どうしてこうなった

レイちゃん

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エピローグ

帝国の

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「どうしてこうなった…」

帝国ボン伯爵家の当主サーフは、答えの出ない疑問を口にした。
彼こそが王国侵攻軍の現場指揮官である。

これまで何度も侵略を繰り返し、それなりに結果も出してきた。
経費は帝国持ち、奪った物資の半分は侵攻軍の家々で分配、非常においしい仕事であった。
しかも王国内に放った密偵からは、ベガドリア男爵は

”王宮で何か失態をやらかしたが法的な処分等が難しい、そのような貴族を合法的かつ穏便に死罪にする手段”

と報告されていた。
だからこそ、今まで毎回ウォーミングアップ代わりに孤立無援の男爵兵を蹴散らしていた。

「それが今回は何だ…あんな少人数に…
 こちらは伯爵家に子爵2家、男爵3家の連合軍1万だぞ。」

進撃ラッパと同時に突撃、蹂躙、いつもと変わらぬ王国との初戦。

なのに開戦と同時に騎兵隊がことごとく死に、地面がさく裂し、歩兵隊が宙を舞い。
絶えず地面が爆発し退路を断たれ。
そして敵陣から、鉄の筒を持った少年兵の集団が現れ。

『武器を捨て跪け!投降しろ!
 指揮官は戦闘中止を下命しろ!』

取り囲む人込みから弓兵がボウガンを放ち、少年兵の胸を捉え。
重装歩兵の鎧すら貫く矢を、まるで軽装歩兵のような鎧が弾き飛ばし。

『弓兵だ!2時の方向、距離30!
 グレネードランチャー!』

集団の一人が抱えた太めの筒が火を噴き。
矢を放った弓兵のいた一角は、周囲の近衛兵や軍馬も纏めて吹き飛び。

『最終警告!
 これ以上の敵対行為には総力で反撃する!
 指揮官は投降か虐殺か選べ!』

こう言われて選択の余地などなかった。
逃げようにも、戦闘開始直後から周囲の地面が謎の爆発を起こし続け。
敵前逃亡を図った兵士のほとんどは吹き飛ぶか、雨のごとく降ってきた鉄の矢で走れなくなった。

そして。
連行された先にいた、ベガドリア男爵を名乗る小娘は。


『あなた方は国際法に従い、生存者は私が管理する捕虜となりました。
 しかしお恥ずかしいことに、貧しい私は全員を適切に管理できません。
 なので負傷者を含め全員を奴隷として売り払います。』


悪魔みたいなことを口にした。
王国と帝国を行き来するアファーム商会に売るらしい。
帝国兵どころか、商会主も愕然としていたが。
ただ徴募兵や一般兵は金貨数枚から十数枚程度らしいので、帝国領に帰れば家族が買い戻すだろう。
蓄えがない者も友人から借金すれば奴隷商に支払って自由になれるだろう。

が。


『は?
 貴族は別ですよ。
 全員で金貨5万枚、それが身代金です。
 侵略のおかげで領土が荒れ果ててしまって、復興にお金がかかるんです。』


「国王に頼めよ、そんなことは!」

男爵の言葉に、サーフは牢で独り叫ぶ。
いや分かっている。
復興に助力してくれるなら、そもそも戦死確定な地へなど送られない。
男爵領に大軍を駐留させ、侵略そのものを防ぐはずだ。

(だが、5万だと…)

払えるわけがない。
経費は帝国持ちとはいえ、死傷者家族への弔慰金や見舞金は貴族の負担だ。
更に領軍に多大な損害が出ており、軍馬や装具の調達から軍再編まで多額の負担がのしかかる。
領内の税率を増やしても赤字覚悟なのに、ここへ金貨5万枚が伸し掛かると地方経済が破綻する。

(そもそも、分かるだろう!
 帝国の金貨1枚と王国の1ゴールドは、等価。
 5万ゴールドなど公爵か辺境伯の予算だろう!?)

同行の伯爵と男爵の身代金が同額というわけにはいかない、それはメンツが許さない。
サーフの負担は1万枚前後になるだろうが、そんな蓄えなど無い。


『いくらアファーム商会が大手でも、金貨5万枚なんて一度に用立てできないらしいですからね。
 ですので、出来るだけ早く直接支払って帰ってください。
 家令あたりに伝令させて皇帝陛下にお願いすれば、5万枚くらい立て替えてくれるでしょう。』


サーフが戦った小娘は、悪魔をも超えた何からしい。
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