血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら

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心配と安心

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「今日からひなちゃん、中等部に転入するんでしょ?見に行く?京ちゃん」

教室で小坂に声を掛けられ、俺はちらりとそちらを見た。

「・・・これから行こうと思ってたけど。お前も来るの?」
「もっちろん!俺もひなちゃんに会いたいもん!」

陽向の転入初日。
朝は陽向と一緒に来たけれど中等部と高等部は校舎が違うため、校門を入ったところで別れなければならない。
朝からずっと陽向のことが心配で仕方なかった俺は、昼休みになったら様子を見に行こうと思っていたのだ。


「あ、きょおくん!」

中等部の陽向のクラスに行くと、陽向が俺と同じ紺のブレザーの制服姿で一番前の席に座っていた。
隣に座っていた男子生徒と一緒に給食を食べていたようだった。

「よぉ、ちゃんと給食食べれた?」
「うん、おいしかったよ。小坂くん、こんにちは」
「こんちは!ひなちゃん!って、誰かと思ったら雄介ゆうすけじゃん!」

そう言って小坂が陽向の隣に座っていた男子生徒を見た。

「え、お前知り合い?」
「うん、俺んちの近所に住んでる谷口雄介たにぐちゆうすけっていうの。小学生の時同じ野球チームにいてさ、今でもたまにキャッチボールなんかしてんだよ。な、雄介」
「うるさいですよ、龍太さん。中等部のクラスででかい声出さないでよ」
「あー、またそういう生意気なこと言って!ひなちゃん、こんなやつの隣で大丈夫?いじめられてない?」
「失礼なこと言わないでよ。俺が陽向くんのこといじめるわけないでしょ?」
「んふふ、大丈夫だよ。雄介くん、すっごく優しいもん。教科書見せてくれるし、わからないとこも教えてくれるし。俺、雄介くんの隣でよかったって思ってるもん」

そう言ってにっこりと笑う陽向の横で、照れたように頬を染める谷口雄介。

―――なんだよ、こいつ・・・・

面白くない。
陽向は、俺のものなのに・・・・
醜い嫉妬が俺の胸をもやもやさせる。

「おーい―――と、あれ?水沢みずさわ、小坂、何してんの」

そう言って廊下から顔を覗かせたのは、このクラスの担任で俺と小坂が中等部にいた時にの担任だった島田しまだ先生だった。

「あ、島田先生、久しぶりー!ひなちゃんの担任、島田先生なんだ?」
「あー、じゃあ、水沢の高等部にいる兄貴って―――」
「島田先生、弟の陽向がお世話になってます」
「お?おお・・・・」

島田先生は不思議そうに俺と陽向の顔を交互に見比べた。
そりゃあそうだ。
島田先生が俺の担任だった頃は俺には弟なんていなかったし、俺たちは全然似ていないんだから。
でも、島田先生はぼーっとしているようで意外と察しがいい。

「うん、まあ、まかせとけ」

と言って、島田先生は笑って頷いた。
この人の笑顔はなんとなく安心する。
小柄で猫背の男で、年齢は26歳だったが童顔で俺たちといてもあまり違和感がない。
俺と小坂の担任だったのは、俺たちが中等部の3年生の時。
大学までエスカレーター式の学校で受験が無いとはいえ、大学を出たばかりの新人教師が受け持つには荷が重かったはず。
だけど島田先生はいつでもひょうひょうとしていて、生意気で扱いづらかったはずの俺たちを見事に手なずけてしまったのだ。
陽向がそんな島田先生のクラスに入ったと知り、俺はほっと安心した。

「で、先生、陽向くんに用事じゃないの?」

雄介の言葉に、島田先生が『あっ』と手を叩く。

「そうそう、教科書が届いてるから事務室に取りに来て」
「あ、はーい」

陽向が立ち上がると、なぜか隣の雄介も立ち上がる。

「陽向くん1人じゃ大変でしょ?俺も一緒に行くよ」
「いや、俺が一緒に運ぶから大丈夫だよ」

島田先生の言葉に雄介が口を尖らせ何か言おうと口を開いたが、陽向がそれを遮るようににっこりと笑って言った。

「ありがと、雄介くん。大丈夫だよ。行ってくるね。きょおくん、小坂くん、またね」
「ああ。今日の授業終わったら、校門で待ってろよ。一緒に帰ろう」
「うん」

そうして、陽向は島田先生と一緒に教室を出て行ったのだった・・・・。
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