上 下
24 / 39

第24話

しおりを挟む
「さっちゃん」

俺は、リビングのソファーでぼんやりしているさっちゃんに声をかけた。

「あのさ・・・・俺、岩本って刑事さんに話そうかと思ってるんだ」

俺の言葉に、さっちゃんが振り向いた。

「―――え?」

「久美ちゃんのこと・・・・・それで、岩本さんに久美ちゃんのお葬式を出して欲しいんだよね」

「お葬式を・・・・?」

「うん・・・・。久美ちゃんのお母さんはもう亡くなってるし、このままだと無縁仏になっちゃうんじゃないかって・・・・」

「そっか・・・・重松完治が父親として名乗り出てくるとも思えないしね」

さっちゃんも頷きながらそう言った。

久美ちゃんの実の父親が重松完治だということは、今頃樫ちゃんと関から警察の方に報告されていることだろう。

もちろん、さっちゃんから聞いたとは言わずに、自分たちで調べたということにしているはずだけど。

警察がどの程度まで重松完治や向井洋一、直人のことを調べられるかわからない。

仮に調べようとしても、上から何らかの圧力があることも考えられた。

だからこそ、さっちゃんは自分が向井直人に近づくのが一番いいと思ったんだろうけど・・・・・。

「さっちゃんも、同席してくれる?俺は警察にまだ疑われてるだろうからさ、2人で話したいことがあるなんて言ったら自白するのかと思われちゃいそうじゃん?」

俺の言葉に、さっちゃんは明るく笑った。

「ふはは、そうだね。岩本さんが嫌がらなければ、俺は別にいいよ」

「嫌がる?岩本さんが?」

「だって俺、あのとき結構きつい言い方しちゃったし、じろじろ見ちゃったからいやな気分にさせちゃったかもしれない」

「ええ・・・・そんなこと、ないと思うけどなぁ・・・・・」

きつい言い方って言っても、あれは俺を庇ってくれたわけだし、たぶんそれは岩本さんだってわかってる。

それに、じろじろ見られたって言っても相手がさっちゃんだったら・・・・・俺だったら、絶対いやな気持ちにはならない。

てか、嬉しいけど。

岩本さんだって、あのときちょっと顔が赤くなってたもん。

「よし、そうときまったら関に電話して頼んでみるね」

「ん」



そうして、俺は早速関に電話をした。

『―――何ですか』

「あのさ、岩本さんに、久美ちゃんのこと話そうかと思うんだけど―――」

事情を説明すると、すぐに関は理解してくれたようだった。

『わかった。今ちょっとここにいないけど、すぐ戻るはずだから戻ったら伝える。―――で、皐月くんは、どうしてる?』

「どうって・・・・」

俺は、キッチンで何やら作り始めたさっちゃんをちらりと見た。

「かなり、落ち込んでたよ。あんなさっちゃん、初めて見た。樫ちゃんと喧嘩でもした?」

『―――まあ、そんなとこだな。こっちもかなりへこんでる。―――あのさ、もし皐月くんが向井直人に連絡とってたりしたら、すぐに知らせて』

「いいけど・・・・でもさ、さっちゃんは樫ちゃんのこと裏切ったりしないと思うよ?今回はさ、俺のためにあんなことやってくれただけで―――」

『それは樫本さんだってわかってますよ。でも、わかっていても納得できないことがあるんですよ。俺も、できれば皐月くんには無茶なことして欲しくない。戸田さんだって、同じ気持ちでしょ?』

「まあ、そりゃあ・・・・」

『だったら、協力してくださいね。皐月くんが、無茶しないようにちゃんと見ててくださいよ』



そしてその夜、岩本さんが俺たちの前に姿を現したのだった・・・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

【完結】かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜

倉橋 玲
BL
**完結!** スパダリ国王陛下×訳あり不幸体質少年。剣と魔法の世界で繰り広げられる、一風変わった厨二全開王道ファンタジーBL。 金の国の若き刺青師、天ヶ谷鏡哉は、ある事件をきっかけに、グランデル王国の国王陛下に見初められてしまう。愛情に臆病な少年が国王陛下に溺愛される様子と、様々な国家を巻き込んだ世界の存亡に関わる陰謀とをミックスした、本格ファンタジー×BL。 従来のBL小説の枠を越え、ストーリーに重きを置いた新しいBLです。がっつりとしたBLが読みたい方には不向きですが、緻密に練られた(※当社比)ストーリーの中に垣間見えるBL要素がお好きな方には、自信を持ってオススメできます。 宣伝動画を制作いたしました。なかなかの出来ですので、よろしければご覧ください! https://www.youtube.com/watch?v=IYNZQmQJ0bE&feature=youtu.be ※この作品は他サイトでも公開されています。

処理中です...