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かわいい弟
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「梨夢~!そろそろ起き―――――周!!お前はまた!!」
「うわぁ、何すんだよぉ!!」
廉くんに思い切り蹴とばされ、俺はベッドから転がり落ちた。
「なにすんだじゃねえだろ!?なんでまた梨夢のベッドで寝てるんだよ!」
「いいじゃん!梨夢くんが寂しがるんだよ!」
「嘘つけ!お前―――」
「ん―――・・・・廉くん?どうしたの?」
梨夢くんがむくっと起き上がると、とたんに廉くんの眉毛が下がる。
「あ、ごめん、梨夢。うるさかったよな」
「だいじょぶ・・・・・もう朝?」
「ああ。今日はパンとシリアル、どっちにする?目玉焼きも食べるだろ?」
「ん。パンがいい」
「オッケー、パンね。顔あらっといで。周もな」
「はーい・・・・って、俺には何食うか聞かねえのかよ」
さっさと部屋を出て行った廉くん。
いつものことだけど。
「周、シリアルの方がいい?」
心配そうに小首を傾げる梨夢くんに、俺は慌てて首を横に振る。
「いや、パンでいいよ!パン好きだから!」
「ほんと?」
「ほんと!ね、顔洗いに行こう」
俺は梨夢くんの手を握ると立ち上がり、ベッドに座っていた梨夢くんを引っ張った。
「うん」
ほっとしたように笑う梨夢くんは、すげえ可愛い。
今日から俺と梨夢くんは中学生になる。
小学生だった3月までは、俺と梨夢くんは一緒の部屋で2段ベッドで寝ていた。
それが中学生になると、『今日からは1人1部屋』と言われ、今は海外勤務で不在の父親の寝室が梨夢くんの部屋になった。
もしかしたらこういうとき、普通の兄弟なら喜ぶのかもしれない。
やっと自分の部屋ができたって。
でも、俺たちはたぶん普通じゃないんだ。
だって俺は、ずっと梨夢くんと一緒が良かったから。
色白で睫毛が長い梨夢くんの寝顔はめちゃくちゃ可愛いんだから。
だから、部屋を別にされても、俺は夜中にこっそり梨夢くんの部屋に忍び込んで、一緒に寝てた。
梨夢くんだって嫌がらないし。
梨夢くんと俺は3ヶ月違いの兄弟だ。
あり得ないって?そりゃそうだよ。だって、俺たちは血が繋がってないんだから。
長男の護は15歳の高校1年生、次男の廉くんは14歳の中学3年生、三男の慎は13歳の中学2年生だった。
上の3人と俺は実の兄弟で、父親と、俺が3歳のときに病気で死んだ母親の子供だった。
そして梨夢くんは、俺が8歳のときに父親が再婚した女性の連れ子だった。
父親の再婚相手はとてもきれいな女性だったけれど少し体が弱くて、梨夢くんは小さい頃から母親の手伝いをしていたせいで、料理や洗濯など小学生の子供とは思えないようなことができる子だった。
しっかりしていて大人びているかと思えば、ときどきびっくりするような失敗をして俺たちを驚かせる。
でも、ものすごく落ち込んで『ごめんなさい』と涙を堪えながら謝る姿が可愛すぎて、誰も怒ることができない。
父親を事故で早く亡くし、兄弟もいなかった梨夢くんはとても人見知りする子だったけれど、慣れてくると素直に甘えてくれるようになり、俺たちはすぐに仲良くなれた。
女の子よりも可愛い梨夢くんを、俺たちはすっかり溺愛していた。
梨夢くんは何より笑顔が可愛い子だった。
だけど、その笑顔が曇る日がやってきた。
梨夢くんの母親・・・つまり、俺たちの2度目の母親が病気で亡くなってしまったのだ。
そして、追い打ちをかけるように決まった父親の海外への転勤。
俺たちは、全力で梨夢くんを守った。
母親がなくなってしばらくは笑顔を忘れてしまったかのように沈みこんでいた梨夢くんだったけれど、徐々にまた笑顔も見せてくれるようになり―――
そして今、また以前と変わらない可愛い笑顔を見せてくれるようになった。
「おっはよー、梨夢。今日から中学生だね!」
朝からテンションの高い慎が、顔を洗ってリビングに入ってきた梨夢くんをぎゅうっと抱きしめる。
「おはよ、慎くん。苦しいよ」
苦笑する梨夢くんの頭を撫でながら、体を離す慎。
俺はそんな慎を睨んだ。
「あ、周もおはよ」
ついで感満載だな!
「はよ・・・・・」
あくびをしながら入ってきたのは、長男の護だ。
「護、寝ぐせひどいよ」
クスクス笑いながら梨夢くんが言うと、
護ががばっと梨夢くんに抱きついた。
「うぷっ、護、重い・・・・・」
よろける梨夢くんを、俺は慌てて支える。
「梨夢、周、パン焼け―――護くん!何してんの!」
キッチンから出てきた廉くんがパンを乗せた皿をテーブルに置くと、護の体を梨夢くんから引きはがした。
「もう!ちゃんと起きてよ!顔洗ってきて!」
「あーい・・・・・」
ぼさぼさの頭をかきながら、再び出て行く護。
相変わらずの兄たちに、梨夢くんは楽しそうに笑う。
そんな梨夢くんの笑顔をこっそり盗み見て満足する俺。
兄たちに溺愛される梨夢くんに嫉妬したことはない。
それよりも、どうやって梨夢くんを1人占めしようかと毎日考えている。
可愛い可愛い梨夢くんは、俺たちの天使だからね・・・・・
「うわぁ、何すんだよぉ!!」
廉くんに思い切り蹴とばされ、俺はベッドから転がり落ちた。
「なにすんだじゃねえだろ!?なんでまた梨夢のベッドで寝てるんだよ!」
「いいじゃん!梨夢くんが寂しがるんだよ!」
「嘘つけ!お前―――」
「ん―――・・・・廉くん?どうしたの?」
梨夢くんがむくっと起き上がると、とたんに廉くんの眉毛が下がる。
「あ、ごめん、梨夢。うるさかったよな」
「だいじょぶ・・・・・もう朝?」
「ああ。今日はパンとシリアル、どっちにする?目玉焼きも食べるだろ?」
「ん。パンがいい」
「オッケー、パンね。顔あらっといで。周もな」
「はーい・・・・って、俺には何食うか聞かねえのかよ」
さっさと部屋を出て行った廉くん。
いつものことだけど。
「周、シリアルの方がいい?」
心配そうに小首を傾げる梨夢くんに、俺は慌てて首を横に振る。
「いや、パンでいいよ!パン好きだから!」
「ほんと?」
「ほんと!ね、顔洗いに行こう」
俺は梨夢くんの手を握ると立ち上がり、ベッドに座っていた梨夢くんを引っ張った。
「うん」
ほっとしたように笑う梨夢くんは、すげえ可愛い。
今日から俺と梨夢くんは中学生になる。
小学生だった3月までは、俺と梨夢くんは一緒の部屋で2段ベッドで寝ていた。
それが中学生になると、『今日からは1人1部屋』と言われ、今は海外勤務で不在の父親の寝室が梨夢くんの部屋になった。
もしかしたらこういうとき、普通の兄弟なら喜ぶのかもしれない。
やっと自分の部屋ができたって。
でも、俺たちはたぶん普通じゃないんだ。
だって俺は、ずっと梨夢くんと一緒が良かったから。
色白で睫毛が長い梨夢くんの寝顔はめちゃくちゃ可愛いんだから。
だから、部屋を別にされても、俺は夜中にこっそり梨夢くんの部屋に忍び込んで、一緒に寝てた。
梨夢くんだって嫌がらないし。
梨夢くんと俺は3ヶ月違いの兄弟だ。
あり得ないって?そりゃそうだよ。だって、俺たちは血が繋がってないんだから。
長男の護は15歳の高校1年生、次男の廉くんは14歳の中学3年生、三男の慎は13歳の中学2年生だった。
上の3人と俺は実の兄弟で、父親と、俺が3歳のときに病気で死んだ母親の子供だった。
そして梨夢くんは、俺が8歳のときに父親が再婚した女性の連れ子だった。
父親の再婚相手はとてもきれいな女性だったけれど少し体が弱くて、梨夢くんは小さい頃から母親の手伝いをしていたせいで、料理や洗濯など小学生の子供とは思えないようなことができる子だった。
しっかりしていて大人びているかと思えば、ときどきびっくりするような失敗をして俺たちを驚かせる。
でも、ものすごく落ち込んで『ごめんなさい』と涙を堪えながら謝る姿が可愛すぎて、誰も怒ることができない。
父親を事故で早く亡くし、兄弟もいなかった梨夢くんはとても人見知りする子だったけれど、慣れてくると素直に甘えてくれるようになり、俺たちはすぐに仲良くなれた。
女の子よりも可愛い梨夢くんを、俺たちはすっかり溺愛していた。
梨夢くんは何より笑顔が可愛い子だった。
だけど、その笑顔が曇る日がやってきた。
梨夢くんの母親・・・つまり、俺たちの2度目の母親が病気で亡くなってしまったのだ。
そして、追い打ちをかけるように決まった父親の海外への転勤。
俺たちは、全力で梨夢くんを守った。
母親がなくなってしばらくは笑顔を忘れてしまったかのように沈みこんでいた梨夢くんだったけれど、徐々にまた笑顔も見せてくれるようになり―――
そして今、また以前と変わらない可愛い笑顔を見せてくれるようになった。
「おっはよー、梨夢。今日から中学生だね!」
朝からテンションの高い慎が、顔を洗ってリビングに入ってきた梨夢くんをぎゅうっと抱きしめる。
「おはよ、慎くん。苦しいよ」
苦笑する梨夢くんの頭を撫でながら、体を離す慎。
俺はそんな慎を睨んだ。
「あ、周もおはよ」
ついで感満載だな!
「はよ・・・・・」
あくびをしながら入ってきたのは、長男の護だ。
「護、寝ぐせひどいよ」
クスクス笑いながら梨夢くんが言うと、
護ががばっと梨夢くんに抱きついた。
「うぷっ、護、重い・・・・・」
よろける梨夢くんを、俺は慌てて支える。
「梨夢、周、パン焼け―――護くん!何してんの!」
キッチンから出てきた廉くんがパンを乗せた皿をテーブルに置くと、護の体を梨夢くんから引きはがした。
「もう!ちゃんと起きてよ!顔洗ってきて!」
「あーい・・・・・」
ぼさぼさの頭をかきながら、再び出て行く護。
相変わらずの兄たちに、梨夢くんは楽しそうに笑う。
そんな梨夢くんの笑顔をこっそり盗み見て満足する俺。
兄たちに溺愛される梨夢くんに嫉妬したことはない。
それよりも、どうやって梨夢くんを1人占めしようかと毎日考えている。
可愛い可愛い梨夢くんは、俺たちの天使だからね・・・・・
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