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隠し章

いつかの

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「左様か。」




気が付くと、私は膝枕をされていた。

見下ろすのは、いつしかの黒いローブの少女。
星空を背に、ただ印象的な紅い瞳で。

「え…?」


夢幻ゆめまぼろしじゃ、一切合切な。」


「え…?
 どこから…?」

その言葉に、少女はそっと手を添え私の顔を横向ける。
そこには地面に横たわる三人の兵士と、主を失った馬車。

「あの…」

「混乱するのも無理はない。
 しかしの、その方が刺されて死にそうだったのは現実じゃ。
 我はちょうど小間使いが欲しかった、そしてその方は死にたくないと叫んだ。
 ま、利害の一致というやつじゃの。」

上半身を起こす。
夜着には剣によると思われる穴が複数空いていて、血が染みわたっていた。

しかし、それに見合う痛みなど全く無かった。

「可能性の一つじゃ。」

その少女は言った。

「もうこの国は崩壊する、それは我にも止められぬ。
 そうならぬよう散々忠告はしたのじゃが、まぁ代を重ねれば建国の精神も苦労も忘れ去られるものじゃの。」

一拍。

「その方が一人で行くというのなら、今度こそ我は止めぬ。
 ただ、死を拒絶し吸血鬼の従者となったその方が行く道は、結局は独りじゃ。
 たとえその美貌や性技で権力者に取り入ろうが、見た幻のごとくどこかで家庭を築こうがの。」





今一度だけ最後に問う、と言われた。




我に従い、我と来るか、と。
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