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気になることは
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「------」
「------」
となりの部屋から、話し声が聞こえてくる。
何を話してるかまではわからないけど、ふみちゃんと朱里ちゃんが楽しそうに話してるってことはわかった。
時々響いてくる2人の笑い声。
今まで作業中に笑い声が聞こえてくるなんてこと、なかったからなんだか不思議な感じだ。
ふみちゃんが、失恋から立ち直ってまた新しい恋をしていることはいいことだと思ってるけど。
なんだか、ちょっと複雑な気持ちだった。
それは朱里ちゃんが男だからってこともあるけれど、それ以上に何か・・・・
俺とふみちゃんは一緒に住んでて、同じ時に朱里ちゃんに出会って同じ時間を過ごしてるはずなのに、どうしてふみちゃんだったんだろう、なんて考えている自分がいた。
コンコン
突然部屋をノックされて、俺は驚いて持っていたハンドグリップを落としてしまった。
デスクワークばかりだとどうしても体がなまってしまうので、俺の部屋にはトレーニンググッズがそこら中に転がっていた。
「志賀ちゃん、入っていい?」
「ど、どうぞ」
ドアを開けて、朱里ちゃんがトレーを手に入ってきた。
「コーヒー、入れたよ。それから甘いもの欲しいかなと思って、プリン作ったから」
「え、プリン?朱里ちゃんが作ったの?」
「ん。ネットで動画観ながら作ってみた。志賀ちゃん、プリン好き?」
「好き!すごいね、きれいにできてる」
ガラスのお皿に盛りつけられたプリンには生クリームもかわいくトッピングされ、とてもおいしそうだった。
「んふふ、ありがと。食べてみてよ」
「うん、いただきます!―――あ、んまい!」
「ほんと?」
「ホント!超うまい!」
「ふふ、よかった。史弥もおいしいって言ってくれたし、大成功だね」
本当に嬉しそうに笑う朱里ちゃんは、無邪気な子供みたいでとてもかわいかった。
ふみちゃんが好きになっちゃうのも、だからなんとなくわかるんだけどさ・・・・
「・・・朱里ちゃん」
「ん?」
「朱里ちゃんはさ・・・ふみちゃんのこと、好きなの?」
「え・・・」
朱里ちゃんが目を瞬かせて俺を見てから、ふっと笑った。
「・・・うん、好きだよ」
「そっか・・・。あの、俺別に反対はしないよ。お互いに好きなら・・・でも、一つ聞きたいことがあって」
「なに?」
「朱里ちゃんは、サクと一緒に住んでるでしょ?その・・・2人の関係って何なのかなって思ってさ。前に、サクは朱里ちゃんのお目付け役だって言ってたけど」
「うん、そうだね」
「それってその・・・・サクの仕事なわけ?つまり、2人は一緒に住んでるけど単に同居してるだけ?」
俺の言葉に、朱里ちゃんはちょっと唇に手をやり考えていた。
そのしぐさが、妙に色っぽい。
計算してるわけじゃないだろうけど・・・・
「ケイは、昔から一緒にいるから家族みたいな感じだよ。血は繋がってないけど、同じくらい大事な存在」
「そうなんだ・・・」
「・・・志賀ちゃんが聞きたいのは、一緒に住んでて俺とケイがセックスしてないかってこと?」
「!!」
あまりにストレートにそう聞かれて、俺は飲んでいたコーヒーを吹きそうになってしまった。
「ぐっ―――い、いや、そういうわけじゃ・・・・」
「そうなの?」
「その・・・・そういう関係では、ない・・・・?」
その言葉にまた朱里ちゃんはちょっと考え・・・
クスリと笑い、答えを待つ俺に顔を近づけた。
朱里ちゃんの綺麗な顔が至近距離に近づき、俺の心臓は落ち着かなくなった。
「志賀ちゃんは、どう思う?」
「え・・・ど、どうって・・・・」
「ケイが俺のことを好きなのは気付いてるんでしょ?そのケイを俺がどう思ってると思う?」
サクに対する、朱里ちゃんの気持ち・・・?
さっき、家族みたいな存在だって言ってた。
それならサクとそういう関係ではないってこと・・・?
「ケイは、家族。でも家族だって時にはそういう気持ちになることが、あるかもね・・・?」
「え・・・ええ!?」
驚いて思わず身を引くと、朱里ちゃんがぷっと吹きだした。
「ふは、志賀ちゃん、反応が素直!」
「いやだって!家族でって、どういうこと!?」
「ふふ、冗談だよ」
「じょ、冗談・・・・」
心臓に悪いわ!
「ごめんね、怒らないで」
「怒ってはないけど・・・びっくりした」
「ふふ・・・史弥は幸せだね、友達がこんなに心配してくれて」
「そうかな・・・」
その瞬間、ずきんと胸が痛んだ。
いや、間違ってない。
ふみちゃんが心配なんだ。
あんなひどい振られ方したばっかりだし、また傷つけられたらって。
ふみちゃんが傷つくのを見てるのは辛い。
だから
それだけだ・・・。
「・・・・ん?それだけじゃなかったりする?」
朱里ちゃんが俺の顔をのぞき込む。
上目遣いに俺を見つめるその小悪魔みたいな表情もかわいい。
なんて思ってたら。
「志賀ちゃんも、俺とケイの関係が気になってたりした?」
そう聞かれて、俺はすぐに答えることはできなかった。
そんなんじゃないって。
ただ、ふみちゃんのことが心配なだけだって。
朱里ちゃんは、そんな俺の顔をじっと見つめていたけれど―――
ふっと笑うと、食べ終わったプリンの皿とコーヒーカップをトレーに乗せた。
「もう行くね。夕ご飯は麻婆豆腐だよ。できたら呼びに来るから」
「あ、う、うん、わかった」
朱里ちゃんがトレーを持って、ドアを開けて出て行こうとする、その瞬間―――。
ちらりと俺を振り返り、俺を見てほほ笑んだ。
思わずぞくっとするような、魅惑的な笑み―――
「お仕事、頑張ってね」
そう言って、出て行く朱里ちゃん。
パタンと閉じられたドアを見つめて
俺は、しばらく動くことができなかった・・・・。
「------」
となりの部屋から、話し声が聞こえてくる。
何を話してるかまではわからないけど、ふみちゃんと朱里ちゃんが楽しそうに話してるってことはわかった。
時々響いてくる2人の笑い声。
今まで作業中に笑い声が聞こえてくるなんてこと、なかったからなんだか不思議な感じだ。
ふみちゃんが、失恋から立ち直ってまた新しい恋をしていることはいいことだと思ってるけど。
なんだか、ちょっと複雑な気持ちだった。
それは朱里ちゃんが男だからってこともあるけれど、それ以上に何か・・・・
俺とふみちゃんは一緒に住んでて、同じ時に朱里ちゃんに出会って同じ時間を過ごしてるはずなのに、どうしてふみちゃんだったんだろう、なんて考えている自分がいた。
コンコン
突然部屋をノックされて、俺は驚いて持っていたハンドグリップを落としてしまった。
デスクワークばかりだとどうしても体がなまってしまうので、俺の部屋にはトレーニンググッズがそこら中に転がっていた。
「志賀ちゃん、入っていい?」
「ど、どうぞ」
ドアを開けて、朱里ちゃんがトレーを手に入ってきた。
「コーヒー、入れたよ。それから甘いもの欲しいかなと思って、プリン作ったから」
「え、プリン?朱里ちゃんが作ったの?」
「ん。ネットで動画観ながら作ってみた。志賀ちゃん、プリン好き?」
「好き!すごいね、きれいにできてる」
ガラスのお皿に盛りつけられたプリンには生クリームもかわいくトッピングされ、とてもおいしそうだった。
「んふふ、ありがと。食べてみてよ」
「うん、いただきます!―――あ、んまい!」
「ほんと?」
「ホント!超うまい!」
「ふふ、よかった。史弥もおいしいって言ってくれたし、大成功だね」
本当に嬉しそうに笑う朱里ちゃんは、無邪気な子供みたいでとてもかわいかった。
ふみちゃんが好きになっちゃうのも、だからなんとなくわかるんだけどさ・・・・
「・・・朱里ちゃん」
「ん?」
「朱里ちゃんはさ・・・ふみちゃんのこと、好きなの?」
「え・・・」
朱里ちゃんが目を瞬かせて俺を見てから、ふっと笑った。
「・・・うん、好きだよ」
「そっか・・・。あの、俺別に反対はしないよ。お互いに好きなら・・・でも、一つ聞きたいことがあって」
「なに?」
「朱里ちゃんは、サクと一緒に住んでるでしょ?その・・・2人の関係って何なのかなって思ってさ。前に、サクは朱里ちゃんのお目付け役だって言ってたけど」
「うん、そうだね」
「それってその・・・・サクの仕事なわけ?つまり、2人は一緒に住んでるけど単に同居してるだけ?」
俺の言葉に、朱里ちゃんはちょっと唇に手をやり考えていた。
そのしぐさが、妙に色っぽい。
計算してるわけじゃないだろうけど・・・・
「ケイは、昔から一緒にいるから家族みたいな感じだよ。血は繋がってないけど、同じくらい大事な存在」
「そうなんだ・・・」
「・・・志賀ちゃんが聞きたいのは、一緒に住んでて俺とケイがセックスしてないかってこと?」
「!!」
あまりにストレートにそう聞かれて、俺は飲んでいたコーヒーを吹きそうになってしまった。
「ぐっ―――い、いや、そういうわけじゃ・・・・」
「そうなの?」
「その・・・・そういう関係では、ない・・・・?」
その言葉にまた朱里ちゃんはちょっと考え・・・
クスリと笑い、答えを待つ俺に顔を近づけた。
朱里ちゃんの綺麗な顔が至近距離に近づき、俺の心臓は落ち着かなくなった。
「志賀ちゃんは、どう思う?」
「え・・・ど、どうって・・・・」
「ケイが俺のことを好きなのは気付いてるんでしょ?そのケイを俺がどう思ってると思う?」
サクに対する、朱里ちゃんの気持ち・・・?
さっき、家族みたいな存在だって言ってた。
それならサクとそういう関係ではないってこと・・・?
「ケイは、家族。でも家族だって時にはそういう気持ちになることが、あるかもね・・・?」
「え・・・ええ!?」
驚いて思わず身を引くと、朱里ちゃんがぷっと吹きだした。
「ふは、志賀ちゃん、反応が素直!」
「いやだって!家族でって、どういうこと!?」
「ふふ、冗談だよ」
「じょ、冗談・・・・」
心臓に悪いわ!
「ごめんね、怒らないで」
「怒ってはないけど・・・びっくりした」
「ふふ・・・史弥は幸せだね、友達がこんなに心配してくれて」
「そうかな・・・」
その瞬間、ずきんと胸が痛んだ。
いや、間違ってない。
ふみちゃんが心配なんだ。
あんなひどい振られ方したばっかりだし、また傷つけられたらって。
ふみちゃんが傷つくのを見てるのは辛い。
だから
それだけだ・・・。
「・・・・ん?それだけじゃなかったりする?」
朱里ちゃんが俺の顔をのぞき込む。
上目遣いに俺を見つめるその小悪魔みたいな表情もかわいい。
なんて思ってたら。
「志賀ちゃんも、俺とケイの関係が気になってたりした?」
そう聞かれて、俺はすぐに答えることはできなかった。
そんなんじゃないって。
ただ、ふみちゃんのことが心配なだけだって。
朱里ちゃんは、そんな俺の顔をじっと見つめていたけれど―――
ふっと笑うと、食べ終わったプリンの皿とコーヒーカップをトレーに乗せた。
「もう行くね。夕ご飯は麻婆豆腐だよ。できたら呼びに来るから」
「あ、う、うん、わかった」
朱里ちゃんがトレーを持って、ドアを開けて出て行こうとする、その瞬間―――。
ちらりと俺を振り返り、俺を見てほほ笑んだ。
思わずぞくっとするような、魅惑的な笑み―――
「お仕事、頑張ってね」
そう言って、出て行く朱里ちゃん。
パタンと閉じられたドアを見つめて
俺は、しばらく動くことができなかった・・・・。
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