とある侯爵家が滅亡するまでの物語

レイちゃん

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隠し章

いつかの悪夢

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屋敷では大臣担当の侍女と紹介されたが、まぁ愛人枠なのは公然の秘密だった。

大臣は月に何度かしかおらず、そして侍女の仕事は見様見真似だった。
まぁ娼館でそれなりに勉強はしたので、大臣の愛人だとふんぞり返るような真似はしなかった。
奴隷らしく謙虚に接していれば、周囲はまぁそれなりの対応はしてくれる。

とはいえ暇だったので、とりあえず奥様の浮気相手が色目を使ってきたので乗ってみた。
奥様にバレて呼び出されたので、逆に誘惑してベッドで軽く失神させてみた。
屋敷の主である夫婦のバックグラウンドを得れば、まぁ後は敵なしだった。
そうこうしていたら長男に私室へ連れ込まれたので、お相手した。
ついでに次男に女を教えてあげ、おまけに長女も食べた。
その頃には使用人の何人かとも関係を持っていた。
純粋な恋愛相談から気になる人の落とし方、果ては夫婦のマンネリ解消まで。
とりあえず兵士や侍女で、性に興味を持っている童貞や処女はだいたい食べた。
侍女部屋にいた10人を一晩で全員抱いたこともあるし、使用人同士で結婚した両方のが私なんてこともあった。
そして一年が経つ頃には、ほぼ全員と関係があった。




まぁそこそこ上手くやっていたと思う。
「私をめぐって刃傷沙汰」などという醜聞を起こさないよう注意していたし、そういうリスクのある人とは寝なかった。
ただ、娼館のお姉さま方に言わせれば、完全な私の油断なのだろう。

ある夜、大臣をベッドで散々ゼーゼー言わせた後、私を腕枕しながらその大臣がついポロリと漏らした言葉。
極秘裏に進めているクーデター計画、その存在。
そういった話は寝ているふりでやり過ごすのが鉄則。
なのに、その時に限って相槌を打ってしまった。
うっかり漏らしたことに気づいた大臣の顔が真っ青になり、私の顔もまた真っ青になった。
夜中にも関わらず大臣は兵士を呼び寄せると、私を都の外で殺すように言いつけた。




縛られて馬車に放り込まれ、そのまま月明かりの中をひた走り。
どれくらい走ったか、近くに民家のないあたりで馬車は止まった。
気が付けば全員私と寝たことのある兵士ばかりだったが、それで役目も何もかもを捨てて私と逃げる覚悟など彼らにあるはずもなく。
そして街道の脇に捨てられると剣で刺された。




私は死んだと思った。
実際に兵士はそう命じられていた。
いくら関係があったとしても、それで私を逃がすほどの度胸も義理もないはずだった。

しかし、現実として私は生きていた。
既に兵士も馬車も見当たらず、そこにいたのは黒いローブを羽織った一人の少女。
私よりも年下の少女が、この夜中の町はずれでたった一人。
その不自然な少女は、不思議なことを言った。
私は死んだのだと。
しかし、それを蘇らせたのだと。
退屈だったし身の回りの世話をする者を欲していたと。

来るか、と尋ねられた。
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