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第22話
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『あ―――それから』
夏美が、思い出したように目を開けた。
「え?」
『叔父さんのこと・・・・。あの人咲也に触れてはいたけど、それ以上のことはしてないから、安心してね』
「え・・・・・そう、なの?なんで・・・・・」
『できないんですって・・・・・。本当にね、病気なのよ。だから、あの夫婦には子供もいない。ただ、叔父さんは咲也のようにきれいな男の子が好きなだけ・・・・・でも・・・・そのせいで、咲也は心に深い傷を負ったわ。簡単に許すことなんてできない』
再びその瞳を曇らせた夏美の髪を、俺はそっと撫でた。
「大丈夫・・・・俺が、絶対に守るから。だから・・・・夏美も休みな」
『ん・・・・・ありがとう、柊真』
そう言って微笑み、再び目を閉じた夏美。
俺はしばらくの間、その柔らかな髪を撫で続けていた―――。
咲也のことを大事にし過ぎて、夏美はきっと咲也から離れることができないでいるんだ。
今日みたいなことが起きるんじゃないかと、ずっと心配して・・・・・
そして咲也もまた、そんな夏美を守ろうとしてる。
夏美が咲也の中にいることで、体が弱っていることにも気付かずに・・・・・。
来週の花火大会。
それまでに、2人の心配を取り除くことができるだろうか?
俺の力で、2人を守ることができるだろうか・・・・・?
でもやらなくちゃ。
咲也のために。
そして、夏美のために・・・・・。
―――久しぶりに、たくさん眠れた気がした。
目が覚めたとき、とても気分が良くて・・・・・
ふと右手に温もりを感じて、顔を向けると―――
「え・・・・・柊真・・・・?」
柊真が、俺の手を握ったままベッドに顔だけ突っ伏して寝ていた。
―――何で柊真が・・・・・
何があったんだっけ?
確か、バイトしてたら幹ちゃんに具合が悪そうだから帰っていいって言われて・・・・・・途中、つけられてる気がして・・・・・で、家に帰ったら、中崎が来て・・・・・
ぞくりと、背筋に悪寒が走った。
―――そうだ。俺、中崎に襲われて・・・・・・
そこに、柊真が来たんだ・・・・・中崎を殴って・・・・・
そこからの記憶がないけど―――
そういえば、どうして柊真がいたんだろう?
「ん・・・・・?咲也?起きた・・・・・?」
柊真が、目をこすりながら顔を上げた。
「あの・・・・何で柊真がここにいんの?」
「なんでって・・・・・店に行ったら、具合悪くて帰ったっていうから、心配で・・・・あ!熱は?」
そう言うと、柊真は手を伸ばして俺の額に触った。
柊真のちょっと冷たい手が俺の額に触れ、思わずドキッとする。
「・・・・・よかった。下がってるみたい」
柊真が、ほっとしたように微笑んだ。
久しぶりに見るその笑顔に、なんだか俺はホッとして―――
「え・・・・咲也!?どうした?どっか痛い?」
咲也がぎょっとして、俺の手を握った。
気付けば、俺の頬を涙が伝っていた・・・・・。
「あれ・・・・・?なんで俺、涙・・・・・」
「咲也・・・・」
柊真の瞳が切なげに揺れ・・・・・
次の瞬間、俺の体は柊真の腕に抱きしめられていた―――。
「もう、大丈夫・・・・・。俺が、咲也を守るから・・・・・」
「守る・・・・・って?なんで柊真が・・・・・?俺、柊真にずっと謝んなきゃって・・・・・」
ずっと謝りたかった。
俺が、柊真を傷つけちゃったから。
「咲也が、謝ることなんてないよ。咲也は何も悪くない。俺が・・・・勝手に拗ねてただけ」
「拗ねてた?なんで?」
俺は、柊真の顔を見上げた。
柊真はふっと目をそらしたけれど、その頬も耳も、赤く染まっていた。
ちょっと恥ずかしそうな、そんな柊真が新鮮で、可愛くて―――
俺は柊真をじっと見つめていた。
「~~~~~あんま、見んなって!」
「だって、柊真、顔真っ赤。なんか可愛い」
「可愛いってゆーな!」
そう言って眉を顰めるけれど、全然迫力ないし。
「んふふ。じゃあ、なんで拗ねてたのか言ってみてよ」
「・・・・・やだ」
「なんで?言ってよ。だってそのせいでカフェにも来なくなっちゃったんでしょ?俺のせいだと思ってたから、すげえへこんでたんだよ?俺」
「それは・・・・・悪いと思ってるけどさ。だって、咲也が―――」
「俺が、何?やっぱり俺のせい?」
そう言って、柊真の顔を覗き込むように見る。
「そうじゃなくて・・・・・咲也・・・・男でも大丈夫って言ったじゃん」
「・・・・・やっぱり、そのせい?」
―――気持ち悪いよな?男同士が・・・・・
俺は、柊真から体を離そうとしたけれど―――
逆に、手首をつかまれ、引き寄せられた。
「違う!気持ち悪いとか、そんなこと思ったんじゃないからな!」
「え・・・・・違うの・・・・・?」
「違う。咲也のこと気持ち悪いなんて思ったこと、一度もない」
そんなこと、まっすぐに俺を見つめて言うもんだから・・・・
なんか、照れるじゃん。
ドキドキと、無駄に早くなる鼓動に戸惑いながら、俺は柊真から目が離せないでいた・・・・・。
夏美が、思い出したように目を開けた。
「え?」
『叔父さんのこと・・・・。あの人咲也に触れてはいたけど、それ以上のことはしてないから、安心してね』
「え・・・・・そう、なの?なんで・・・・・」
『できないんですって・・・・・。本当にね、病気なのよ。だから、あの夫婦には子供もいない。ただ、叔父さんは咲也のようにきれいな男の子が好きなだけ・・・・・でも・・・・そのせいで、咲也は心に深い傷を負ったわ。簡単に許すことなんてできない』
再びその瞳を曇らせた夏美の髪を、俺はそっと撫でた。
「大丈夫・・・・俺が、絶対に守るから。だから・・・・夏美も休みな」
『ん・・・・・ありがとう、柊真』
そう言って微笑み、再び目を閉じた夏美。
俺はしばらくの間、その柔らかな髪を撫で続けていた―――。
咲也のことを大事にし過ぎて、夏美はきっと咲也から離れることができないでいるんだ。
今日みたいなことが起きるんじゃないかと、ずっと心配して・・・・・
そして咲也もまた、そんな夏美を守ろうとしてる。
夏美が咲也の中にいることで、体が弱っていることにも気付かずに・・・・・。
来週の花火大会。
それまでに、2人の心配を取り除くことができるだろうか?
俺の力で、2人を守ることができるだろうか・・・・・?
でもやらなくちゃ。
咲也のために。
そして、夏美のために・・・・・。
―――久しぶりに、たくさん眠れた気がした。
目が覚めたとき、とても気分が良くて・・・・・
ふと右手に温もりを感じて、顔を向けると―――
「え・・・・・柊真・・・・?」
柊真が、俺の手を握ったままベッドに顔だけ突っ伏して寝ていた。
―――何で柊真が・・・・・
何があったんだっけ?
確か、バイトしてたら幹ちゃんに具合が悪そうだから帰っていいって言われて・・・・・・途中、つけられてる気がして・・・・・で、家に帰ったら、中崎が来て・・・・・
ぞくりと、背筋に悪寒が走った。
―――そうだ。俺、中崎に襲われて・・・・・・
そこに、柊真が来たんだ・・・・・中崎を殴って・・・・・
そこからの記憶がないけど―――
そういえば、どうして柊真がいたんだろう?
「ん・・・・・?咲也?起きた・・・・・?」
柊真が、目をこすりながら顔を上げた。
「あの・・・・何で柊真がここにいんの?」
「なんでって・・・・・店に行ったら、具合悪くて帰ったっていうから、心配で・・・・あ!熱は?」
そう言うと、柊真は手を伸ばして俺の額に触った。
柊真のちょっと冷たい手が俺の額に触れ、思わずドキッとする。
「・・・・・よかった。下がってるみたい」
柊真が、ほっとしたように微笑んだ。
久しぶりに見るその笑顔に、なんだか俺はホッとして―――
「え・・・・咲也!?どうした?どっか痛い?」
咲也がぎょっとして、俺の手を握った。
気付けば、俺の頬を涙が伝っていた・・・・・。
「あれ・・・・・?なんで俺、涙・・・・・」
「咲也・・・・」
柊真の瞳が切なげに揺れ・・・・・
次の瞬間、俺の体は柊真の腕に抱きしめられていた―――。
「もう、大丈夫・・・・・。俺が、咲也を守るから・・・・・」
「守る・・・・・って?なんで柊真が・・・・・?俺、柊真にずっと謝んなきゃって・・・・・」
ずっと謝りたかった。
俺が、柊真を傷つけちゃったから。
「咲也が、謝ることなんてないよ。咲也は何も悪くない。俺が・・・・勝手に拗ねてただけ」
「拗ねてた?なんで?」
俺は、柊真の顔を見上げた。
柊真はふっと目をそらしたけれど、その頬も耳も、赤く染まっていた。
ちょっと恥ずかしそうな、そんな柊真が新鮮で、可愛くて―――
俺は柊真をじっと見つめていた。
「~~~~~あんま、見んなって!」
「だって、柊真、顔真っ赤。なんか可愛い」
「可愛いってゆーな!」
そう言って眉を顰めるけれど、全然迫力ないし。
「んふふ。じゃあ、なんで拗ねてたのか言ってみてよ」
「・・・・・やだ」
「なんで?言ってよ。だってそのせいでカフェにも来なくなっちゃったんでしょ?俺のせいだと思ってたから、すげえへこんでたんだよ?俺」
「それは・・・・・悪いと思ってるけどさ。だって、咲也が―――」
「俺が、何?やっぱり俺のせい?」
そう言って、柊真の顔を覗き込むように見る。
「そうじゃなくて・・・・・咲也・・・・男でも大丈夫って言ったじゃん」
「・・・・・やっぱり、そのせい?」
―――気持ち悪いよな?男同士が・・・・・
俺は、柊真から体を離そうとしたけれど―――
逆に、手首をつかまれ、引き寄せられた。
「違う!気持ち悪いとか、そんなこと思ったんじゃないからな!」
「え・・・・・違うの・・・・・?」
「違う。咲也のこと気持ち悪いなんて思ったこと、一度もない」
そんなこと、まっすぐに俺を見つめて言うもんだから・・・・
なんか、照れるじゃん。
ドキドキと、無駄に早くなる鼓動に戸惑いながら、俺は柊真から目が離せないでいた・・・・・。
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