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好きになっちゃう
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「あ、何これ」
「え―――あ!それ見ちゃダメ!」
休憩を終えて、仕事を再開するために部屋に戻ってきた俺になぜかくっついてきた朱里。
その朱里が俺の作業台の上に置いてあった紙を覗きこむ。
それに気付き、俺は慌ててその紙を隠すように台の上に身を乗り出した。
「・・・・もう見ちゃったよ。それ、何?もしかして・・・・俺?」
にやりと笑う朱里。
ったく・・・・
俺は溜息をついてその紙を広げた。
白い画用紙の端っこに描かれた朱里の似顔絵。
仕事の合間に朱里の顔を思い浮かべながら描いてたんだ。
「んふふ、嬉しい。俺、そんなかわいい顔してる?」
「・・・可愛いよ」
「ほんと?」
床の上にべったり胡坐をかいた俺の隣に座り、すごい至近距離から俺の顔を覗きこむ朱里。
そのきれいな顔が間近に迫って、思わずドキドキする。
「・・・・可愛いよ。すげえ可愛い。超可愛い」
ちょっとやけくそ気味にそう言ってやったら、朱里がその目を大きく見開き、頬を赤く染めた。
・・・・・可愛すぎる。
自分で聞いといて照れるとか・・・・・
わざとかよ?
「・・・・史弥、ずるい」
「は?なんで」
「俺がアシスタントやるの嫌がってたから、俺のこと嫌なのかと思ってたのに・・・・」
「はぁ?」
いや、もちろん突然アシスタントやりたいなんて言われて戸惑ったのは事実だけどさ。
嫌がってるとか・・・・・
いや、嫌がってると思ってるやつに、こんなに無防備に近づくのか?こいつは
「お前なぁ」
「ずるい」
「は?」
「好きになっちゃうじゃん」
「え・・・・・」
まっすぐに俺を見つめる目は潤んでいて。
やっぱりどこかせつなくて・・・・・
俺は、気付いたら朱里の唇にキスをしていた。
一瞬驚いて、体を震わせる朱里。
だけど、すぐに目を閉じてそのままその腕を俺の首に絡めた。
俺は朱里の腰を引き寄せさらに深く口付けた。
積極的なのかと思えば絡める舌先はどこか遠慮がちで、ともすると逃げようとするそれを強引に絡め取る。
「・・・・ッ、ん・・・・・・ッ」
艶っぽい声が漏れ、俺はさらに朱里を強く抱きよせ深く口付けた。
このまま、ひとつに・・・・・
そう思って朱里を押し倒そうとした瞬間―――
コンコン
ノックの音がして、俺たちは弾かれたようにパッと体を離した。
次の瞬間、扉が開き―――
「朱里ちゃん、今日夕飯も作ってくれるの?」
顔を覗かせたのは志賀ちゃんだった。
「あ・・・・うん、作るよ。何か食べたいものある?」
「ほんと?俺ねーから揚げ食べたいんだけど、作れる?」
「から揚げ?うん、わかった。じゃあケイと一緒に買いだし行ってくるね。他には何か食べたいものある?史弥は?」
「俺は別に・・・何でもいいよ」
「そぉ?じゃあ何か食べたいもの思いついたら教えて」
そういうと、朱里はすっと立ち上がり扉の方へ歩き出した。
「あ・・・・」
つい、声をかけようとしてしまう。
朱里が振り向き、ん?と首を傾げる。
「いや・・・・」
「・・・じゃ、またあとでね」
ふっと、心なしか艶やかな笑みを浮かべ、朱里は志賀ちゃんと一緒に部屋を出て行ったのだった・・・・。
「朱里くん、楽しそうだね」
スーパーで買い出しの最中、朱里くんは楽しそうに鼻歌なんか歌っていた。
兄弟のように育ってきた仲だ。
じゃなくても朱里くんのことなら何でもわかってるつもり。
「・・・・・垣田さんと、何かあったの」
俺の言葉に、朱里くんの鼻歌がピタリと止まる。
・・・・わかりやす過ぎる
「べっつにー」
「ふーん・・・・・?朱里くん?わかってると思うけど、ここに来た目的―――」
「もちろん、わかってるよ」
はっきりとした言葉。
俺は驚いて朱里くんの顔を覗きこんだ。
朱里くんは、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「朱里くん・・・・・?」
「ケイは、心配しないで。俺、こおきくんのためなら何でもできるんだよ」
ふふ、と楽しげに笑う朱里くん。
・・・それ、俺の前で言う・・・・?
そういうとこ、ほんと・・・・・
俺は朱里くんに分からないようにそっと溜息をついた。
俺に背を向けた朱里くんが、何かを思いつめたような顔をしていることに気付かずに・・・・・・
「え―――あ!それ見ちゃダメ!」
休憩を終えて、仕事を再開するために部屋に戻ってきた俺になぜかくっついてきた朱里。
その朱里が俺の作業台の上に置いてあった紙を覗きこむ。
それに気付き、俺は慌ててその紙を隠すように台の上に身を乗り出した。
「・・・・もう見ちゃったよ。それ、何?もしかして・・・・俺?」
にやりと笑う朱里。
ったく・・・・
俺は溜息をついてその紙を広げた。
白い画用紙の端っこに描かれた朱里の似顔絵。
仕事の合間に朱里の顔を思い浮かべながら描いてたんだ。
「んふふ、嬉しい。俺、そんなかわいい顔してる?」
「・・・可愛いよ」
「ほんと?」
床の上にべったり胡坐をかいた俺の隣に座り、すごい至近距離から俺の顔を覗きこむ朱里。
そのきれいな顔が間近に迫って、思わずドキドキする。
「・・・・可愛いよ。すげえ可愛い。超可愛い」
ちょっとやけくそ気味にそう言ってやったら、朱里がその目を大きく見開き、頬を赤く染めた。
・・・・・可愛すぎる。
自分で聞いといて照れるとか・・・・・
わざとかよ?
「・・・・史弥、ずるい」
「は?なんで」
「俺がアシスタントやるの嫌がってたから、俺のこと嫌なのかと思ってたのに・・・・」
「はぁ?」
いや、もちろん突然アシスタントやりたいなんて言われて戸惑ったのは事実だけどさ。
嫌がってるとか・・・・・
いや、嫌がってると思ってるやつに、こんなに無防備に近づくのか?こいつは
「お前なぁ」
「ずるい」
「は?」
「好きになっちゃうじゃん」
「え・・・・・」
まっすぐに俺を見つめる目は潤んでいて。
やっぱりどこかせつなくて・・・・・
俺は、気付いたら朱里の唇にキスをしていた。
一瞬驚いて、体を震わせる朱里。
だけど、すぐに目を閉じてそのままその腕を俺の首に絡めた。
俺は朱里の腰を引き寄せさらに深く口付けた。
積極的なのかと思えば絡める舌先はどこか遠慮がちで、ともすると逃げようとするそれを強引に絡め取る。
「・・・・ッ、ん・・・・・・ッ」
艶っぽい声が漏れ、俺はさらに朱里を強く抱きよせ深く口付けた。
このまま、ひとつに・・・・・
そう思って朱里を押し倒そうとした瞬間―――
コンコン
ノックの音がして、俺たちは弾かれたようにパッと体を離した。
次の瞬間、扉が開き―――
「朱里ちゃん、今日夕飯も作ってくれるの?」
顔を覗かせたのは志賀ちゃんだった。
「あ・・・・うん、作るよ。何か食べたいものある?」
「ほんと?俺ねーから揚げ食べたいんだけど、作れる?」
「から揚げ?うん、わかった。じゃあケイと一緒に買いだし行ってくるね。他には何か食べたいものある?史弥は?」
「俺は別に・・・何でもいいよ」
「そぉ?じゃあ何か食べたいもの思いついたら教えて」
そういうと、朱里はすっと立ち上がり扉の方へ歩き出した。
「あ・・・・」
つい、声をかけようとしてしまう。
朱里が振り向き、ん?と首を傾げる。
「いや・・・・」
「・・・じゃ、またあとでね」
ふっと、心なしか艶やかな笑みを浮かべ、朱里は志賀ちゃんと一緒に部屋を出て行ったのだった・・・・。
「朱里くん、楽しそうだね」
スーパーで買い出しの最中、朱里くんは楽しそうに鼻歌なんか歌っていた。
兄弟のように育ってきた仲だ。
じゃなくても朱里くんのことなら何でもわかってるつもり。
「・・・・・垣田さんと、何かあったの」
俺の言葉に、朱里くんの鼻歌がピタリと止まる。
・・・・わかりやす過ぎる
「べっつにー」
「ふーん・・・・・?朱里くん?わかってると思うけど、ここに来た目的―――」
「もちろん、わかってるよ」
はっきりとした言葉。
俺は驚いて朱里くんの顔を覗きこんだ。
朱里くんは、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
「朱里くん・・・・・?」
「ケイは、心配しないで。俺、こおきくんのためなら何でもできるんだよ」
ふふ、と楽しげに笑う朱里くん。
・・・それ、俺の前で言う・・・・?
そういうとこ、ほんと・・・・・
俺は朱里くんに分からないようにそっと溜息をついた。
俺に背を向けた朱里くんが、何かを思いつめたような顔をしていることに気付かずに・・・・・・
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