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1歩ずつの恋
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「ライ、少し話があるんですが、いいですか?」
「ん?何だ?」
「…どうして、一緒にいてくれるんですか」
「いきなりどーしたよ?」
「何となくですよ」
出会ったばかりの頃と比べると、随分と表情が豊かになったルーン。
それだけ心を開いてくれたのだと思うと嬉しくて、少し不安そうな顔をして聞いてくるのがおかしくて、つい笑ってしまう。
それを見て不思議そうな顔をしたルーンに向かって手を伸ばして、髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「んー…俺はさ、来たばっかりの頃死にたいって思ってただろ?ホントに、色々絶望しきってて諦めようとしてたんだ」
最初は無表情で、自殺と聞いても死体の処理が嫌だとだけ答えていたルーンが、今や自殺と聞くとイラついた顔を隠さなくなった。
それでいて、手は強く握りしめられているし、瞳の奥には焦った色が見える。
そんな表情を見てしまったら、生きたいと思ってしまう。
「でも、お前はずっと近くにいてくれたから、俺は生きてるし前を向けた。…言ってて恥ずかしいけど、感謝してんだ。それと、お前と一緒にいたいのは俺のワガママなんだよ」
自分で思う最大の悪人顔でルーンに笑いかけると、心底嬉しそうな顔で微笑まれて。
俺の心臓らへんが、ギュッとなった。
ルーンといると、心臓がバクバクとなって、苦しくなるのに、それでも近くにいたいし離れたくない。
これが何なのかは、もう大体予想がついてるし、多分俺たちは同じ気持ちを持っているけれど、まだちゃんと伝えれてはいない。
じゃなきゃ、月が綺麗です、なんて回りくどい言い方なんてしない。
それでも抱きしめ合うのは拒絶されないし(むしろ喜ばれるのが嬉しい)、今まで誰からも貰うことなくあげることもなかった愛情とやらを二人で交換している。
ーーーそれは共依存、なのかもしれない。
愛されなかった者同士、今までの不幸を埋めようとしているだけなのかもしれない。
けれど、そんな関係でも俺はルーンと一緒にいられるなら、何だっていい。
「…ライ。私も、あなたと一緒にいたいと思ってますよ。あなたがここに来てくれてよかった」
手を引かれて、手を握りつつ隣に座る。
横を見ると、整った顔が俺の事の方を向いて、優しい笑顔を見せてくれるのだ。
ああ、それはずるい。
これ以上好きになったら、離れられなくなってしまうのに。
(もっともっと、近づきたい)
「ん?何だ?」
「…どうして、一緒にいてくれるんですか」
「いきなりどーしたよ?」
「何となくですよ」
出会ったばかりの頃と比べると、随分と表情が豊かになったルーン。
それだけ心を開いてくれたのだと思うと嬉しくて、少し不安そうな顔をして聞いてくるのがおかしくて、つい笑ってしまう。
それを見て不思議そうな顔をしたルーンに向かって手を伸ばして、髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「んー…俺はさ、来たばっかりの頃死にたいって思ってただろ?ホントに、色々絶望しきってて諦めようとしてたんだ」
最初は無表情で、自殺と聞いても死体の処理が嫌だとだけ答えていたルーンが、今や自殺と聞くとイラついた顔を隠さなくなった。
それでいて、手は強く握りしめられているし、瞳の奥には焦った色が見える。
そんな表情を見てしまったら、生きたいと思ってしまう。
「でも、お前はずっと近くにいてくれたから、俺は生きてるし前を向けた。…言ってて恥ずかしいけど、感謝してんだ。それと、お前と一緒にいたいのは俺のワガママなんだよ」
自分で思う最大の悪人顔でルーンに笑いかけると、心底嬉しそうな顔で微笑まれて。
俺の心臓らへんが、ギュッとなった。
ルーンといると、心臓がバクバクとなって、苦しくなるのに、それでも近くにいたいし離れたくない。
これが何なのかは、もう大体予想がついてるし、多分俺たちは同じ気持ちを持っているけれど、まだちゃんと伝えれてはいない。
じゃなきゃ、月が綺麗です、なんて回りくどい言い方なんてしない。
それでも抱きしめ合うのは拒絶されないし(むしろ喜ばれるのが嬉しい)、今まで誰からも貰うことなくあげることもなかった愛情とやらを二人で交換している。
ーーーそれは共依存、なのかもしれない。
愛されなかった者同士、今までの不幸を埋めようとしているだけなのかもしれない。
けれど、そんな関係でも俺はルーンと一緒にいられるなら、何だっていい。
「…ライ。私も、あなたと一緒にいたいと思ってますよ。あなたがここに来てくれてよかった」
手を引かれて、手を握りつつ隣に座る。
横を見ると、整った顔が俺の事の方を向いて、優しい笑顔を見せてくれるのだ。
ああ、それはずるい。
これ以上好きになったら、離れられなくなってしまうのに。
(もっともっと、近づきたい)
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