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第10話
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「へえ・・・・まさかこんなとこでお前に会えるとはな・・・・」
男は、無遠慮に皐月のことを頭の先から足の先まで舐めまわすように見つめた。
「相変わらず・・・・いや、ますますきれいになったじゃねえか」
皐月は無言で俯いている。
「さっちゃん・・・・知り合い?」
戸田くんの言葉に、皐月は微かに頷いた。
「ん?なんだ皐月、この店長と知り合いだったのかよ。・・・・もしかして、そういう仲なのか?」
男がいやらしい笑みを浮かべ、声を潜める。
俺は、静かに席を立ち皐月の傍へ行こうとした。
が、その瞬間皐月が俺の方へ視線を向けた。
それはまるで、『来るな』と言っているように感じて―――
俺は、そのまままた椅子に座った。
「なるほどな、そういうことか・・・・。まぁ、今回は引き下がってやるよ。昔のよしみだ・・・なぁ?皐月」
そう言って男は皐月の肩をぽんぽんと叩くと、皐月の方へ体を寄せ、その耳元に何かを囁いた。
その瞬間、皐月の顔色がさっと青くなったのがわかった。
俺は―――
いや、その場にいた関も浩斗くんも、同時に席を立った。
同時に、戸田くんが顔を強張らせたのが見えた。
「ここに来たら、またお前に会えそうだな。ははっ、楽しくなりそうだ。じゃあまたな!姉ちゃん、会計してくれよ」
「あ・・・は、はい」
少し離れたところに下がっていたウェイトレスが、慌ててレジに向かった。
男が会計を済まし出ていくと、店の空気が一瞬にして変わった気がした。
「皐月―――」
傍へ行くと、皐月はちらりと戸田くんの方を見た。
「裕太くん・・・・ごめんね」
「なんでさっちゃんが謝るんだよ!」
「皐月、あいつは・・・・」
「・・・・昔の知り合い。こんなとこで会うなんて・・・・」
俺たちの傍に、関と浩斗くんもやってきた。
「皐月、昔の知り合いって?まさか、あいつが犯人じゃ・・・・」
浩斗くんの言葉に、皐月は首を振った。
「違う。あの人、あの日は東京にいなかった」
「皐月くん、あの男になに言われたの?」
関の質問に、皐月は何も答えなかった。
「・・・ごめん。今日はやっぱり帰ってもいいかな・・・・気分が悪い」
その言葉に俺たちは顔を見合わせ、俺は軽く頷いた。
「じゃ、帰ろう」
そう言って俺は皐月の腕を取ると、『じゃあ』と軽く手を上げ、店を後にしたのだった・・・・・。
男は、無遠慮に皐月のことを頭の先から足の先まで舐めまわすように見つめた。
「相変わらず・・・・いや、ますますきれいになったじゃねえか」
皐月は無言で俯いている。
「さっちゃん・・・・知り合い?」
戸田くんの言葉に、皐月は微かに頷いた。
「ん?なんだ皐月、この店長と知り合いだったのかよ。・・・・もしかして、そういう仲なのか?」
男がいやらしい笑みを浮かべ、声を潜める。
俺は、静かに席を立ち皐月の傍へ行こうとした。
が、その瞬間皐月が俺の方へ視線を向けた。
それはまるで、『来るな』と言っているように感じて―――
俺は、そのまままた椅子に座った。
「なるほどな、そういうことか・・・・。まぁ、今回は引き下がってやるよ。昔のよしみだ・・・なぁ?皐月」
そう言って男は皐月の肩をぽんぽんと叩くと、皐月の方へ体を寄せ、その耳元に何かを囁いた。
その瞬間、皐月の顔色がさっと青くなったのがわかった。
俺は―――
いや、その場にいた関も浩斗くんも、同時に席を立った。
同時に、戸田くんが顔を強張らせたのが見えた。
「ここに来たら、またお前に会えそうだな。ははっ、楽しくなりそうだ。じゃあまたな!姉ちゃん、会計してくれよ」
「あ・・・は、はい」
少し離れたところに下がっていたウェイトレスが、慌ててレジに向かった。
男が会計を済まし出ていくと、店の空気が一瞬にして変わった気がした。
「皐月―――」
傍へ行くと、皐月はちらりと戸田くんの方を見た。
「裕太くん・・・・ごめんね」
「なんでさっちゃんが謝るんだよ!」
「皐月、あいつは・・・・」
「・・・・昔の知り合い。こんなとこで会うなんて・・・・」
俺たちの傍に、関と浩斗くんもやってきた。
「皐月、昔の知り合いって?まさか、あいつが犯人じゃ・・・・」
浩斗くんの言葉に、皐月は首を振った。
「違う。あの人、あの日は東京にいなかった」
「皐月くん、あの男になに言われたの?」
関の質問に、皐月は何も答えなかった。
「・・・ごめん。今日はやっぱり帰ってもいいかな・・・・気分が悪い」
その言葉に俺たちは顔を見合わせ、俺は軽く頷いた。
「じゃ、帰ろう」
そう言って俺は皐月の腕を取ると、『じゃあ』と軽く手を上げ、店を後にしたのだった・・・・・。
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