上 下
31 / 43

第31話

しおりを挟む
「・・・遅いね、稔たち」

ソファーで寝転がりながら、皐月が呟いた。

「あぁ。千葉からだからな。さっき関からメール来たけど、途中で渋滞してるって―――」
「このワインおいし~~~。浩斗くん、もう1杯飲んでもいい~~~?」
「いいけど、お前飲み過ぎ―――」
「浩斗くんも飲も~~~~~」

皐月がパッと起きあがり、ワインボトルとグラスを俺の顔の前にずいっと差し出した。

「いや―――」
「はいっ、浩斗くん!」
「あ、はい―――じゃなくて、俺は―――」
「ほら、零れるよ~~、浩斗くんちゃんとグラスもってぇ」
「いやだから、皐月―――」
「は~い、ど~ぞ~~~!」
「・・・・・ありがと」

なみなみとつがれたワインを口に含み、隣に肩が触れるほど寄り添って楽しそうに体を揺らす皐月を見る。

ニコニコと楽しそうにワインを飲む皐月は、なんだかふわふわしていて可愛くて。

こんな状況なのに俺は、皐月の体が密着している肩が熱くなっているのを感じていた。

「・・・・浩斗くんがここに来るの、久しぶりだね~」
「ああ・・・・そうだな。お前がこの稔くんのマンションに引っ越したときに、みんなで集まった時以来か」
「そっか~。もっと遊びに来てくれればいいのに~。稔いつも帰ってくるの遅いしさ~、1人じゃ寂しいし~」
「寂しい・・・のか・・・・?」
「ん~~~・・・・だってさ~、稔、いっつも俊哉と一緒だしさ~」
「そりゃ、仕事だからだろ?」
「む~~~・・・浩斗くん、稔の味方するのぉ~~~?」

突然皐月の顔が間近に迫り、俺はドキッとして思わずのけぞる。

「み、味方って・・・」
「俺の味方してよぉ~~~~」
「いや、するよ、するけど、も・・・ちょっと、離れようか、皐月」

俺の心臓がもたない!

「や~~だ~~、浩斗くん、いじわるっ!」
「いじわるって・・・ッ、こら、皐月!」

皐月が、俺の胸に頭を擦り付けるようにしてくっつく。

―――こ、この酔っぱらい・・・俺の気も知らないで!

「う~~~~~・・・・っく、う・・・・」

―――え・・・・

「皐月・・・・?お前、泣いて・・・・」
「・・・・っく・・・・ひろ・・・くん、俺・・・・稔、に・・・・嫌われたら、どうしよ・・・・」

―――嫌われる?稔くんに?

「そんなこと、あるわけないだろ?」
「・・・・って・・・・、浩斗くん・・・・聞いた、でしょ・・・?裕太くん、に・・・・ッ」
「え?」
「俺が・・・・今野に・・・・」
「・・・・」
「・・・俺・・・稔に、嫌われたら・・・ッ、どうしたら・・・・ッ」

震えながら、俺にすがりつく皐月。

―――まったく・・・・・こいつは

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...