちゃん、久しぶり」
「もう、ほんとだよ~~~、超会いたかったんだから~!!」
調子のいい諒に、俺も苦笑するしかない。
「俺も会いたかったよ」
ムウも、嬉しそうだった。
そして―――
「ムウくん!!」
その10分後に飛び込んできたのは奈央だった。
「ナオ、久しぶり」
ムウの笑顔に、奈央が涙ぐむ。
奈央のそんな表情、見たことがなかったからちょっとびっくりした。
「ムウくん・・・・よかった。ちゃんと思い出したんだね、俺たちのこと―――」
「うん。心配かけてごめんね。―――今ご飯作ってるから、上がって」
久しぶりの、4人での食事はにぎやかだった。
諒が笑い、ムウが笑い、奈央が笑い、そして俺も笑った。
4人が忘れていた1ヶ月を取り戻すため、ずっとしゃべり続けていた。
ムウの作ってくれた料理を食べながら。
「あ、ビールなくなっちゃった」
諒が空き缶を振ると、ムウが立ち上がる。
「あ、俺持ってくる」
「あ、ムウくん、俺が―――」
「ついでにトイレ行ってくるから、ナオは座ってて」
そう言ってムウがキッチンへ入っていくと、奈央が何か言いたげに俺を見た。
「なに?」
「なに?じゃないでしょ?天国で何があったの?リロイさんは?ちゃんと話してよ」
「そうだよ!ムウちゃん、記憶をなくしてたんでしょ?どうやって思い出したの?」
「ちゃんと後で話すよ。今は・・・・」
その時だった。
『キャアーーーーー!!!』
「ムウ!?」
俺たちは慌ててキッチンへと飛び込んだ。
「ムウ!どうし―――」
「アキ!」
キッチンへ入った途端、ムウが俺に飛びついてきた。
「ど、どうした?」
「ゴキブリ!!すごいおっきいやついた!あれ怖い!おっきい!怖い!!」
―――また、ゴキブリかい・・・・・
「大丈夫だよ、ムウ。もういなくなったよ」
「やだやだ、気持ち悪い~~~~~」
ムウの目から、涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「―――これ、どういうこと?」
キッチンの入り口から今の光景を見ていた奈央が呟いた。
「なんで・・・・何で、ムウくん、普通に泣いてるの?」
「え?何言ってんの?奈央」
諒が、不思議そうに奈央を見た。
「諒さん、気付かないの?ムウくんの涙・・・・」
「へ・・・・?―――あ!!水晶・・・・じゃない・・・・?」
「・・・・そうだよ。ムウは、人間になったんだ」
俺の言葉に、2人はしばし呆然とその場に立ち尽くしていたのだった・・・・・。
「じゃあ・・・・本当にムウちゃんは人間になったの?」
リビングに戻った俺たちは、天国での出来事を2人に話していた。
「うん。もう、人間だよ」
「じゃあ・・・・もう、羽、ついてないの?天使の輪も?」
諒の言葉に、笑顔で頷くムウ。
「うん」
「でも・・・・リロイさんと会えなくなっちゃうのに・・・・?」
奈央が心配そうにムウを見つめる。
「リロイが・・・・会いに来てくれるって言ってた。でも俺ね、神様に1日考える時間をやるって言われたけど、本当は悩んでなんかなかった」
ムウの言葉に、今度は俺も驚く。
「俺の力は、世の中の役に立つって言われたけど、それも悩まなかった。だって、俺1人がその力を使ったところで、根本的な解決にはならないって思ったから。もちろん、何の役にも立たないってことはないだろうけど―――それでも、俺が世の中を変えるなんて、そんな大きなこと言えないって思った」
「でもさ、神様はそれを望んでたんでしょ?」
諒の言葉に、今度は俺が答える。
「確かにそうして欲しかったって言ってたけど、でも神様もそれがどうしても必要だとは思ってなかったみたい。結局誰かの力に頼らなきゃ得られない平和なんて、意味ないって言ってたよ。それに・・・・ムウがその力を使えなくても、水晶が役に立つって」
「水晶って・・・・ムウくんの涙の?どういうこと?」
「あの水晶は、ムウの力が結晶化したものなんだ。だから、あの水晶には全部、ムウの力が込められてるっていうことらしい。直接使う時みたいな強力な力はないみたいだけど・・・・それを持つだけで苛立つ気持ちを鎮める効果とか、優しい気持ちになれる効果があるんだって。だから、今後はムウのお父さんとリロイが、仕事をするのに役立てていくって」
「へえー、そうなんだ・・・・そんな効果があるなんて、知らなかったな」
諒も感心したように言って奈央と頷きあった。
「・・・・リロイと別れるのはね、すごく寂しいなって思った。でも・・・・俺、アキといたいんだ」
そう言って、ムウは俺を見つめた。
「1ヶ月前、ミカエル様に俺が記憶を消される前、アキの中から俺の記憶を消してもらって・・・・・その時、俺悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった。自分が死ぬことよりも、アキに忘れられてしまうことが、すごく悲しかった。こんなに悲しい気持ちになるのなら・・・・感情なんてない方がいいって思った。何も、感じなくなってしまえばいいって・・・・」
「ムウ・・・・」
「でも、アキのことを忘れるのだけは嫌だった。死んでも、忘れたくなかった。その時―――初めて、後悔したんだ。あんな約束しなければよかったって。だって、アキもきっとあとで記憶が戻った時に俺がいないことに気付いたら、すごく悲しむだろうって思ったから。俺と同じ悲しい気持ちを、アキにもさせてしまうかもしれないって思ったら・・・・すごく後悔したよ。もっと他に、方法があったかもしれないのにって。どうしてもっと深く考えなかったんだろうって・・・・・。だから、アキが天国まで来てくれて、俺の記憶を取り戻してくれたってわかった時、もう、離れたくないって思ったんだ。もう、アキのことを忘れたくない・・・・もう、アキに悲しい思いをさせたくないって」
「だから、悩まなかったの?でも、リロイさんとは―――」
「うん・・・・だけど、天使の一生は長いから・・・・きっと、リロイとはまた会えるって思った。リロイが、俺のことを忘れないでいてくれたら、きっと会いに来てくれるんじゃないかなって。その時は漠然と思っただけだけど、二度と会えないとは思わなかったんだ」
そう言って、ムウは笑った。
明るいその笑顔に、2人もほっとしたように笑った。
あの時―――ムウが、自分が無意識に力を使ったんじゃないかと心配し、泣いたことは内緒だった。
『女々しいって思われそうでやだ』
とムウが言ったのだ。
この2人はそんなこと思わないと思うけど・・・・
でも、意外と気にしぃなムウに、思わず笑みが零れた。
こんなに、愛されてるのに・・・・
「・・・・ここにいたのか」
俺は、アトリエにいたムウに声をかけた。
4人で食べて飲んで、夜中まで騒いでいた。
そして気付けばリビングで寝てしまっていた俺たち。
ふと目を覚ますと、奈央と諒は大の字で寝ていて、ムウの姿はなかった。
でも慌てることはなかった。
きっとアトリエだろうと思ったから・・・・。
アトリエには、俺が描いた顔のない天使―――ムウの絵が。
ムウが天国へ持って行っていた2枚の絵は、今はムウの寝室にあった。
「・・・・これ、顔も描いてくれる?」
ムウが、俺の絵をそっと指でなぞった。
「もちろん。明日から、描き始めるよ。ムウ、またモデルになってね」
「うん」
ムウが笑顔で頷く。
俺はムウの隣に立つと、そっとその手を握った。
ムウも俺の手を握り返してくれる。
じわじわと、暖かい、幸せな気持ちが溢れてくる。
「・・・・俺、やっぱりこのアトリエ、好きだな」
「そお?」
「うん。なんか、落ち着くんだ。ここにいるだけで、アキの温もりを感じるみたい」
「俺がいなくても?」
「うん。―――でも、いた方がいいけど」
「ふふ」
「笑うなよぉ」
ぷうっと頬を膨らませるムウが、可愛くて仕方ない。
「ふふ、ごめん。愛してるよ」
「・・・・俺も」
ふと見つめ合い、どちらからともなくキスをする。
「・・・・後悔、してない?」
「・・・・人間になってなかったら、きっと後悔してたよ」
「リロイに・・・・会いたくなる?」
「それは・・・・なると思うけど」
こういう、正直なところも好きだ。
天国で唯一の兄弟で、味方だったリロイ。
そのリロイへの愛は、きっと変わらないだろう・・・・・。
ときどきは、嫉妬するのも仕方ない・・・・と思うんだけど。
「・・・・・ムウ、旅行行こうか」
「旅行?」
ムウが、首を傾げる。
「うん。新婚旅行」
「新婚・・・・?」
「今、俺の父親がスペインにいるんだ。ムウのことを紹介したいし・・・・2人で、行かない?」
俺の言葉に、ムウは目をキラキラと輝かせた。
「うん!行きたい!」
無邪気に笑うムウに、もう一度キスをする。
そのまましばらく抱き合って・・・・
俺たちは手を繋ぎ、アトリエを後にした。
そのあとどうしたかって?
そんなの、教えてあげないよ。
2人だけの秘密だからね・・・・
ずっと一生、ムウといようと誓った。
こんなに人を好きになることは、この先ないって思えるから。
ムウは人間になったけど―――
でも、俺にとってはいつまでも天使だよ。
その頬を流れる涙は、いつまでも水晶のようにきれいで・・・・・
俺の胸に沁み込んで来るんだ・・・・・・
fin.
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