焼け石に無知

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『なんきん』

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「これはレイドリッヒ様、奇遇ですね。それとも人間関係に困って頼りに来ましたか?」

「人間関係に困り事はない。失せろ」

「では何か素晴らしい拾い物でも?お金になるならぜひ教えて頂きたいですね」

「最初からそれ目当てで来ているだろう。不愉快だ。拾い物は確かに素晴らしいがしばらく出すつもりは無い。忘れるんだな」

「承知しました~」

貼り付けた笑顔で退散していく女を見ながら、料理本を両手に抱えて、ふん、と鼻を鳴らした。
拾い物は、アランは素晴らしい。目で見た文章の暗記力が凄まじいのだ。単語をある程度読めるようになって一気に上達した。1度見た文章はほとんど頭に入っている。

これまでの人生で見てきた文章は覚えていないのか聞いたが、文字として認識せず絵柄として認識していたのであまり覚えていないらしい。
それでも素晴らしい。アランは金になる。

ーーーーー

「今日はパスタだ。それと、そろそろ肥えてきたな」

「やっぱり人肉を食べるのか?」

「食べるわけが無いだろう」

ガリガリだったのが、痩せている人ぐらいまでになった。そろそろ筋トレを始めさせてもいいだろう。
暗記力以外にも才能があるかもしれない。まずは運動だ。体力はあればあるだけいいものだしな。面倒で俺自身は運動などしていないが。

「美味しい」

「そうか」

目に見えて美味しさが変わる料理が、努力家であるラミ・レイドリッヒにとっての極める対象になるまで時間はかからなかったのは余談である。

美味しい、と言って微笑むアランに、何故か首筋のところがむずむずとした。


「明日からは部屋から出て運動をしてもらう。屋敷の外には出るなよ」

「今のおれは『なんきん』というものか?」

「確かにお前は軟禁状態だ。どの本に書いてあった?」

「これだ。『姫エーウェリカ』」

「絵本か……」

絵本で学習できるのは一部を除いて貴族の子供だけだ。軟禁などという言葉の入った絵本はどう考えても教育に悪いだろう。いや貴族にとってはいいのだろうか。常に誘拐などの危険にさらされている貴族の子供には。

「ラミ様はどうして俺に教育を受けさせてくれるんだ」

「勘だ。お前は金になるっていう勘、あと気まぐれだ。それ以外の何でもない」


ーーーーー

「ねえザラメ」

「なんでしょう社長」

「怖い話を聞きたい?」

「結構です」

「そう言わずに聞いてほしいことがあるのよ」

お団子ヘアを崩してメガネも取り髪を下ろしている美女───ラミ・レイドリッヒと本屋にて会い、追い払われ帰ってきた社長───サラ・ニューベリー。
秘書であるザラメにをしてもらい、目を瞑りながら喋り始める。

「あの男…多分、いいえおそらく、幼児を囲っているわ」

「なぜそう思ったんです」

「絵本を買っていたのよ!あの男が自分で読むわけないでしょう?しかも買った絵本はどこかに寄付することも無く屋敷に持って帰っていたわ。しかもよ、『胃袋を掴む料理集』『好意を持たせるレシピ』とかそういう本まで買っていたのよ!もうゾワッと鳥肌が立ったわ」

「事案ですね」

「そうよ、でもあの男がいなくては金が稼げない……ジレンマだわ。通報は出来ないの、あなたに貢ぎたいから」

「そうですか」

「その幼児には可哀想だけれどね。金にしか興味が無い男かと思っていたら、金と幼児に興味のあるクソ野郎だったわけ」

そこまで言い終えると、サラはザラメの顔に手を伸ばして、むにむにとさわる。



「社長、あなただって人のこと言えませんよ」

「ええ、そうね。好きな女の子の故郷を燃やして、自分に依存させているんだもの。そんな私は嫌い?」

「いいえ、そんなあなたを愛してます」




閑話休題

ーーーーー

「?……心外な噂をされている気がしたぞ」

ぶる、と体を震わせたラミ・レイドリッヒ。

「噂ごとき、いつものことだがな…」
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