上 下
8 / 43

第8話

しおりを挟む
「さっちゃん!お帰り!」

探偵事務所の下にある戸田くんの店に着くと、戸田くんが早速皐月に抱きついた。
彼も皐月のことが大好きで・・・・毎日のように会っているというのに皐月が店に顔を出すたびに、嬉しそうに『さっちゃん!いらっしゃい!』と満面の笑顔で迎えてくれるのだ。
皐月も戸田くんのことが大好きで、彼の淹れてくれるコーヒーもまた大好きで毎日のように通っていた。

「悠太くん、心配かけてごめんね」

皐月も嬉しそうに相葉ちゃんの背中に腕を回す。

―――ま、今日くらいはね・・・・

しょうがないなと思いながらもついつい溜息が出てしまう俺を、浩斗くんが横目で見て笑っていた。

「もう、あのままさっちゃんが起きなかったらどうしようかと思ってたよ!なんなら俺がキスして起こしてあげたのに!」
「戸田くん!それは俺の役目だから」
「え~、だって樫ちゃんはどうせ毎日チューしてるじゃん。たまには俺に譲ってくれても―――」
「だめ!そういう問題じゃないから!」

「ちょっと、なに入口塞いでるんですか。さっさと中に入ってくださいよ」

後ろから関の声が聞こえ、皐月が俺の背後に視線を向け笑顔になる。

「俊哉!」
「皐月くん!こんなとこきちゃって大丈夫?家のが落ちつけるんじゃないの?」
「おい!なんだよこんなとこって!」
「だってあんたうるさいんだもん!」
「うるさくないよ!さっちゃんのためにおいしいコーヒー入れるんだから!」
「もう、お前らうるさいよ!ほら皐月、疲れるから席座ろう」

結局浩斗くんが皐月を引っ張って席につき、俺と関も続いたのだった。

出会ってからそんなに年月がたってるわけじゃないのに、まるで昔からの友達のように仲が良くなったなあと、不思議な感覚になる。




「―――じゃあ、その日の記憶は全くないの?」

関の言葉に、皐月が頷いた。

「うん。前の日のことははっきり覚えてるよ。自分で作ったオムライスの味も、稔と一緒に見たテレビも、寝る前に交わした会話も―――」

「なるほど・・・・寝る前の会話、ね・・・・」

関がちらりと俺を見るのに、俺は気付かないふりをした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

カフェと雪の女王と、多分、恋の話

凍星
BL
親の店を継ぎ、運河沿いのカフェで見習店長をつとめる高槻泉水には、人に言えない悩みがあった。 誰かを好きになっても、踏み込んだ関係になれない。つまり、SEXが苦手で体の関係にまで進めないこと。 それは過去の手酷い失恋によるものなのだが、それをどうしたら解消できるのか分からなくて…… 呪いのような心の傷と、二人の男性との出会い。自分を変えたい泉水の葛藤と、彼を好きになった年下ホスト蓮のもだもだした両片想いの物語。BLです。 「*」マーク付きの話は、性的描写ありです。閲覧にご注意ください。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

- カ ミ ツ キ 御影 -

BL
山神様と妖怪に育てられた俺は… ある日、こっそり山を下りた。 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー 山神の杜に住む妖怪と山神に育てられた俺は人でもなく、純粋な妖怪でもない… 半端な存在。 ーーまだ物心がついたばかりの頃、 幼い俺は母に雇われた男達に追われ追われて、地元の人間からは山神の杜と呼ばれているこの山に逃げ込み、崖から落ちても怪我した足を引きずり幾つも連なる朱い鳥居をくぐり冷たい雪路を肌足で進む… 真白の雪が降り積もる中、俺の足も寒さと怪我で動けなくなり… 短い一生を終えようとしたときーー 山神様が俺に新しい生命を吹き込んでくれた。

処理中です...