25 / 39
第25話
しおりを挟む
「久美ちゃんの、お兄さん―――なんですよね?」
俺の言葉に、岩本さんは目を見開いた。
「戸田さん・・・・どうして、それを―――」
「すいません、僕も久美ちゃんを殺した犯人を見つけたくて―――探偵の彼に頼んだんです。久美ちゃんのこと、調べて欲しいって」
俺は、隣に座っていたさっちゃんを見た。
さっちゃんは、岩本さんが来てからずっと彼のことを見ていた。
それこそ、また岩本さんが戸惑うくらい―――
「―――所長の河合が、調べてくれました」
「そう―――でしたか。それは―――すいません、いずれ言わなくてはいけないと思ってたんですが、言いだせなくて―――」
「仕方ないと思います。久美ちゃんを―――妹さんを殺した犯人を、自分で見つけたいと思われたんですよね?」
俺が言うと、岩本さんは俺をじっと見つめ―――ゆっくりと頷いた。
「―――その通りです。僕は、ずっと妹を探していました。今、警察の仕事についているのはそのためと言っても過言ではない。血は繋がっていないけれど、僕のたった1人の妹です。ようやく見つけ出したのに―――」
「―――どうして、すぐに名乗り出なかったんですか?」
さっちゃんの言葉に、岩本さんは驚いたようにさっちゃんを見た。
「2週間くらい前から、わかってましたよね?久美ちゃんが妹さんだって。あの店にも、何度もきていた。店の中には入らず、外から見ているだけでしたけど―――」
「え・・・・どうしてそれを・・・・?僕があのお店に久美を見に行ったことは、誰も知らないはず―――」
岩本さんの言葉に、さっちゃんはちょっと首を傾げた。
「僕のいる探偵事務所は、あの店のすぐ上ですから。たまたま、窓から外を見たときに気付いたんですよ。事務所にいるとき、よく窓から外を見てるんです。何度もあなたを見ていたので、覚えてたんです」
もちろん、これは嘘だ。
さっちゃんの特殊な能力のことはなるべく人に話さないようにしていた。
「どうして、すぐに名乗り出なかったんですか?すぐに名乗り出ていれば、久美ちゃんも喜んでいたかもしれない。久美ちゃん自身、お母さんを亡くして1人ぼっちだったんですから」
「そう・・・ですよね。すぐに名乗り出ていれば、もしかしたらこんなことにはならなかったかも―――」
岩本さんは、辛そうに下を向いた。
「久美は―――あの頃まだ5歳で、きっと俺のことは覚えていなかったでしょう。母親から少しは聞いていたかもしれないけれど―――いきなり俺が会いに行って、兄だと言っても信じてもらえない気がして・・・・情けない話ですが、あの子にどう切り出したらいいのか、わからなかったんです」
さっちゃんは、相変わらず岩本さんをじっと見つめていた。
まるで岩本さんの心の中にあるものを、読みとろうとするかのように―――
「―――すいません、鍵のことやあの子の実の父親のこと―――樫本たちから聞きました。もう一度、調べ直しです。それから、あなたのあの日の行動について―――目撃情報がありました」
「え!本当ですか?」
俺は驚いて身を乗り出した。
「ええ。あなたのこのマンションの前に、あなたの車が止まっているのを見た人間がいたんです。その人は、手にノートのようなものを持ったあなたが車に乗り込むのも見ていたそうです。時間は夜9時半ごろ。マンションの前は街灯の明かりでかなり明るく、顔もはっきり見えたそうなのであなたに間違いないそうです。これで、あなたのアリバイは成立しました」
優しく微笑む岩本さんに、俺は体から一気に力が抜けるのを感じていた。
「―――良かった・・・・あ、すいません、よくはないですよね。久美ちゃんを殺した犯人はまだ見つかってないのに―――」
「いや、構いません、こちらも無実の人間を捕まえてしまうところでしたから、ほっとしていますよ」
なんだか、そこだけホッとした空気が流れ、俺と岩本さんは自然と笑顔になった。
俺の言葉に、岩本さんは目を見開いた。
「戸田さん・・・・どうして、それを―――」
「すいません、僕も久美ちゃんを殺した犯人を見つけたくて―――探偵の彼に頼んだんです。久美ちゃんのこと、調べて欲しいって」
俺は、隣に座っていたさっちゃんを見た。
さっちゃんは、岩本さんが来てからずっと彼のことを見ていた。
それこそ、また岩本さんが戸惑うくらい―――
「―――所長の河合が、調べてくれました」
「そう―――でしたか。それは―――すいません、いずれ言わなくてはいけないと思ってたんですが、言いだせなくて―――」
「仕方ないと思います。久美ちゃんを―――妹さんを殺した犯人を、自分で見つけたいと思われたんですよね?」
俺が言うと、岩本さんは俺をじっと見つめ―――ゆっくりと頷いた。
「―――その通りです。僕は、ずっと妹を探していました。今、警察の仕事についているのはそのためと言っても過言ではない。血は繋がっていないけれど、僕のたった1人の妹です。ようやく見つけ出したのに―――」
「―――どうして、すぐに名乗り出なかったんですか?」
さっちゃんの言葉に、岩本さんは驚いたようにさっちゃんを見た。
「2週間くらい前から、わかってましたよね?久美ちゃんが妹さんだって。あの店にも、何度もきていた。店の中には入らず、外から見ているだけでしたけど―――」
「え・・・・どうしてそれを・・・・?僕があのお店に久美を見に行ったことは、誰も知らないはず―――」
岩本さんの言葉に、さっちゃんはちょっと首を傾げた。
「僕のいる探偵事務所は、あの店のすぐ上ですから。たまたま、窓から外を見たときに気付いたんですよ。事務所にいるとき、よく窓から外を見てるんです。何度もあなたを見ていたので、覚えてたんです」
もちろん、これは嘘だ。
さっちゃんの特殊な能力のことはなるべく人に話さないようにしていた。
「どうして、すぐに名乗り出なかったんですか?すぐに名乗り出ていれば、久美ちゃんも喜んでいたかもしれない。久美ちゃん自身、お母さんを亡くして1人ぼっちだったんですから」
「そう・・・ですよね。すぐに名乗り出ていれば、もしかしたらこんなことにはならなかったかも―――」
岩本さんは、辛そうに下を向いた。
「久美は―――あの頃まだ5歳で、きっと俺のことは覚えていなかったでしょう。母親から少しは聞いていたかもしれないけれど―――いきなり俺が会いに行って、兄だと言っても信じてもらえない気がして・・・・情けない話ですが、あの子にどう切り出したらいいのか、わからなかったんです」
さっちゃんは、相変わらず岩本さんをじっと見つめていた。
まるで岩本さんの心の中にあるものを、読みとろうとするかのように―――
「―――すいません、鍵のことやあの子の実の父親のこと―――樫本たちから聞きました。もう一度、調べ直しです。それから、あなたのあの日の行動について―――目撃情報がありました」
「え!本当ですか?」
俺は驚いて身を乗り出した。
「ええ。あなたのこのマンションの前に、あなたの車が止まっているのを見た人間がいたんです。その人は、手にノートのようなものを持ったあなたが車に乗り込むのも見ていたそうです。時間は夜9時半ごろ。マンションの前は街灯の明かりでかなり明るく、顔もはっきり見えたそうなのであなたに間違いないそうです。これで、あなたのアリバイは成立しました」
優しく微笑む岩本さんに、俺は体から一気に力が抜けるのを感じていた。
「―――良かった・・・・あ、すいません、よくはないですよね。久美ちゃんを殺した犯人はまだ見つかってないのに―――」
「いや、構いません、こちらも無実の人間を捕まえてしまうところでしたから、ほっとしていますよ」
なんだか、そこだけホッとした空気が流れ、俺と岩本さんは自然と笑顔になった。
10
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
初恋の公爵様は僕を愛していない
上総啓
BL
伯爵令息であるセドリックはある日、帝国の英雄と呼ばれるヘルツ公爵が自身の初恋の相手であることに気が付いた。
しかし公爵は皇女との恋仲が噂されており、セドリックは初恋相手が発覚して早々失恋したと思い込んでしまう。
幼い頃に辺境の地で公爵と共に過ごした思い出を胸に、叶わぬ恋をひっそりと終わらせようとするが…そんなセドリックの元にヘルツ公爵から求婚状が届く。
もしや辺境でのことを覚えているのかと高揚するセドリックだったが、公爵は酷く冷たい態度でセドリックを覚えている様子は微塵も無い。
単なる政略結婚であることを自覚したセドリックは、恋心を伝えることなく封じることを決意した。
一方ヘルツ公爵は、初恋のセドリックをようやく手に入れたことに並々ならぬ喜びを抱いていて――?
愛の重い口下手攻め×病弱美人受け
※二人がただただすれ違っているだけの話
前中後編+攻め視点の四話完結です
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる