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第24話
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「岩本さんに、伝えておいたよ。関も稔くんも携帯に出ないからどうしたのかと思ったけど・・・聞きこみの最中だったから岩本さん以外は音を消してたみたいだな。いま千葉にいるって」
電話を切ってそう言うと、皐月の表情が曇った。
「千葉に・・・・養護施設に行ったのかな・・・・」
「たぶん、そうじゃないか?あの今野も、そこにいたんだろう?」
「うん・・・・・」
ソファーに座っていた皐月は、両手を組みながら落ち着きなく唇に指で触れるしぐさをしていた。
それは、皐月の中の不安をあらわしているようだった。
「いま千葉にいるんだったら帰りは遅くなりそうだな。稔くんが帰ってくるまでは、俺が一緒にいるよ」
「え・・・大丈夫だよ」
「バカ。まだ犯人が捕まってないんだぞ?何があるかわからないんだから・・・・。お前、自分が狙われるのは初めてじゃないだろう?もっと自覚しろよ」
「あ・・・・そうか・・・・」
俺の言葉に、皐月は頭を掻いた。
本当に、特殊な能力を持ってるわりには鈍いというか・・・・
この無防備ぶりには、呆れるのを通り越して心配になってしまう。
稔くんに同情しながら、俺はパソコンに視線を戻した。
『昔世話になった人』
その言葉と、偶然再会した4人の男。
全て皐月が千葉の中学校にいた時にかかわった人物たちだ。
皐月が忘れているのは事件当日のことだけじゃなく、犯人に関わることすべてな気がする。
そう考えると、はっきりとしたアリバイがあるのは今野だけだ。
果たして、あの3人の中に犯人がいるのかどうか・・・・。
パソコンの画面には、皐月のいた中学の卒業生のデータ。
探偵という職業柄、こういったデータを調べるのは容易い。
しかし、皐月の同級生を1人1人調べるのは時間がかかり過ぎる。
「なぁ、同窓会に来てた人の名前なんかは、わかるのか?」
「同窓会に?うん、わかるよ。同窓会の様子は、すごく鮮明に見えるんだ。あの3人それぞれの目線から見えるからだと思う」
「その中で、気になる人物とかはいない?」
「・・・・特には・・・・。吉田は、いろんな奴に話しかけて、昔と同じようにみんなの中心にいたよ。田中は、ひたすら食べてたみたい。先生は席でちびちび飲みながら、話しかけてきた生徒と話してた・・・って感じかな。名前も顔もわかるけど・・・・その人たちの誰が何をしてるかまでは、わからないよ。その人たちに会ってみないと・・・」
直接会えば、その人を取り巻く状況や過去の出来事などがわかる。
それが皐月の特殊能力だ。
だけど、会わなければ知ることはできない。
ふと皐月を見ると、何か難しい顔で考え込んでいた。
「皐月?どうした?」
「え・・・・」
「何か気になることでもあったか?」
「・・ううん。何でもないよ。ねえ、浩斗くん、買い物付き合ってよ」
そう言って、皐月はさっきとは打って変わって明るい笑顔を見せた。
「は?買い物?」
「うん。今日は久しぶりに俺が夕食作ろうって思ってたからさ。俊哉も来るだろうし、浩斗くんも食べて行くでしょ?何食べたい?」
「俺は何でも・・・・って、皐月、待てよ。まだ調べたいことが―――」
さっさと事務所を出ようとする皐月のあとを、慌てて追いかける。
「パソコンと向かい合ってても、大したことはわからないでしょ。それより、おいしい物が食べたいな」
にっこりと可愛い笑顔を向けられ、俺は何も言えなくなる。
確かに、今のところ大したことはわかってないけれど・・・
「ね、ほら行こうよ。うちの近くのスーパーで買い出しして・・・あ、その前にワイン買いに行きたいな。浩斗くん、いいお店知ってるって言ってたよね」
「ああ、うん」
「じゃ、連れてって」
皐月に背中を押され事務所を出ると、鍵を閉めるのももどかしく皐月が俺の腕を引っ張る。
ちょっと無理をしているのかもしれないけれど、それでもニコニコと楽しそうに笑う皐月を見るのは久しぶりで・・・・。
―――ま、いいか。
俺は腕を引かれるまま、皐月と一緒に駐車場までの道を歩き始めた。
そんな俺たちの姿を、じっと見ている人物がいたことには気づかずに・・・・・。
電話を切ってそう言うと、皐月の表情が曇った。
「千葉に・・・・養護施設に行ったのかな・・・・」
「たぶん、そうじゃないか?あの今野も、そこにいたんだろう?」
「うん・・・・・」
ソファーに座っていた皐月は、両手を組みながら落ち着きなく唇に指で触れるしぐさをしていた。
それは、皐月の中の不安をあらわしているようだった。
「いま千葉にいるんだったら帰りは遅くなりそうだな。稔くんが帰ってくるまでは、俺が一緒にいるよ」
「え・・・大丈夫だよ」
「バカ。まだ犯人が捕まってないんだぞ?何があるかわからないんだから・・・・。お前、自分が狙われるのは初めてじゃないだろう?もっと自覚しろよ」
「あ・・・・そうか・・・・」
俺の言葉に、皐月は頭を掻いた。
本当に、特殊な能力を持ってるわりには鈍いというか・・・・
この無防備ぶりには、呆れるのを通り越して心配になってしまう。
稔くんに同情しながら、俺はパソコンに視線を戻した。
『昔世話になった人』
その言葉と、偶然再会した4人の男。
全て皐月が千葉の中学校にいた時にかかわった人物たちだ。
皐月が忘れているのは事件当日のことだけじゃなく、犯人に関わることすべてな気がする。
そう考えると、はっきりとしたアリバイがあるのは今野だけだ。
果たして、あの3人の中に犯人がいるのかどうか・・・・。
パソコンの画面には、皐月のいた中学の卒業生のデータ。
探偵という職業柄、こういったデータを調べるのは容易い。
しかし、皐月の同級生を1人1人調べるのは時間がかかり過ぎる。
「なぁ、同窓会に来てた人の名前なんかは、わかるのか?」
「同窓会に?うん、わかるよ。同窓会の様子は、すごく鮮明に見えるんだ。あの3人それぞれの目線から見えるからだと思う」
「その中で、気になる人物とかはいない?」
「・・・・特には・・・・。吉田は、いろんな奴に話しかけて、昔と同じようにみんなの中心にいたよ。田中は、ひたすら食べてたみたい。先生は席でちびちび飲みながら、話しかけてきた生徒と話してた・・・って感じかな。名前も顔もわかるけど・・・・その人たちの誰が何をしてるかまでは、わからないよ。その人たちに会ってみないと・・・」
直接会えば、その人を取り巻く状況や過去の出来事などがわかる。
それが皐月の特殊能力だ。
だけど、会わなければ知ることはできない。
ふと皐月を見ると、何か難しい顔で考え込んでいた。
「皐月?どうした?」
「え・・・・」
「何か気になることでもあったか?」
「・・ううん。何でもないよ。ねえ、浩斗くん、買い物付き合ってよ」
そう言って、皐月はさっきとは打って変わって明るい笑顔を見せた。
「は?買い物?」
「うん。今日は久しぶりに俺が夕食作ろうって思ってたからさ。俊哉も来るだろうし、浩斗くんも食べて行くでしょ?何食べたい?」
「俺は何でも・・・・って、皐月、待てよ。まだ調べたいことが―――」
さっさと事務所を出ようとする皐月のあとを、慌てて追いかける。
「パソコンと向かい合ってても、大したことはわからないでしょ。それより、おいしい物が食べたいな」
にっこりと可愛い笑顔を向けられ、俺は何も言えなくなる。
確かに、今のところ大したことはわかってないけれど・・・
「ね、ほら行こうよ。うちの近くのスーパーで買い出しして・・・あ、その前にワイン買いに行きたいな。浩斗くん、いいお店知ってるって言ってたよね」
「ああ、うん」
「じゃ、連れてって」
皐月に背中を押され事務所を出ると、鍵を閉めるのももどかしく皐月が俺の腕を引っ張る。
ちょっと無理をしているのかもしれないけれど、それでもニコニコと楽しそうに笑う皐月を見るのは久しぶりで・・・・。
―――ま、いいか。
俺は腕を引かれるまま、皐月と一緒に駐車場までの道を歩き始めた。
そんな俺たちの姿を、じっと見ている人物がいたことには気づかずに・・・・・。
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