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第9話 友達

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「はぁ、はぁ、はぁ~。」
両手を膝に乗せタクミは息をきらしていたが、ついには地面に座りこんだ。

タクトが何故息をきらして座り込んだのか…。

それは遡ること10数分前のこと。

もうすぐ夏休みとなることで浮かれながら駅に向かっていた帰り道(ドンッ)と言う音が細い路地の奥の方から聞こえてきた。

今までのタクトなら何も気にせず帰っていたのだが…心の変化がタクトの行動にも変化をもたらせた。

タクトは気になって細い路地を進んで行くと左右の分かれ道になっていた。

その分かれ道の右側の方から声が聞こえてきた。

ドスのきいたような声で、
「早く金をだせっていってんだろうが」

(ドゴンッ)

何かを蹴っているのだろうか…、付近に近づいたことで音が響き渡る。

「早くださねぇと…わかってんだろうな、あ~ん」

「お、親からもらった、た、大切なお金なので勘弁して下さい」

泣きそうなか細い声が聞こえてきた。

それを聞いたカクミは恐喝だと一瞬で気づき、どうするか考える。

細い道の曲がり角ギリギリまでくると…、

「お巡りさん、こっちです早く来て下さい」

タクミはお巡りさんを呼ぶふりをした。

その声を聞いた恐喝をしていた不良達は慌てて、

「チッ、お前らずらかるぞ」と行って走って逃げて行った。

タクトはかがんで慎重に確認し、不良達が見えなくなったのを見計らって恐喝されていた人の元まで行くと、彼の手をとって走りだした。


そしてタクトは現在、冒頭のように息を切らせて座りこんでいた。

「はぁ、はぁ~、ここまで来れば大丈夫だろう」

彼は何がなんだか分からずにキョトンとしている。

「あ~、ごめんごめん説明するね。お巡りさん呼んだのは嘘なんだ。だから、不良共が戻ってきたら大変だからここまで逃げてきたってこと」

彼も息を切らせながら、
「あ、有り難うございます。おかげでお金をとられずにすみました」

彼はマジマジとタクトを見ながら、
「でも何故助けてくれたのですか?」

「もしかして、陰キャに助けられるとは思ってもみなかったって顔してるね」

「い、いえ、そんな…」

「理由が知りたいかい?別に気にならないならお礼の言葉も聞いたことだし帰るけど」

タクトは彼の容姿を見て、合えてこんな言葉を使ったのだ。

「し、知りたいです」

「そうか、君の名前は?」

「藤原 蓮です」

「そうか、いい名前だね。俺の名前は加賀 卓斗。じゃあ駅前のカフェにでも行こうか…、まあ、陰キャな容姿の二人がカフェに行くのも変だがな」

そう言いながらタクトは笑いながら歩いていく。
その後を興味深そうについていく蓮。

カフェに入ると女性の店員は、タクト達を外から見えない奥の席へと案内した。

その店員にコーヒーを頼むと、
「なぁ~蓮、俺達がこの席に案内された理由は気付いてるか?」

蓮はハッと気づき、
「僕達の容姿のせいですか?」

「まあ、そうだな。それに気づいて蓮は何を思う?」

「ムカつきます。けど…。」

「けど?」

「今考えればいつものことなので、当然なのかなって思って。加賀さんはどう思うのですか?」

「何も。店員さんは店の売上を考えた結果当然の行動をしたまでだ。」

蓮はすこし荒げた声で、
「じゃあ、顔の悪い奴には当然って言うことですか?」

「世の中不平等だよな。でもな、お前見たいに頑張ってない奴が言うセリフでもないと思うんだが」

「貴方が僕の何を知っているんですか?」

「何も?ただ、蓮は今まで容姿に気をつかったことはあるのか?」

「そんなこと、…、な、ないかも」

「そうだろうな。そう言うのを宝の持ち腐れって気付いてるか?まあ、それはいいや、すこし俺の話を聞いてくれるか?」

「は、はい」

タクトは今までのこと、そして小説家の先生のこと、さらには変わろうとしている自分のことをタンタンと話して言った。

それを聞いた蓮は、
「グスン。ご、ごめんなさい。グスン」

「何故蓮が泣くんだ?それに謝られる理由もないし」

蓮は何も知らないのに声を荒げたこと、さらには助けてもらったのにごめんなさいと泣きながら何度も謝ってきた。しかし、最後に
「ぼ、僕でも変われると思いますか?」

タクトはニヤリと微笑みながら、
「蓮次第かな。それに俺も今から頑張る予定だし、答えなんて誰にもわからねぇよ」
「そうですよね。でも、僕も加賀君と一緒に変わりたい」

タクトは嬉しそうに、
「タクトでいいよ。今日から蓮は俺の友達だ、宜しくな」

「僕なんかがいいのかな?あ、いや、変わらないと…。う、うん。宜しくねタクト君」
こうして二人はカフェの奥で笑いながら今後のことを話していた。
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