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1巻

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   第一話 異世界への旅立ち


 藤沢ふじさわ拓美たくみという男の人生が終わりを迎えようとしている。
 数日前にがんでの余命宣告を受けて以降、彼は病院のベッドに寝たきりだった。
 男は自分の過去を振り返りながら、一人つぶやく。

「はぁ~、まだ三十代なのにもうすぐ死ぬなんて……何とも呆気あっけない終わりだな。趣味がパチンコってだけで、パチンコ店を職場に選んだのは浅はかだったかも。職場ではボロボロになるまで働き、体を気遣きづかひまもなかったもんな」

 そこまで口にしてから、拓美は溜息ためいきをついた。

「……何にせよ親より早く亡くなるとは、我ながら親不孝だったな」

 そのまま拓美の容態は回復することもなく、数ヵ月後両親に看取みとられ亡くなるのだった。


 目を覚ました拓美は、辺り一面真っ白な空間にいることに戸惑とまどう。
 自分の体に目を向ければ、半透明ではあるものの、生前の元気だった時と変わらない体形のままだった。

「どうなっている? 俺は死んだはずだが」

 すると目の前に光とともに白髭しろひげのおじいさんが突然現れ、拓美に声をかける。

「おぬしがフジサワタクミで間違いないかのぅ?」
「あぁ……そういう貴方あなたはいったい?」
「お主の世界の言葉を借りるなら、異世界の神かのぅ」

 神は髭をでながら言った。
 異世界転生もののライトノベルが好きだったこともあり、拓美はすぐに状況を理解して尋ねる。

「もしかして、死んだ後のことで俺に話があるとかですか?」

 神は拓美の質問に驚いた表情を浮かべ、目を輝かせながら言った。

「話が早くて助かるのぅ。それでお主、異世界に興味はないかの? 実はわしが管理している世界のけがれを浄化じょうかするにあたって、この世界のぜんなるたましいを送る必要があっての」

 拓美はあごに手をやり、少し考える。

(異世界に転生するのは好都合だが、できれば特典がほしいな……)
「もちろん転生するにあたって援助はさせてもらうつもりじゃぞ」

 拓美は自分の心を読まれたことに一瞬衝撃を受けたものの、冷静に尋ねる。

「じゃあ特典をもらう前に質問してもいいですか?」
「もちろんかまわんぞ」
「ありがとうございます。まず異世界転生の特典がどういったものか教えてもらえませんか?」
「特別に固有スキルを三つまで付与しようと思っとるぞ。通常、お主の行き先である異世界アダムスでは、『宝珠ほうじゅ』と呼ばれる教会で行われる儀式で一つか二つもらうものなのじゃがな」
「その固有スキルというのは……?」
「おぉ、説明が足りなかったの。アダムスではさっき言った儀式で付与される『固有スキル』と、努力で習得できる『スキル』とが別にあるんじゃ」
「なるほど……」
(最初から三つももらえるのはありがたいな)

 神の言葉に拓美は笑みを浮かべた。

「そのスキルの内容を俺が決められるってことですか?」
「そうじゃが……どうせお主のことだから既に欲しいスキルは決まっておるのじゃろう? ただ先に言っておくが、強力すぎるスキルはあちらの世界のバランスを崩すので渡せぬ決まりになっておる」

 スキルをもらえると聞いた時点で、拓美は何でもできてしまうスキルを持つより、あまり目立たず徐々に強くなりたいと考えていた。
 あまり強すぎると目立って危ないと、今まで読んだライトノベルから学んでいたからだ。
 拓美は欲しいスキルの内容を列挙する。

「俺が欲しいのはアイテムを収納できるスキル。それと、鑑定系のスキルですね。最後に相手のスキルをコピーするようなスキルがあればいただきたいです」

 そこまで聞くと神は困ったような顔をしながら、口を開いた。

「最初の二つについては《アイテムB‌O‌X‌(強)》と鑑定の中でも上位の《鑑定(強)》を授けよう。ただし、相手のスキルをコピーするようなものはいささか難しいのぅ。お主が思っているような《吸収》だったら制限付きで与えることはできるが……」

 拓美はその言葉に反応する。

「どんな条件ですか?」
「死亡した者や盗賊とうぞくなどの重罪人で、また人として分類できるものからしか吸収できないという内容じゃな」

 ちなみに人として分類できる種族は何かと拓美が聞いたところ、人間以外だと獣人族やドワーフ、エルフなど知性がある種族が対象だと教えてくれた。
 拓美は流石さすがに魔物までは欲張りすぎだなと考えた後、それでも十分に凄いスキルには違いないと思い直す。
 そして納得したように頷くと、再び口を開いた。

「ありがとうございます。では、それでお願いします。それと、一つ気になったのですが先ほど言っていた《アイテムB‌O‌X(強)》と《鑑定(強)》のスキル名にある『強』って何ですか?」

 そう拓美が聞くと、神は説明を始めた。

「今からお主に与えるスキルは固有スキルと言っての。通常のスキルと違って弱、中、強と三段階に分かれるんじゃ」

 そのまま神は、弱、中、強の成長上限がそれぞれ異なり、弱はLv‌10‌まで、中はLv‌20‌まで、強はLv‌30‌までレベルアップできることを補足した。

「通常のスキルと固有スキルで他に違いはあるんですか?」
「たしか同レベルで比較したら、固有スキルは通常スキルの一‌・‌五倍くらい性能や威力が高かったはずじゃ。あと通常のスキルだと、どんなに頑張ってもレベルは10までしか上がらん」
「なるほど、わかりました。あともし手に入れたスキルがステータスボードのようなものに表示されるなら、《アイテムB‌O‌X‌》と《鑑定》だけ先に記載して、後日《吸収》のスキルをいただきたいのですが、ダメですか?」

 万が一宝珠の儀の時にどんなスキルを持っているか見られ、スキル《吸収》の存在がバレたらおおごとになる。
 そこまで予想して拓美はそうお願いしたのだった。
 神はそんな拓美の心を読んだのか、ニヤリと笑って返答した。

「そんな頼みをされたのは初めてじゃが、問題ないぞ。お主の考える通り、《吸収》は宝珠の儀でスキルを得た後、もう一度教会に訪れた時にステータスに載せるとしよう。もちろんスキル自体は宝珠の儀を終えたらすぐ使える状態にしとくぞ」
「助かります。あと、転生先ですが、下級貴族などの子供がいいです。できれば長男以外で性別は男でお願いします」

 あまりに身分が低いと生活に苦労するだろうし、かといって王族などだといざこざに巻き込まれる可能性が高い。それらを考慮しての選択だった。

「うむ、良いじゃろう。他に質問や要望がなければ転生させるが、大丈夫かのぅ?」
「最後に確認なのですが、使命などはないのですよね?」
「日本の善の魂を異世界に送るだけじゃから心配しなくてよいぞ。宝珠の儀にあわせてお主の記憶をよみがえらせるからの。それから先は新たな人生を楽しんでおくれ」

 そう言い終わるやいなや、神は笑顔で拓美に手を向けると光を放った。


 ふと目を覚ました拓美は、自分の体を見て少年の姿になっていることに気付く。

「ここはどこだ?」

 そう呟くと同時に宿主の少年の記憶が流れ込んでくる。
 この少年が生まれてから拓美の意識が目覚めるまでの日々である。

「……なるほど、今の俺はアスラン・アーバインという五歳の少年か」

 そこでわかったのは、自身の情報と家族のことだけ。
 ひとまず転生が無事済んだことに安堵あんどし、上体をベッドで起こした。
 そして自分の体に再び目を向けた後、部屋を見回す。
 しばらくすると、メイド服を着た二十代の女性が中へ入ってきた。

「アスラン様、朝食の用意ができましたので、着替えて広間までいらしてください」

 様づけで呼ばれたことに戸惑うも、拓美――アスランは子供らしく返事をする。

「はぁい」

 もちろん三十代の男性が中身のため、彼は本当は流暢りゅうちょうに話せる。だが、前世の記憶が戻る前とギャップが出すぎたらまずいと思い、子供らしい振る舞いをしようと転生前から決めていたのだ。
 アスランが着替えて広間に入ると既に二人の子供が食卓の椅子に座っており、その向かいに両親が着席するところだった。
 アスランは部屋にいる家族のみんなに挨拶をした後、自分の席に座る。
 そしてここの子供達が、先ほどの記憶にいたベルトという七歳の次男とセレストという三歳の次女であることを理解した。
 目の前にいる父親の名は、アデール・レイ・アーバインで、母親はアドリーヌ・アーバインといい、二人とも水色の髪に青い目をしている。
 両親ともに異世界ものでよく見る美男美女ではなかったが、優しそうで安心できる雰囲気ふんいきだ。
 アスランは自分の容姿を鏡で見たわけではないが、二人の子供も両親と同じような髪と目の色だったので、おそらく遺伝で自分もそうだろうと薄々感じた。
 そのまま食事をしながら家族と話していくうちに、記憶の中で思い出した情報を再確認する。
 今住んでいる街がアスランの父が治めるアーバイン領の中にあること、そして長男と長女は王都の学校に通っていて王都の屋敷にいるらしいことがわかった。
 アスランは自分が望んだ転生条件が叶えられたことに喜び、心の中で神に感謝する。
 そんなアスランの様子を見ながらアデールが彼に尋ねてきた。

「今日は宝珠の儀だが、緊張しているか?」
(そうか、スキルをもらえる宝珠の儀があるのは今日なのか)

 そこで、ちょうどいいタイミングで記憶が戻るように調整すると神が転生間際まぎわに言っていたことを思い出した。
 ついでに、この世界にどんなスキルがあるか気になったアスランは、五歳児っぽく尋ねる。

「きんちょうってのはわからないけど、ドキドキしてるよ。ちなみに、みんなはなにをもらったの?」

 最初にアデールが答える。

「私は《槍術(中)》と《腕力強化(中)》だな」
「それってすごいの?」

 アスランの問いに、アデールは胸を張る。

「とても珍しいスキルというわけではないが、スキル同士の相性がいいからここら辺の魔物には負けないぞ」

 アデールのとなりで、母のアドリーヌは微笑んでいた。

「僕は《火魔法(中)》だよ」

 続いてベルトが元気よく答え、そこにアドリーヌが付け加えた。

「私は《火魔法(弱)》と《裁縫さいほう(中)》を持っているわ」
「おしえてくれてありがとう!」

 そんな会話をしながら、アスランはアデール達からスキルについて教えてもらう。
 固有スキル自体は最低一つは宝珠の儀で授かることができるが、それ以外では取得できない。三つも授かる人間は相当珍しく、一国に一人いるかどうからしい。
 通常のスキルであればその後の頑張りによって自力で覚えたり、お金はかかるがスキルスクロールというアイテムを使用したりして手に入れることができる。
 他にも固有スキルの弱、中、強やレベルについて聞いたが、その辺は神が転生前に言っていたことと同じだった。
 アスランが両親から色々聞いているうちに食事が終わり、気付けば宝珠の儀へ行く時間になっていた。
 家族とともに支度じたくを整え、教会へ向かう準備をする。

「それじゃあアスラン、行くぞ」
「はぁい」

 両親とメイドとともに馬車に乗ったアスランは、教会に向かう途中に街の様子を窓から見た。
 そこには西洋風の建物が並んでおり、綺麗きれいな街並みが広がっていた。
 実は拓美の転生より前から、この世界には転生者が存在しており、少しずつではあるが既に拓美がいた世界の知識が広まっているのだ。
 もとの世界と比べると雲泥うんでいの差であることは間違いないが、それでも小説で読んだような知識チートを披露ひろうする機会は少ないだろうと思い、アスランは苦笑いをするのであった。


 馬車を降りると、目の前には荘厳そうごんな建物があった。
 教会の入り口にいる修道服の女性にアデールが話しかけると、女性はすぐに二人を司教の前に案内する。
 教会の奥にある小部屋に着くと、アデールは目の前の男性に挨拶した後、アスランに声をかけた。

「お前もダーヴェル司教にご挨拶しなさい」
「アスラン・アーバインです。本日はよろしくお願いします」

 アスランはそう言って、頭を下げた。
 アデールはいつもより大人っぽいアスランの喋り方に目を丸くし、ダーヴェル司教もまたアスランの落ち着いた振る舞いに驚きの表情を浮かべた。
 アスランは自らが五歳児の振りを忘れていたことに挨拶してから気付き、心の中でしまった、と思う。

(いけない。失礼がないよう挨拶しようと考えるあまり、丁寧な感じになってしまった)

 しばしの沈黙の後、ダーヴェル司教は一つ咳払いしてから、アスランに問いかける。

「アスラン様、私はダーヴェルと申します。よろしくお願いしますね。ところでアスラン様は宝珠の儀をご存知ですか?」

 今さら司教相手に子供の振りをしても手遅れだと悟ったアスランは、丁寧に答えることにした。

「神様からスキルをもらう儀式のようなものだと思っています」
「そうですね。エステア様という神様が、五歳になる子にスキルを宿してくれるのですよ。教会で儀式を行うことで、そのありがたみを伝える意味もございます」
「なるほど、そうだったのですね」
「では、さっそく宝珠の儀を行いますので、エステア様の像の前に行き、片膝をついてお祈りをしてください」

 転生する時に話した神様とは別の神様なのだろうかなどと考えつつ、アスランはダーヴェル司教の指示に従って、部屋の中央にある像の前へ向かう。
 そして片膝をついてお祈りを始めると、隣でダーヴェル司教が何やら唱え出した。

「神エステアよ、アスラン・アーバインに祝福の力を宿し、新たな道を示したまえ」

 司教の言葉の後に、まばゆい光がアスランを襲う。
 光はアスランの心臓部分に吸収されていった。

「お~、素晴らしい光だ」
「素敵な光ね」

 アデールや案内してくれた修道女がそんな光景を見て称賛の言葉を口にした。
 アスランが立ち上がると、司教が優しい笑顔を向けて尋ねる。

「アスラン様、スキルは手に入りましたかな? よければ、こちらの水晶すいしょうに手を当てて『ステータス』と唱えてください」

 アスランが言われるがままに水晶に手を触れると、半透明な板が目の前に表示された。


【名前】アスラン・アーバイン  【種族】人間族         【性別】男性 
【年齢】5歳          【称号】アーバイン子爵三男       【レベル】1
【体力】50/50       【魔力】20/20     
【能力適性】E         【身体適性】E-         【魔法適性】E+
【スキル】 なし
【固有スキル】 《アイテムBOX(強)Lv‌1》 《鑑定(強)Lv‌1》


 半透明の板の中身を視認できる人は特におらず、近くにいたアデールや司教を見ても、驚いた様子はなかった。

(表示されたステータスでわからないことはいくつかあるが、それは後で聞くとしよう)

 アスランはアデールのもとに戻ると、口を開く。

「無事にスキルをいただきました」
「そうか、それはよかった。では帰るとしよう。ダーヴェル司教、ご苦労であった」
「アデール子爵様、こちらこそ素敵な儀式に立ち会わせていただき、ありがとうございました」

 アスランも司教にお礼を言い、アデールの後ろを追いかけて馬車に乗る。
 馬車が動き始めると、アデールはアスランに声をかけた。

「アスラン、得たスキルは夕食の時に教えてくれ。スキルは大切なもの。ゆえに見知らぬ者に軽々しく教えたり、外で口にしたりしてはいけない」
「わかりました、父様」

 そんな話をしているうちに自宅に到着する。
 自分の部屋に戻ったアスランは、心の中で鑑定を自分に使ってみる。
 教会の時と同じように半透明な板が目の前に表示されたが、記載されていた内容はその時に見たものと違った。


【名前】アスラン・アーバイン  【種族】人間族         【性別】男性 
【年齢】5歳


 出てきたのはたった四項目のみで、それ以外は欄すら表示されない。

(あれ? これだけ? 《鑑定(強)》なのにこれしか見れないの?)

 少し考えても原因がわからず、とりあえずレベルのせいだろうと結論付けた。
 そして、アスランは他の事を考え始める。

(そういえば、教会で見たステータスに《吸収》の表示はなかったから、俺がお願いした通りちゃんと見えないようにしてくれたのだろう。あとは、俺以外に鑑定を持っている人がいたとして、その人に俺のスキルがバレないように偽装や隠蔽いんぺいみたいなスキルがほしいところだな)

 そんな風に考えながらベッドでくつろいでいると、メイドが夕食の準備ができたことを伝えにやって来た。
 広間に続く廊下を歩きながら、教会での一件で子供の振りを続けるのが難しいと考えたアスランは、ある程度普通に喋ろうと方針転換した。
 広間に入ると既にアスラン以外は座っており、一同はアスランを興味深そうに見ている。

「遅くなってすみません」
「気にしなくていい。皆楽しみで先に来ただけだ。それでは夕食をいただこう。神の恵みに感謝を」

 アデールに続いて皆が声を揃える。

「「「「神の恵みに感謝を」」」」

 前回の食事で言った記憶がないが、考え事に夢中で気付いていないだけだと思い、食卓に並ぶ肉料理に手を伸ばした。

「ところでアスラン、スキルは何を授かったんだ?」
「はい、父様。スキルは《アイテムBOX(強)》と《鑑定(強)》をいただきました」

 みんなビックリした顔でアスランを見る。

「どうされたのですか?」
「いや、なんでもない。強のスキルが二つと聞いてビックリしていたのだ」
「強ってどれくらい凄いんですか?」
「レベルについては宝珠の儀の前に話した通りだが、攻撃系のスキルなら最大までレベルを上げれば、騎士隊にだって太刀たちちできるんじゃないか?」

 それを聞いたアスランは、鑑定のスキルで表示が少なかったことを思い出して納得した。

(やっぱり、まだレベルが低いからあれしか見れなかったんだな)

 そう思いつつ、自身の能力が稀少価値の高いものと知り、アスランはテンションが上がるのだった。



   第2話 初めての魔法練習


 宝珠の儀が終わった翌日から、アスランは自室で勉学に励んでいた。
 まずはこの国の常識を理解しようと考えたのだ。
 毎日、アスランの世話を担当している獣人族のメイドが書物を片手に色々と教えてくれている。

「アスラン様、この王国の名前はリベリア王国ですよ。わかりましたか?」
「この国はリベリア王国で、王都から東に馬車で十日ほど行くと僕が住むアーバイン領があるんだね」

 初めて獣人族を見た時は、アスランも衝撃を受けたが、すぐに自分が異世界にいるという実感へと変わり、感激した。それと同時に耳や尻尾を触りたくなる気持ちがいたが、ぐっと我慢した。
 獣人の子供や奴隷どれいならいざ知らず、大人の獣人族の女性の耳や尻尾を触るのは失礼にあたるのだ。

「あ~、本当に触りたい」

 そんな葛藤かっとうを覚えながらリベリア王国やこの世界全体の常識について学んでいるうちに、およそ半年の月日が経っていた。
 前世の拓美の記憶があるアスランはその間に一般的な知識をほとんど吸収できた。
 そんなアスランの姿を、両親は天才だとたたえている。
 勉強した内容を復習すると、転生前の知識と通じる部分が多いことがわかった。
 例えば、数字は微妙に違うところもあるが、おおむね日本と同じだ。
 一日は二十四時間。週は風・火・水・土・闇・光の六日からなり、月は三十日。一年は十二ヵ月月で三百六十日であった。
 お金に関しては、グルドという通貨単位が使われている。この国の一グルドが日本の一円にあたる。ただ、一グルド単位での支払いがないため貨幣の最低単位は鉄貨の十グルドとなっている。
 それ以降は、半銅貨が五十グルド、銅貨が百グルド、半銀貨が五百グルドというように価値が上がっていく。一番高価な白金貨は百万グルドだ。
 長さや重さの単位は名称は違っても基準は同じで覚えやすかった。
 その他にも文字や言葉、一般的な常識や歴史を学ぶことができている。
 こうしてアスランは本来なら学園に入ってから学ぶような知識まで、あっという間に習得していくのだった。

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