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親友として
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校舎の陰から、そっと顔を出して見つめる先には、梨夢がいた。
別に、つけてたわけじゃない。決して。
ただ、放課後生徒会室に用があって行った帰り、裏庭へ出る渡り廊下で梨夢の姿を見つけて。
部活に行くでもなく裏庭へと向かう梨夢を不思議に思って様子を見ようと思っただけだ。
以前、慎のクラスメイトにラブレターもらって裏庭へ行ったこともあったから、まさかまた・・・と
ただちょっと心配になっただけだ・・・・
「梨夢」
声が聞こえて、俺はそっちの方を見た。
梨夢の方へ歩いてきたのは渋木和也だった。
「和也。なんでここ?」
梨夢がちょっとおかしそうに笑う。
「だって、告白の定番って言ったら裏庭じゃん」
渋木が頭をかく。
―――告白!?告白って言ったか?今
思わず狼狽える。
そんな話、周からも聞いてなかった。
「・・・・和也、俺・・・」
「あ、その前にちょっと、謝らせて」
「え・・・・」
「俺がお前に告白したせいで、お前を悩ませたこと、わかってるんだ。周りに気づかれないように俺に気を使ってたことも・・・そんな思いさせて、ごめん」
「そんなこと・・・・」
「ホントに、ごめん。でも、俺がふざけてるわけじゃないってお前にちゃんと伝えたかったんだ。どうしても・・・このまま自分の気持ち隠すのが、無理だって思って」
渋木がじっと梨夢を見詰めた。
その目は、離れたところで見ている俺にもわかるほど真剣そのものだった。
「本気で、好きなんだ」
「和也・・・・ありがとう。その気持ちは、すごく、本当にすごく嬉しいよ」
「・・・・でも、って続くんだろ?」
「・・・・」
「わかってる。お前が、俺のこと友達としか思ってないことはちゃんと、わかってる」
「・・・・ごめん」
「謝るなよ。わかってるって言っただろ?俺は、俺の気持ち伝えたかっただけ。それで、ちゃんとお前の口からお前の気持ち聞いて、けじめつけたかったんだ」
「俺は・・・・和也が好きだよ」
「友達として、だろ?」
「親友として、だよ。和也は、俺の親友。俺はそう思ってる。ずっと親友でいたいって。親友で・・・・いてくれる?」
梨夢の言葉に、渋木がなんとも言えない切ない表情をしていた。
こっちが切なくなるくらい・・・・
「・・・・いやだって言えないだろ?俺にはもう・・・・それしか残ってないんだから」
そう言って笑う渋木。
「和也・・・・」
「お前がそんな泣きそうな顔すんなよ。俺は大丈夫だよ。お前の彼氏にはなれなくっても、親友ではいられるんだから・・・・それだけで充分」
そう言った瞬間、梨夢が渋木に抱きついた。
「和也・・・・ありがとう。俺、和也に出会えてよかったよ。ほんとに・・・・一番の親友だと思ってる」
「俺も・・・・お前に出会えてよかった。ずっと・・・ずっと親友でいよう」
梨夢を抱きしめる渋木の声は、微かに震えていた。
「―――こんなとこ誰かに見られたら、また変な噂立つから、俺もう行くわ。梨夢、お前は俺が行って少ししてから行けよ」
「ん・・・・」
「・・・・明日から、また親友同士になって遊ぼうな」
「うん」
梨夢が頷くと、渋木は手を振り走り去っていった・・・・。
梨夢はしばらくそこにたたずんでいた。
俺も、そこから出るに出られなくなって・・・・
梨夢が立ち去るのを待っていようと思ったのに、知らずに足が動いていたようで。
足元の木の根っこに躓いて、前のめりに体が傾き
やばいと思った時にははでにすっ転んでいた。
「いてっ」
俺の声に、梨夢が驚いて振り向いた。
「廉くん?何してんの?」
「あ・・・・よお、梨夢」
「・・・・ずっとそこにいたの・・・・?」
「・・・・・はい」
「もう・・・・なんでいんの」
裏庭の木陰に座った梨夢の隣に、俺も座る。
「ごめん。お前が裏庭に出るとこ見えたから、気になって」
「はずかしい・・・・」
そう言って両手で口を押える梨夢の頬は真っ赤だった。
「・・・・慎くんと周には言わないでね?」
「え。護くんには言ってもいいの?」
「・・・・護は、知ってるから」
「え、そうなの?言ったの?」
「ん」
「なんで?」
ちょっと、ショックだった。
護くんにだけ打ち明けたという事実が・・・・・
「それは・・・3人は同じ学校にいるから、このこと知ったら和也を今までと違う目で見ると思ったから。周なんか今は和也と仲良くなってるし、その関係が変わっちゃうのは、嫌だった。護の場合は高校生だし・・・・まあ、それでも言うつもりはなかったんだけど、俺が言うまであきらめないみたいな空気だったから」
「ああ・・・なるほど」
護くんは普段俺たち兄弟のことについては基本放任主義だ。
何かあればすぐに動いてくれる頼れる人ではあるけど、あまり人に構われるのも構うのも好きじゃないタイプだ。
その護くんが執着してると言っても過言じゃないほど過保護になるのは梨夢限定。
梨夢のことで、自分が知らないことがあるのは許せないらしい。
「もしかして・・・・夏休み前から何か悩んでたのは渋木のことで?」
俺の言葉に、梨夢はちょっと笑って頷いた。
「うん。和也は、親友だから。どうしたら和也のこと傷つけず、これからも友達でいられるかなって悩んでた」
「そっか・・・。でも、大丈夫だな」
「そう思う?」
梨夢が、ちょっと不安そうに俺を見た。
「思うよ。きっと、あいつもすごく悩んだんだろうな。けどお前とずっと友達でいたいとも思ってたんじゃないか?お互いにそう思ってるなら、、きっと大丈夫だと思うよ」
そう言って梨夢の頭をなでると、梨夢はちょっと恥ずかしそうに笑った。
「ん・・・。ありがと、廉くん」
その後部活に向かう梨夢と別れ、ふと気づいた。
夏休みに梨夢が言っていた、やらなきゃいけないことって、もしかして・・・・
あれ?でも梨夢の好きなやつは渋木じゃないんだよな?
じゃあ、母さんたちに『好きな人ができた』って報告したのは、なんで・・・・?
別に、つけてたわけじゃない。決して。
ただ、放課後生徒会室に用があって行った帰り、裏庭へ出る渡り廊下で梨夢の姿を見つけて。
部活に行くでもなく裏庭へと向かう梨夢を不思議に思って様子を見ようと思っただけだ。
以前、慎のクラスメイトにラブレターもらって裏庭へ行ったこともあったから、まさかまた・・・と
ただちょっと心配になっただけだ・・・・
「梨夢」
声が聞こえて、俺はそっちの方を見た。
梨夢の方へ歩いてきたのは渋木和也だった。
「和也。なんでここ?」
梨夢がちょっとおかしそうに笑う。
「だって、告白の定番って言ったら裏庭じゃん」
渋木が頭をかく。
―――告白!?告白って言ったか?今
思わず狼狽える。
そんな話、周からも聞いてなかった。
「・・・・和也、俺・・・」
「あ、その前にちょっと、謝らせて」
「え・・・・」
「俺がお前に告白したせいで、お前を悩ませたこと、わかってるんだ。周りに気づかれないように俺に気を使ってたことも・・・そんな思いさせて、ごめん」
「そんなこと・・・・」
「ホントに、ごめん。でも、俺がふざけてるわけじゃないってお前にちゃんと伝えたかったんだ。どうしても・・・このまま自分の気持ち隠すのが、無理だって思って」
渋木がじっと梨夢を見詰めた。
その目は、離れたところで見ている俺にもわかるほど真剣そのものだった。
「本気で、好きなんだ」
「和也・・・・ありがとう。その気持ちは、すごく、本当にすごく嬉しいよ」
「・・・・でも、って続くんだろ?」
「・・・・」
「わかってる。お前が、俺のこと友達としか思ってないことはちゃんと、わかってる」
「・・・・ごめん」
「謝るなよ。わかってるって言っただろ?俺は、俺の気持ち伝えたかっただけ。それで、ちゃんとお前の口からお前の気持ち聞いて、けじめつけたかったんだ」
「俺は・・・・和也が好きだよ」
「友達として、だろ?」
「親友として、だよ。和也は、俺の親友。俺はそう思ってる。ずっと親友でいたいって。親友で・・・・いてくれる?」
梨夢の言葉に、渋木がなんとも言えない切ない表情をしていた。
こっちが切なくなるくらい・・・・
「・・・・いやだって言えないだろ?俺にはもう・・・・それしか残ってないんだから」
そう言って笑う渋木。
「和也・・・・」
「お前がそんな泣きそうな顔すんなよ。俺は大丈夫だよ。お前の彼氏にはなれなくっても、親友ではいられるんだから・・・・それだけで充分」
そう言った瞬間、梨夢が渋木に抱きついた。
「和也・・・・ありがとう。俺、和也に出会えてよかったよ。ほんとに・・・・一番の親友だと思ってる」
「俺も・・・・お前に出会えてよかった。ずっと・・・ずっと親友でいよう」
梨夢を抱きしめる渋木の声は、微かに震えていた。
「―――こんなとこ誰かに見られたら、また変な噂立つから、俺もう行くわ。梨夢、お前は俺が行って少ししてから行けよ」
「ん・・・・」
「・・・・明日から、また親友同士になって遊ぼうな」
「うん」
梨夢が頷くと、渋木は手を振り走り去っていった・・・・。
梨夢はしばらくそこにたたずんでいた。
俺も、そこから出るに出られなくなって・・・・
梨夢が立ち去るのを待っていようと思ったのに、知らずに足が動いていたようで。
足元の木の根っこに躓いて、前のめりに体が傾き
やばいと思った時にははでにすっ転んでいた。
「いてっ」
俺の声に、梨夢が驚いて振り向いた。
「廉くん?何してんの?」
「あ・・・・よお、梨夢」
「・・・・ずっとそこにいたの・・・・?」
「・・・・・はい」
「もう・・・・なんでいんの」
裏庭の木陰に座った梨夢の隣に、俺も座る。
「ごめん。お前が裏庭に出るとこ見えたから、気になって」
「はずかしい・・・・」
そう言って両手で口を押える梨夢の頬は真っ赤だった。
「・・・・慎くんと周には言わないでね?」
「え。護くんには言ってもいいの?」
「・・・・護は、知ってるから」
「え、そうなの?言ったの?」
「ん」
「なんで?」
ちょっと、ショックだった。
護くんにだけ打ち明けたという事実が・・・・・
「それは・・・3人は同じ学校にいるから、このこと知ったら和也を今までと違う目で見ると思ったから。周なんか今は和也と仲良くなってるし、その関係が変わっちゃうのは、嫌だった。護の場合は高校生だし・・・・まあ、それでも言うつもりはなかったんだけど、俺が言うまであきらめないみたいな空気だったから」
「ああ・・・なるほど」
護くんは普段俺たち兄弟のことについては基本放任主義だ。
何かあればすぐに動いてくれる頼れる人ではあるけど、あまり人に構われるのも構うのも好きじゃないタイプだ。
その護くんが執着してると言っても過言じゃないほど過保護になるのは梨夢限定。
梨夢のことで、自分が知らないことがあるのは許せないらしい。
「もしかして・・・・夏休み前から何か悩んでたのは渋木のことで?」
俺の言葉に、梨夢はちょっと笑って頷いた。
「うん。和也は、親友だから。どうしたら和也のこと傷つけず、これからも友達でいられるかなって悩んでた」
「そっか・・・。でも、大丈夫だな」
「そう思う?」
梨夢が、ちょっと不安そうに俺を見た。
「思うよ。きっと、あいつもすごく悩んだんだろうな。けどお前とずっと友達でいたいとも思ってたんじゃないか?お互いにそう思ってるなら、、きっと大丈夫だと思うよ」
そう言って梨夢の頭をなでると、梨夢はちょっと恥ずかしそうに笑った。
「ん・・・。ありがと、廉くん」
その後部活に向かう梨夢と別れ、ふと気づいた。
夏休みに梨夢が言っていた、やらなきゃいけないことって、もしかして・・・・
あれ?でも梨夢の好きなやつは渋木じゃないんだよな?
じゃあ、母さんたちに『好きな人ができた』って報告したのは、なんで・・・・?
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