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第13話

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リビングに入るとソファーで浩斗くんがコーヒーを飲んでいて、その向かいのソファーに皐月が、そして床のラグマットの上に関が胡坐をかいて座っていた。

皐月が、ちらりと俺の方を見て、またすぐに浩斗くんの方へと向き直った。

その頬か微かに赤く染まっていて・・・・

俺はにやけそうになる口元を手で押さえた。

戸田くんが自分のコーヒーカップを持ち浩斗くんの隣に座ったので、俺は自然と皐月の隣に腰を下ろした。

「―――うちから、何か持って来て欲しいものがあったら言ってよ。今夜にでもまた、持ってくるから」

俺が言うと、皐月はホッとしたように笑った。

「―――ありがと。あとでメールする」

「ん」

「それで、皐月くん、さっきの話の続きは?」

関の言葉に、みんなが一瞬キョトンとする。

「―――久美ちゃんが、行こうと思ってたところならわかるって言ってたでしょ?」

「ああ、うん。―――ここ1ヶ月くらい・・・久美ちゃんが頻繁に会ってる人がいるんだ」

「それは・・・・男?」

もしかして、新しい恋人か?

「うん、男。でも、恋人とかじゃなくて―――たぶん、父親」

「父親?それって、岩本さんの―――」

「ううん、違う。岩本さんのお父さんは2年前に病気で亡くなってるよ。久美ちゃんが会ってたのは、久美ちゃんの実の父親―――久美ちゃんが生まれる前に母親が付き合っていた男」

「それって―――」

関が、顔を顰める。

「久美ちゃんのお母さんは、未婚で久美ちゃんを生んだんだ。久美ちゃんには実の父親の記憶がない。岩本さんの父親とも5歳のころに分かれてるから、ずっと母親と2人だけで暮らしてきたようなもんだよね。そのお母さんが、久美ちゃんが高校生になった頃に実の父親のことを教えてくれたんだ。名前や詳しい素性は教えなかったみたいだけど、実の父親には別の家庭があって結婚することができなかったって・・・・。その話を聞いて、久美ちゃんはお母さんが実の父親に捨てられたんだと思ったみたいだね。それから間もなくしてお母さんは交通事故で亡くなって、久美ちゃんは1人になった。父親のこと、気にはなってたみたいだけど、実際一緒に暮らしたこともないし母親を捨てた男を探そうとも思わなかったみたい。岩本さん親子のことも詳しくは話さなかったみたいだな。結局、久美ちゃんは自分から父親や岩本さんを探そうとは思わなかったみたいだけど―――」

「父親が、久美ちゃんを探してたってこと?」

戸田くんの言葉に、皐月は曖昧に頷いた。

「さぁ、その辺は俺にもよくわからないけど・・・・とにかく、突然父親が久美ちゃんに会いに来たんだ。久美ちゃんもそれが父親だって、会ってすぐにわかったみたいだけど・・・・あんまり気持ちは許してなかったみたい」

「・・・・母親を、捨てたから?」

「うん。それに、父親にはちゃんと奥さんがいたから。子供はいなかったみたいだけど」

「そうなんだ。それで・・・その父親は、なんで今さら久美ちゃんに会いに?」

俺の言葉に、皐月はちょっと言いづらそうに、眉間にしわを寄せた。

「・・・・政略結婚、させるため・・・らしい」

そして、その口から出た言葉に、俺たちは全員言葉を失った・・・・・。
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