メクレロ!

ふしかのとう

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第五章 四角三角

第9話

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 「だ。」

 「だ?」

 「め。」

 「じゃない?」

 「です。じゃないは入らないの。駄目です。」

 「なんでよ!?」

 「なんでも何も、もうそういうことしないって決めたから。」

 「あのブルちゃんが可愛く悶えるところ、見たくないの?どんな声で鳴くのか、聞きたくないの?」

 「…大丈夫。」

 「ほらミコちゃん!あと一歩よ?」

 「悪いけど、私もタキ君と同じ意見よ?もうそんなことしないってオリア、あんたの件で懲りたの。」

 「ほら、オイちゃんも諦めて?」

 「で、でも、そしたらブルちゃんが可哀想だよ!4番目にしてあげようよ!」

 「そうなったら、オイちゃんの分はブルゼットになるからね?」

 「ちょっとくらい良いもん。私は1人長いから後でたっぷりして貰うし。」

 「でも、ブルゼットは流石にまだ若いし、マキちゃんやオイちゃんみたいに、どうにもならない事情がある訳じゃないから。」

 「タキちゃん?それは聞き捨てならないかな?女の子にとっての恋は、どんなことよりも大事なことなの。充分、どうにもならない事情だよ。ミコちゃんはそう思わないの?」

 「それはまぁ、解るけど…でも、だからと言ってお仕置きをするのは間違ってるわ。そもそもブルゼットちゃんは何も悪い事してないし。」

 「履いてないのにスカート捲ってタキちゃんに見せた。それになんか、ちゅうしてとか甘えてた。そういえば、ブルちゃんのあれ、なんなの?」

 聞き流してたのに…。

 ブルゼットはデビイに聞いたんだろう。

 もう一人、ちゅうしての真相を知る人物は、静かに窓の外を見ていた。

 「デビイって、うちの犬だったんですけど、前にその子が女の子になってタキさんのところにお邪魔したんです。それでデビイが、そういう風に言えばほっぺたにちゅうして貰えるよって教えてくれたんです。」

 「ふぅん…女の子になったっていうのが意味わかんないし、その子のせいで私が驚かれなかったのとかは置いておいて…とりあえずタキちゃん、ちゅうして?」

 「しません。」

 「なんでよ!?デビイちゃんにはしたんでしょ?ミコちゃんも、ほっぺたなら良いでしょ?」

 「まぁ良いけど、デビイはね?タキ君のことを大好きなのに私がいるからって遠慮して、我慢するって言ってくれたの。お義母様に言われててもね。偉いわ。そんなだから、ほっぺたなら良いよって。」

 「くっ、私が犬より待ての出来ない子みたいだ…。」


 「でも、デビイが折角教えてくれたのに…。」

 デビイを出されると弱い…。

 あの純粋なデビイが大好きなブルゼットにも喜んで欲しいと思って教えたのだろう。それなのに、駄目だったなんて聞いたらデビイはがっかりするだろう。

 デビイのそんな顔…。

 「…ほっぺたで良い?」

 「…ほっぺたも良いけど…。」

 「うん?」

 「その、おでこが良いなって。」

 「…ミコ?良い?」

 「…しょうがないじゃない。してあげて?」

 ミコもデビイには弱い。

 「それじゃタキさん。ちゅうして?」

 …ブルゼットの切り揃えられた前髪を撫で上げて、綺麗な額にそっと口付けた。

 「えへへ…。」

 「はは…なんか照れるね。」

 「おい。なんかおかしくないか?」

 「あははオイちゃんが、おい、だってあはは。」

 「いやいや!なんでデビイちゃんとブルちゃんは良くて、私は駄目なのよ!」

 「オリアは2番目でしょ?我慢なさい。」

 「いやいや!なんでえっちが良くて、ほっぺたにちゅうが駄目なのよ!?そんなの、愛の無いえっちみたいじゃん!」

 「元々子作りなだけでしょうが!そういえば、魔族は子供を作りたい時に作れるってチウンさんが言ってたわ。あんたもマキも、愛の無いえっち1回で済むわね。」

 「はぁ!?1回とか聞いてないんですけど!?」

 何回もするなんて言ってねぇ。

 「あの…2番目とか4番目とかって何ですか?」

 「ん?ああ、魔族は奥さん以外にも他所の女の子と子供を作っても良いって話があって、私が2番目っていうのはミコちゃんの次にってこと。」

 「てことは、3番目の人もいるんですか?」

 「うん。その子はブルちゃんと同じ人間。あ、言ってなかったけど私はドワーフなの。」

 「私と同じ人間…。」

 「うん。だから、もしブルちゃんが望むなら4番目ってこと。どう?タキちゃんの子供欲しくない?確かに16歳は若いけど、恋が叶うんだよ?」

 「でも、ミックさんは私がそうなることは良くないと思ってるみたいですし、あまり良い気分じゃないと思います。私はタキさんのこと…まだ好きですけど、ミックさんが駄目って言うなら駄目だと思います。」



 「タキ君、私なんか泣きそう。」

 「なんでかな、俺もだ。」



 「ふぅん。好きでも諦めるってこと?」

 「…はい。」

 「…タキちゃんが良いって言っても?」

 「ミックさんが駄目なら駄目だと思います。」

 「ぐすっ、タキちゃんが、どうしてもえっちしたいって言っても?」

 「お断りします。」

 「ううわあああんミコちゃあああん!ブルちゃんを4番にしてあげでぇぇぇ!」

 「うん…うん!ブルゼットちゃんさえ良ければ、私のことなんて気にしないで!」

 「…良いんですか?」

 「ぐすっ、ええ!全然構わないわ!」

 「でも、そしたらデビイが…。」

 「デビイちゃんも一緒で良いわよ!ね、ミコちゃん!」

 「勿論!…はぁ、まったく!タキ君より年下の子達はこんなにも良い子達なのに、年上組ときたら!ふふっ。」

 「えへへごめんごめん。でも、反省しました!お仕置きはちょっとの間、我慢します!」

 「あら、偉いわ!うふふっ。」

 ブルゼットの真っ直ぐな心の、あまりの眩しさにオイちゃんが改心した。でもやっぱり4番目になっちゃったじゃん。大丈夫かな…。

 「あの…お仕置きって何ですか?」

 「ブルちゃんみたいな良い子には関係無い話だから、気にしないで?」

 「そうよ。あんなの、お仕置きでも何でもないんだから。さっ、解いてあげる。怖かったでしょ?」

 「…タキさん、お仕置きして?」

 「えっ?」

 「えっ?」

 「えっ?」

 「タキさん?駄目なの?」

 「ブルゼット?何言ってるの?」

 「タキさんがしてくれるんでしょ?お仕置きじゃないなら良いことなのかなって。」

 「い、良いことなんて、ねぇ?ミコちゃん。」

 「そ、そうよ!あんな、あんな酷いこと、ねぇ?」

 「タキさん?お仕置き。ね?駄目?」

 くそぅ、おねだりが可愛い…。

 「…ちょっとだけだぞ?」

 「ちょっとタキ君!?」

 「タキちゃん!?」

 「だって、あんなにお願いされたら…。」

 「ブルちゃんが可愛いからだ。」

 「浮気だ。」

 「ち、違うって!」

 「前は可愛いって言ってくれたのに…。」

 「…今も可愛いけど。」

 「やった、えへへ…。」

 「浮気だ。」

 「浮気だ。」

 「違うって!ほ、ほら、ブルゼットって妹みたいっていうか、そういう可愛いであって…。」

 「私のこと妹みたいって思ってたんだ!?そうなの?だから駄目なの?」

 「いや、そういう訳じゃないけど…。」

 「じゃあお仕置き。ね?お願い。」

 「う…。」



 「…ねぇミコちゃん?あの子もしかして、入れたら駄目だったんじゃないの?」

 「…考えてみれば、タキ君の周りってリズ以外皆年上だわね。タキ君は年下に弱いのかしら?」

 「あの調子でおねだりしてたら、気付いたら一緒に寝てたなんてことに…。」

 「こ、怖いこと言わないでよ!でも、あの子押しが強いし、行動力もあるし、優しいし、綺麗だし、可愛いし、スタイル良いし、若いし、良い子だし…あれ?」

 「ミコちゃんて奥手だよね?」

 「まぁ、ぐいぐいって感じじゃないけど…。」

 「行動力は?」

 「恥ずかしながら、流されることも多いわね。」

 「ミコちゃんはホントに優しいけど、偶に意地悪な時がある!」

 「つい悪乗りしちゃう時も…。」

 「ミコちゃんはすっごく可愛いけど、綺麗かって言われると…。」

 「そういえばタキ君はいつも、可愛いとは言ってくれるけど…。」

 「ミコちゃんは細いけど…。」

 「背!背は普通だから!」

 「何歳だっけ?」

 「よんじゅうさんさいになります…。」

 「ミコちゃんは良い子だよ!ミコちゃんも、だけど…。」

 「アリガト…。」

 「ほ、ほら!髪型!ポニテ!タキちゃんのお気に入りでしょ?」

 「肩くらいまでのふわふわでやると、ちっちゃいしっぽがくるんとして可愛いのよね…。」

 「……私は比べないでね。」
 
 「……私も、やめて欲しかった。」

 「ごめん、つい…。」



 「タキさん?ちょっとだけでも良いから!ね?私にお仕置き、して?」

 ぐぬぬ、駄目って言わせない可愛さが…。

 ミコ達はなんか落ち込んでるし、断りたいのに断れない…待てよ?逆に、えっちなことだからって言えば、怖がって…そこで興味持たれたら終わりだ。だが、どのみちこのままだと押し負けるんだし、試す価値はある。筈。


 「ブルゼット、聞いて?」

 「うん?」

 「ミコ達の言ってるお仕置きっていうのは、本当は、とてもえっちなことなんだ。」

 「え?」

 ブルゼットの顔が赤くなる。

 良かった、これならいけそうだ。

 「えっちって言っても本当にえっちをする訳じゃないけど、やり過ぎると酷いことになるんだ。」

 「……。」

 「まだブルゼットは若いでしょ?大人でも耐えられないんだから、ブルゼットにそんなことするのは、あまり良くないと思うんだ。」

 「…じゃあ、タキさんが私に教えて?」

 全然いけませんでした。

 「いやいや、そういうことじゃなくて…ね?」

 「でも、他の人達がして貰ってるのに、私だけ駄目なんて…タキさんは私が4番目って認めてくれないの?」

 「そんなことは無いけど…ほら、ブルゼットはまだ若いし?」

 「若いから、タキさんが教えて?ね?タキさん以外じゃやだもん。ね?」

 「そう言われましても…。」

 「もう、やってあげたら?」

 「ミコ?」

 「そうよ。ミコちゃんの言う通りやってあげたら?ちょっとなんて言わずに、好きなだけ。」

 「…2人とも、ブルゼットも恥ずかしい目に合わせてやれとか思ってない?」

 「ぎくり。まさかそんな、いやねぇタキちゃんたら。」

 「そ、そうよ。若い頃は何事も経験よ。ねぇ?」

 完全にブルゼットを辱める気だ…。

 「恥ずかしい目に合うんですか?」

 「…ブルゼットちゃんがお仕置きに耐えられなかったらね。」

 「まぁ耐えられないと思うけど。」

 「そうですか…なら…。」

 「よし!やめよう!ね?」

 「タキちゃんは黙ってて!」

 「おふたりは耐えられなかったんですよね?」

 「まぁね。今は慣れたけど。」

 強がるミコ。

 「それじゃ、もし私が耐えたら、私の方が凄いってことですよね?」

 「それは凄いけど、ふふっ、ブルゼットちゃん?それはちょっと無理なんじゃないかなぁ?」

 「お仕置きを甘く見る。そんな時期が私にもありました。」

 「わかりました!私、耐えます!」

 「いやいや、何を言ってるの!?」

 「うふふ。私、意外と負けず嫌いなんですよ?」

 「ブルちゃん?ちょっと調子に乗り過ぎじゃない?私ももう慣れたけど、あなた酷いことになるわよ?」

 オイちゃんは1回酷いことになっただけじゃん。

 「耐えて見せます!もし耐えられなかったら…オリアさんもタキさんにちゅうして貰えるようにお願いしますから!」

 ブルゼットの賭けたものは16歳らしい、微笑ましくて可愛らしいものだった。他の3人だったら、大きく張って後で後悔するところだ。

 「…ほう?それは唇でも?」

 微笑ましいのが台無し。

 「駄目です。」

 「駄目です。」

 「ほっぺたです。タキさん、ミックさん。どうですか?」

 「俺はまぁ別にそれくらいなら…。」

 「私も構わないわよ?」

 「それでは、タキさん。お願いします。」

 「ちょっと待って!そんな、私だけなんて駄目!年下の子にそこまで言われて、私が何も出さないなんて、私がちっちゃい女みたいじゃん。そうね、ブルちゃんが耐えられたら、2番を譲るわ。」

 「オイちゃん?」

 「良いのよ、耐えられる訳ないし。私はのんびり歯を磨いてます。」

 やっぱり大きく張ったオイちゃん。なんでほっぺたなのに歯磨くのよ。

 でも、今回ばかりはオイちゃんが勝つんだろう。いやでも、こういうのは大概大きく張った方が負ける流れに…。

 「それじゃ私も。ブルゼットちゃんが耐えられたら、1番目…。」

 「ミコ!駄目だよ!今の流れは負けるやつだから!」

 「大丈夫よ、流石に今回はね。」

 「駄目だって!オイちゃんも前にそんなこと言って酷いことになったでしょ?それに、もうお仕置きはしないって言ったよね?」

 「本人がやりたいって言ってるけど?」

 「…ご自由にどうぞ。1番目を賭けたら例えミコが勝っても死ぬまで、もう2度とお仕置きしないからね。」

 「…もしブルゼットちゃんが耐えられたら1ヶ月お仕置きを我慢します…。」

 「惜しい。けどまだ駄目。」

 「…1週間我慢します。」

 「良く出来ました。」

 「あらん?ミコちゃんは随分弱気ねぇ?しかも、1週間って、ブルちゃんが泊まってる間よね?何も賭けてないのと一緒じゃなくて?」

 「オイちゃんはブルゼットが耐えられたら、向こう100年お仕置き無しも追加で。」

 「構わないわよ?その代わり、手を抜いたら左右両方と真ん中の足を貰うからね?」

 「解ってるよ。本気でやる。それじゃブルゼット、やるよ?」

 「や、優しくして下さいね?」

 「オイちゃん?ブルゼットもこう言ってるし…。」

 「折るわよ?」

 「悪いけど本気でいくからね?」

 「は、はい。思い切ってどうぞ…。」

 「駄目だったらすぐ降参してね…。」





 ーうふっ、やだタキさんくすぐったい、うふふっ、これがお仕置きなの?うふふっ、これなら全然大丈夫だけど、えっちだなんて言うからてっきり、あ、いえ、何でも無いデス…あはっ、デビイみたい、勿論犬のよ?うふふっ、あ、笑っちゃいけないのかな?…ぷすっ、んふっ、やっぱり駄目、全然耐えられませんでした……。



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