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第28話

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俺は溜息をつき―――

ベッドの横に座り、ベッドに横たわる皐月を見つめた。

雪のように白い肌は、今は熱のせいで赤みを帯びていた。

微かに開いた赤い唇からはやや荒い呼吸。

長くきれいにカールした睫毛は微かに揺れていた。

「・・・・・皐月・・・・・ごめんな・・・・・」

小さな声で呟き、皐月の前髪を撫でる。

俺のつまらない嫉妬で、皐月を傷つけてしまった。

あのときの、皐月の傷ついた顔が頭から離れなくて―――

「皐月・・・・・愛してるんだ・・・・・」

絞り出すように口から出た声が、自分でも驚くくらい震えていた。

次の瞬間―――

皐月の瞼が、ゆっくりと開いた―――

「・・・・・み・・・・・のる・・・・・?」

「皐月・・・・・大丈夫か?」

ぼんやりと焦点の合わない目で俺を見ていた皐月。

徐々に、その瞳が驚きに見開かれ―――

「―――稔!?」

がばっとベッドに起き上った皐月。

だが、体に力が入らないのか、ふらりとよろけ、後ろに倒れそうになるのを慌てて腕を伸ばして支える。

「―――皐月!無理、すんな」

「稔・・・・なんで・・・・?」

不安そうに俺を見つめる皐月の手を、そっと握った。

皐月の体が、微かに震える。

「―――皐月、好きだよ」

皐月の瞳が、驚きに見開かれた。

「―――愛してる―――」

その言葉に、皐月はきゅっと下唇を噛み―――

「俺、も・・・・俺も、愛してる・・・・」

そう言った、皐月の瞳から涙がポロリと零れ落ちた。

「稔・・・!」

俺の首に、ぎゅっと腕を絡ませしがみつくようにして抱きつく皐月が愛しくて―――

俺も、皐月の細い腰を引き寄せ、思い切り抱きしめた―――。

「皐月・・・・ごめん・・・・」

俺の言葉に、フルフルと首を振る皐月。

「俺のが・・・・ごめん・・・・ごめん、稔・・・・・」

「皐月・・・・・」

言葉にしなくても、伝わるお互いの気持ち。

こうして、抱き合っているだけで皐月の温もりが伝わってきて、俺の心が穏やかになっていくのがわかる。

―――やっぱり、俺は皐月がいなくちゃダメだ・・・・・。

皐月の髪を手ですくように撫で、その小さな顔を両手で包み込んだ。

涙で潤んだ瞳から零れた涙を指ですくい取り、熱で熱い唇にキスをする。

ついばむように、何度も唇を重ね―――

その柔らかな感触にそのまま皐月を求めそうになるけれど―――

熱い舌に触れ、我に帰る。

そっと唇を離し、皐月の目を見つめる。

「ごめん・・・・熱があるって、忘れるところだった・・・・」

俺の言葉に、皐月はぷっと吹き出した。

「そんなの、平気なのに―――」

「平気じゃないよ。倒れたんだぞ?すげえびっくりして―――頭ん中真っ白になったんだかんな」

「あー・・・・ごめん、ちょっと・・・・集中、し過ぎたのかも」

そう言って、苦笑する皐月。

俺はまた、心配になってきた。

「何が、あった・・・・?」

皐月は、俺の手を握り直すと、ゆっくりと話し始めた―――
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