メクレロ!

ふしかのとう

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第四章 父と母

第15話

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 「よしよし。それじゃとりあえず、かんぱい。」

 「かんぱい…うん、どこから話そうか。」

 「もうね、どこからでも良いよ。」

 「それじゃ、こないだは話さなかったけどさ。」

 「うん。」

 「私は犬っていう女の子が家に来まして。」

 「なんか聞いたことあるな、それ。」

 「お前よく覚えてるな。俺は忘れてたぞ。」

 「猫じゃ駄目だったんだっけ?」

 「猫じゃ駄目だったらしい。」

 「ふぅん。なんで?」

 「犬だからだ。」

 「女の子が?」

 「そう。」

 「…女の子が犬?」

 「凄いよな。女の子が犬だぜ?」

 「そういう遊びしてたの?」

 「いや、本当に犬だった。」

 「お前が魔族だったとか、可愛いもんだな。」

 「しかも、それはデビイだった。」

 「デビイ?ブルゼットちゃんちの?」

 「そう。」

 「デビイは2回来たってこと?前と、こないだと。」

 「うん。前に俺が犬のデビイを治したらしくて、そのお礼を言いたかったらしいんだけど、前は俺が聞かなかったから、また来たんだそうだ。」

 「礼儀正しい犬だな。」

 「ああ。それで、母さんが人間にしたらしい。」

 「お前の母ちゃん、滅茶苦茶だな。」

 「しかも母さんはデビイに、俺の子を産ませようとしてた。」

 「つくづく滅茶苦茶だな…お母さんは博士を気に入ってたんじゃなかったっけ?」

 「どうも、チウンさんの話だと、ミコのことを気に入ってるからそうしてるみたいなんだけどね。訳わからんだろ?」

 「訳わからんな。わからんのは酒が足りないのかもしれん。飲め飲め。」

 「お前も飲め飲め。まぁとにかくデビイがお礼を言いに来た。その際にカンジやブルゼットなんかにも、俺が魔族だと知れたんだが、カンジから手紙貰って、魔族でも気にしないからこれからも宜しくと。」

 「カンジは良いやつだな。俺もだけど。」

 「そうだな。ただブルゼットの方が、今のマキちゃんみたいになりかけた。」

 「デビイが良いなら私も、ってか?お前、もてもてだな。」

 「そっちはミコが手紙を書いたから大丈夫、だと思う…いや、やっぱり母さんがやっちまったかもしれん。マキちゃんのとこに行ったなら…。」

 「あり得るな。で?更に増えてるあのおっぱいちゃんは?」

 「俺の幼馴染みのオリアだ。ドワーフの26歳で、母さんと俺が居なくなってから、ずっと父さんと一緒に住んでたんだ。」

 「一緒に住んでた?お前の新しいお母さんってこと?」

 「違うんだが、そうなりたかったというか、まぁそんな感じ。」

 「なかなか複雑だな。でも、それがなんで姉ちゃんと張り合ってるの?」

 「色々あったんだけど、原因は全部母さんだわ。」

 「お前の母ちゃん、一言で言うと凄いな。他人事だから言えるけど。」

 「更に凄いことを言うと。」

 「言うと?」

 「母さんは俺との子供を欲しがってる。」

 「わーお。」

 「ただ、さっきも言った通り、母さんはミコが1番である点については認めてるらしいことは間違いないみたいなので…。」

 「確実ではないわけ?」

 「ぶっ飛んでるからな。」

 「ぶっ飛び母ちゃん。」

 「兎に角、ミコが1番なら、俺達は特に気にすることは無い。他の子達は、言ってみりゃ自己責任だろ?俺は断ってるし。」

 「まぁそうだな…で?親父さんは?」

 「あぁ、昨日の朝かな?亡くなったんだ。病気だったんだけど、オイちゃん、オリアね、オイちゃんが知らせてくれて、死ぬ前に会ってやってくれって。」

 「治すんじゃないんだ?まぁ、親父さんが断ったのか。」

 「うん、駄目だってさ。どうせ人間はすぐ死ぬんだからってさ。」

 「それはそうだけど…。」

 「俺もな、そう思って、行く前にお前に挨拶しようと思ったんだよ。もしかしたら父さんの気が変わって治してくれって言ったりするかなって。あと、俺が父さんの言う事無視して治すかもしれないってさ。」

 「来なかったじゃないの。」

 「ああ。オイちゃんは夜に来てうちに泊まったんだけど、その時にミコはオイちゃんと話したらしくて、そしたらミコも駄目だって。」

 「ふぅん。なんでだろうな?博士ならお前の意見に乗りそうだけど。」

 「俺もそう思ってたんだけど、駄目だってさ。ミコがそう言うならそうなのかなと思って…。」

 「お前もぶれないな。従順。」

 「好きだから仕方ない。兎に角、それでお前に挨拶しなかったんだけど、会って少し話したらさ、やっぱり俺も思ったんだよ。人間だしなって。」

 「お前とは違うからか。」

 「ああ。治してもどうせ、みたいに思っちゃったんだな。しみじみ、俺は魔族なんだって思ったわ。」

 「しょうがないかもな。確かに考えてみりゃ、俺はお前よりも遥かに先に死ぬ訳だ。」

 「俺の家の前にお前を祀るのは確実になってしまった。」

 「なんてこった…。」

 「更に、お前が禿げても俺はふさふさだ。」

 「更になんてこった…てことは、姉ちゃんがババアになっても、博士もオリアちゃんも若いのか。」

 「そうだな。ブルゼットはそれが嫌で俺を諦めたらしい。」

 「ババアになっても博士は若いんだもんな。ブルゼットちゃんがババアになった時に若く見える博士が言い寄ってきたら取られちゃうってか。それは確かに心配かもな。例えばリズがエルフとかで、俺が人間でって考えると…いや、俺はまぁ別に良いかな?」

 「そう?」

 「そんなこと気にして付き合わないとか諦めるとか、俺はしないな。今が一番よ。勿体無いじゃん。それに、俺より良い男は別にエルフや魔族でなくても沢山居るんだ。別に、リズが人間だから他の男に取られる心配が無い訳じゃ無いだろ?」

 「俺の父さんは、勿体無いんだわ。」

 「オリアちゃん?」

 「そう。処女のまま残したかったんだって。」

 「ふぅん。言っちゃ悪いけど、馬鹿だな。お前の母ちゃんは一緒に居なかったんだろ?そしたら、そんな風に思ってくれてたなら、俺ならあのおっぱい揉むね。」

 「俺も躊躇うことなく…。」

 「ふぅん。シン君はあの人のおっぱいが揉みたいんだ?タキさんも?」

 「俺はミコ一筋だよ。」

 「なっ!?タキ!?」

 「おれは、みこ、ひとすじだよ。」

 「シン君は違う、と?」

 「違うって!俺もリズ一筋だよ!タキてめぇ…。」

 「なんてね、ふふっ。ちょっと聞いてたから解ってるよ。私も、タキさんのお父さんは勿体無いって思うもん。私は女だから余計にそう思うけど。」

 「やっぱり、リズもそういう状況なら手を出して貰った方が良い?」

 「亡くなって、それからの時間は私にはちょっと想像出来ないけど、それからはそれからだよ。そりゃあ初めては好きな人と、それでその好きな人とはずっと一緒に居たいって思うけど、種族が違えば仕方ないかな。好きになったらしょうがないでしょ?」

 「それじゃさ、リズィちゃんがシンと付き合う前に、同じようにシンのこと好きな子がエルフだったりドワーフだったりしたらどう?」

 「え?…う~ん、それなら…う~ん、私は引いちゃうかな?例えばミコさんとかオリアさんが、ってことでしょ?将来不安になる気がする。そう考えるとマキさん凄いね。」

 リズィちゃんもブルゼットと同じ意見か。

 「姉ちゃんは馬鹿なだけだろ?」

 「もうシン君は!そんなのどうでも良いくらい好きなんでしょ?あとは、好きな人を信じられるかどうかかな?」

 「リズは俺のことを信用出来ないの?」

 「ううん、そんなことないよ。私は自分に自信無いから。おばさんになっても、勝てる自信ね。もしシン君がエルフとか魔族で長生きなら、私が死ぬまで待ってって相手の子にお願いすることは出来るけど、シン君は人間だから。」

 「ふぅん。種族が違うって難しいんだな。」

 「でも、それで上手くやってる人達も居るからやっぱり、好きになったらしょうがないのかもね。」

 「ま、俺達は人間同士、タキんとこは魔族とエルフで長生き同士、良かったな。」

 「そうだな。俺も最初はどうなることかと思ってたけど。」

 「思ってたようにはとても思えないが。」

 「なんか気にしてなかったのが変みたいに思われるんじゃないかと思って、つい嘘を吐いた。」

 「変だったぞ。」

 「お前それ今頃言うか?」

 「いや割と言ってただろうが。」

 「となると、お前の言うことを素直に聞いてたらミコと付き合えなかったのか。関係無いけど、となるとって点付けるとドナルドだな。」

 「誰だよドナルド。素直じゃなくて良かったな。」

 「ミコには素直だから良いよ。」

 「…タキさんは本当にミコさんのこと好きだよね。どこが好きとかあるの?」

 リズィちゃんが俺の後ろを見てから言う…ってことはミコ達がこっちに来るのかな?

 「ミコのどこが好き?100個以上言えるから時間掛かるけど、折角だから全部聞いて貰おうかな?とりあえず爪先から頭のてっぺんまで可愛いでしょ?今朝も寝起きでさ、頭のてっぺんの髪の毛がちょこっと立ってたんだけどそれすら可愛いんだぜ?今見えてない部分まで可愛いとか、あり得ないよね。寝起きと言えばこないだ寝てるところにさ…。」

 「ちょっとタキ君!?何の話!?」

 「ねちゅうして事件の話をしようかと…。」

 「ねちゅうして事件?」シン

 「ねちゅうして事件?」マキちゃん。

 「ねちゅうして事件?」オイちゃん。

 リズィちゃんはくすくす笑ってる。

 「なんでもないから!ね?ね?…タキ君はもう!もう!なんなの!?」

 「ミコの恋人だけど。ミコはなんなの?」

 「え?…なんなのって言われると私もまぁ、タキ君の恋人だけど。」

 「ミコ…。」

 「タキ君…。」

 「おい。タッ君とミコ、おい。」

 「ほら!やっぱり2人はラブラブなんだから、マキさんは諦めた方が良いよ!」

 「リズ!?まさかあんた…。」

 「やっぱり私は、そんな、2番目とか愛人みたいなのは変だと思うもん。」

 リズィちゃんが正論を言う。

 「性欲の権化みたいなリズに変って言われるなんて…。」

 「せ、性欲は関係無いでしょ!?私は、マキさんに変な人になって欲しくないの!」

 「姉ちゃんは元々変だぞ?」

 「はんっ!私は変じゃないわよ!」

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 「……。」

 「…私は変じゃないということで?」

 「違います…ミコ?マキちゃん、言うこと聞いてくれないの?」

 「うん…一応、私達にそういうつもりが無いってことは解ってくれてるんだけど…。」

 「私はミコちゃんの話、ちゃんと納得してるよ?ザラにお返しの件はどうしよっかな?ってくらいで、それはミコちゃんと決めるし。」

 オイちゃんは最初から解ってくれてるもんな。まぁ、オイちゃんのことはミコに任せるとして。

 「本妻はミコで、私は2番で良いよって言ってるの。だって、タッ君の記憶はちゃんと残ってるって言ってたもん。」

 俺の記憶が残ってる?

 「母さんがそう言ったの?」

 「なんかそうみたい。どういうことなのか、詳しくは言わなかったみたいなんだけど…。」

 「ふぅん。まぁ、残ってるって言われても取り出し方が解らなきゃ無いのと同じでしょ?」

 「違うわ。完全に消えたのと、タッ君の中に残ってるのとでは全然違う。今のタッ君は、私の好きだったタッ君を含みます。」

 「ふぅん…ミコの見解は?」

 「私は…もしタキ君の記憶が戻ったらって話をしたことがあるから、もしそうなったら、その時のタキ君に決めて貰うなら納得出来る…かも。」

 「かも?」

 「私も2番で良いって言うかも…。」

 「ミコずるい!そしたら、私が死んだら1番に繰り上がるじゃん!それに2番が有りってことでしょ!?それじゃ私が、今2番でも良いわね?」

 「2番って話なら私だってば!」

 「ぐぬぬ…タッ君てば、ちょっと目を離すとすぐに女増やすんだから!」

 「姉ちゃんに同意することがあるとは思わなかった。」

 「人聞きの悪い…それじゃさ、俺は2番も3番でも10番でも有りってことで良いね?」

 「タキ君!?」

 「俺とミコが結婚して、子供が産まれたら次って話でしょ?簡単じゃん。」

 「タキちゃん、ミコちゃんと結婚しないの?」

 「それはまぁいつかするよ。」

 「タッ君はミコとえっちしないの?」

 「それはまぁ今晩するよ。」

 「し、しません!」

 「ミコ?今晩しないの?それなら明日するの?」

 「し、しないよ!っていうか、今晩しますなんて言う訳ないでしょ!?」

 「タッ君がゆった。」

 「タキ君!もう!タキ君のせいなんだから、しないからね!」

 「え?ずっと?」

 「え?ええ、まぁ、ずっと…。」

 「ずぅっと、ずっと?」

 「まぁ、ずぅっとって訳じゃないけど…。」

 「しばらくって感じ?」

 「まぁ、しばらくと言えばしばらく…。」

 「キスは良いの?」

 「それはまぁ、キスだし…。」

 「挨拶みたいなもんだし?」

 「そうね、恋人にとっては挨拶…。」

 「恋人ならえっちするんじゃ?」

 「それはまぁ、そういうことになってもおかしくは無いというか…。」

 「俺はミコの恋人だよね?」

 「それはそうだけど…。」

 「ミコは?」

 「まぁタキ君の恋人だけど…。」

 「ミコは恋人がお腹減ってても無視する、と?」

 「そんなことはしないわ。私だってお腹減って…はっ!?しないから!」

 「惜しい。」

 「ミコちゃんちょろ過ぎ。」

 「今晩確実だわね。」

 「し、しないから!オリア?今日は家に泊まるんだもんね?お話しなきゃ!」

 「え~?私この空気やだ。」

 「ね?ほら、タキ君の小さい頃の話もまだあるでしょ?」

 「あ、それなら私も聞きたい!ミコ、私も良い?」

 「ももも勿論!」



 ミコが墓穴を掘った。
 
 くそぅ、その墓穴に俺も一緒に入ることになるとは!

 まぁ、母さんのことは気になるから、もう少し後でも…良かねぇよ!母さんのせいだぞ!今度会ったらビシッと言ってやる!



 ……なんて言おう?



 ……なんて言おう?

 





 ~~ 第四章 完 ~~
 
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