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エピローグ~記すべき、いくつかの話~
ミュー 少し後
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「じゃあ、行ってきます。」
返事のない家の奥に声をかけ、ドアを閉める。
ちょうど隣の家からジェニスが出てきたので、挨拶を交わすと一緒に歩き出す。
「どうしたの、眠そうね。」
半分寝ぼけたような表情であくびをかみ殺すジェニスに声をかける。
「今日は任務なのに、彼が遅くまで寝かせてくれなくて…」
「そう…新婚1か月だと、お盛んね。」
「誰のせいだと思ってるんですかぁ…」
ジェニスは眠そうな顔を向ける。
「昨日ミューさんの声、凄かったですよ…
二人でまったりしている時に背後からあんなの聞かされたら、そりゃ彼も興奮しますよ。」
「あら、それはごめんなさい…」
とんでもない藪蛇に、顔を背ける。
「他人様のエッチをとやかく言いませんけど、キューってもう大分大きいですよね。
胎教的に、いいんですか?」
「知らないわよ…そのキューが旦那をけしかけるんだもの。
でもまぁキューは激しいことしていないし、お腹の赤ちゃんも元気だってお医者様も言ってるわ。」
とはいえ。
普段は優しくて家族思いな二人なのに、ベッドだと私のお願いなんか全く聞かない。
キューは容赦なく私の理性を引きはがして羞恥心を鷲掴みにし、そんな私の姿に彼は興奮し。
1回や2回くらいじゃ全然許してくれない。
とはいえ私が望んだ結婚の形だし、私が本当に嫌がることは絶対にしないので文句は言えない。
おそらくキューは無意識のうちに嫉妬心とか独占欲を抱いているのだろう。
その対象が、相手が実の姉とはいえ、自分以外の人を抱く旦那に対してなのか。
それとも、相手が自分の旦那とはいえ、自分以外の人に抱かれる私に対してなのか。
「ところで…いつもあんなに激しいんですか?」
「…あなたの彼が二人になって、一緒になって攻められたら?」
その言葉に苦笑いを浮かべるジェニス。
「良かったですね、私たちの家だけ周りから距離があって…」
「あんなの他の人とか、間違ってもお母さんになんか聞かせられないわよ…」
正直、求められれば素直に嬉しいし、睦言を聞きながら腕の中で微睡むのも好きだ。
なのだが。
「愛されているのは嬉しいですけど…捧げた愛が数倍になって返ってくるんですが…」
「1年前は何も知らなかったのに、あの二人は一体どこで覚えるのやら…」
揃ってため息をつく。
「おはよう、二人とも。」
村の中心部を過ぎた辺りで、洗濯物を干す母と会った。
手伝っていたニューも柵を潜り、私の尾に抱きついてくる。
そんなニューの頭を撫でる。
「もう二人は起きてる?」
「二度寝していたわ。
1時間もすれば起きると思う。」
「そう、じゃあその頃に行ってみるわ。
スープ作ったから。」
母の食事を食べ損ねたのは残念だけど、そうも言っていられない。
「そうそう、ちょっと待って。
領館に行くのよね。」
そう言いながら母は家へ入ると、布で包まれた絵画を持ってくる。
「これをお納めしておいて。
大きいのは、あと数日かかると思うから。」
「分かった。」
その後いくつか言葉を交わすと、ニューの尾を撫でてじゃれていたジェニスを引きはがして再び歩き始める。
アラスタ様が創造した、パステルやポスカラと呼ばれる新たな画材。
それを使った母の絵画は王都でちょっとした話題となっている。
亜人をよく思わない貴族には売れないものの、気にしない平民にはよく売れているようで。
母の手元には毎月数ゴールドが入ってくるようになった。
「こんな大金受け取れない」と言う母に、アラスタ様は「仕事の結果だ、受け取れ」と言い。
村長たちとも相談し、蓄えて荷馬車を買うことにした。
6頭立て8輪の大きな荷馬車は、南方の村々で過剰生産した野菜や家畜用飼料を集めて北方へ向かい。
北方の村々から卵や乳、干し肉などが積まれて帰ってくる。
今は1台だけだが、近くの村々も馬車馬の世話を協力してくれるということもあり、数年後には10台体制にと考えている。
ちょうどその荷馬車が村の広場で荷物の積み込みを行っている。
この後に領館へ寄るので便乗させてもらうことにした。
ゴトゴトと揺れる荷台には、野菜と私たちと、護衛当番の第6歩兵小隊と。
話題は自然と私たちの将来のことになる。
再来月に迫ったフィーナ様の結婚式。
その後で現在の中隊を再編成するという計画があるらしい。
帝国との戦闘が起きる可能性が低い上に、私たちのように結婚したり妊娠出産する者も出始めたので、現状に合っていないのだ。
不測の事態に対応する即応部隊、北の村々で暮らしながら野盗やオオカミに備える屯田兵。
徴税官も兼ねた巡回要員、そして輸送隊。
歩兵中隊の大半と支援中隊の一部で、戦闘を主任務とする体制を組むらしい。
私たち支援中隊の再編は後回しらしいが、近衛や儀礼といった任務が主となるだろう。
出来れば領館の、アラスタ様に近い場所でお仕えしたい。
私たち家族に奇跡を起こしてくれて、私の尾を初めて愛してくれて、私を初めて愛してくれた人のお側でいたい。
結婚しても、いつか我が子を抱いても、その気持ちは変わらないだろう。
ただアラスタ様を慕う人は多いので、競争率はとても高そうだ。
(そういえば閣下は今、誰かの尾を撫でているのかしら…)
少しだけ昔のことを思い出す。
もう戻ることは出来ない、淡い思い出。
その領館が近づいてくる。
「ほらジェニス、起きて。」
私の肩を枕にして眠りこけるジェニスを揺する。
「あ~、そんなことしなくても。」
護衛のヒュードックの少年がニヤニヤしながら寄ってくる。
そして私たちの前に膝立ちになると。
「第7支援小隊、捧げェ銃!」
「はっ!
…あ?」
勢いよく立ち上がって腕を上げ、寝ぼけたままアサルトライフルが無いことに焦るジェニス。
そんな姿に私たちは笑い。
「よーし、停止ぃ!」
待ち受けていた第1歩兵小隊の当番が荷馬車を停めると、降ろす荷物のリストを持って乗ってくる。
「じゃあ、ありがとうございました。」
「お疲れ様、任務頑張ってね。」
ジェニスを伴って宿舎へ向かう。
着替えて準備したら、今日も任務が待っている。
返事のない家の奥に声をかけ、ドアを閉める。
ちょうど隣の家からジェニスが出てきたので、挨拶を交わすと一緒に歩き出す。
「どうしたの、眠そうね。」
半分寝ぼけたような表情であくびをかみ殺すジェニスに声をかける。
「今日は任務なのに、彼が遅くまで寝かせてくれなくて…」
「そう…新婚1か月だと、お盛んね。」
「誰のせいだと思ってるんですかぁ…」
ジェニスは眠そうな顔を向ける。
「昨日ミューさんの声、凄かったですよ…
二人でまったりしている時に背後からあんなの聞かされたら、そりゃ彼も興奮しますよ。」
「あら、それはごめんなさい…」
とんでもない藪蛇に、顔を背ける。
「他人様のエッチをとやかく言いませんけど、キューってもう大分大きいですよね。
胎教的に、いいんですか?」
「知らないわよ…そのキューが旦那をけしかけるんだもの。
でもまぁキューは激しいことしていないし、お腹の赤ちゃんも元気だってお医者様も言ってるわ。」
とはいえ。
普段は優しくて家族思いな二人なのに、ベッドだと私のお願いなんか全く聞かない。
キューは容赦なく私の理性を引きはがして羞恥心を鷲掴みにし、そんな私の姿に彼は興奮し。
1回や2回くらいじゃ全然許してくれない。
とはいえ私が望んだ結婚の形だし、私が本当に嫌がることは絶対にしないので文句は言えない。
おそらくキューは無意識のうちに嫉妬心とか独占欲を抱いているのだろう。
その対象が、相手が実の姉とはいえ、自分以外の人を抱く旦那に対してなのか。
それとも、相手が自分の旦那とはいえ、自分以外の人に抱かれる私に対してなのか。
「ところで…いつもあんなに激しいんですか?」
「…あなたの彼が二人になって、一緒になって攻められたら?」
その言葉に苦笑いを浮かべるジェニス。
「良かったですね、私たちの家だけ周りから距離があって…」
「あんなの他の人とか、間違ってもお母さんになんか聞かせられないわよ…」
正直、求められれば素直に嬉しいし、睦言を聞きながら腕の中で微睡むのも好きだ。
なのだが。
「愛されているのは嬉しいですけど…捧げた愛が数倍になって返ってくるんですが…」
「1年前は何も知らなかったのに、あの二人は一体どこで覚えるのやら…」
揃ってため息をつく。
「おはよう、二人とも。」
村の中心部を過ぎた辺りで、洗濯物を干す母と会った。
手伝っていたニューも柵を潜り、私の尾に抱きついてくる。
そんなニューの頭を撫でる。
「もう二人は起きてる?」
「二度寝していたわ。
1時間もすれば起きると思う。」
「そう、じゃあその頃に行ってみるわ。
スープ作ったから。」
母の食事を食べ損ねたのは残念だけど、そうも言っていられない。
「そうそう、ちょっと待って。
領館に行くのよね。」
そう言いながら母は家へ入ると、布で包まれた絵画を持ってくる。
「これをお納めしておいて。
大きいのは、あと数日かかると思うから。」
「分かった。」
その後いくつか言葉を交わすと、ニューの尾を撫でてじゃれていたジェニスを引きはがして再び歩き始める。
アラスタ様が創造した、パステルやポスカラと呼ばれる新たな画材。
それを使った母の絵画は王都でちょっとした話題となっている。
亜人をよく思わない貴族には売れないものの、気にしない平民にはよく売れているようで。
母の手元には毎月数ゴールドが入ってくるようになった。
「こんな大金受け取れない」と言う母に、アラスタ様は「仕事の結果だ、受け取れ」と言い。
村長たちとも相談し、蓄えて荷馬車を買うことにした。
6頭立て8輪の大きな荷馬車は、南方の村々で過剰生産した野菜や家畜用飼料を集めて北方へ向かい。
北方の村々から卵や乳、干し肉などが積まれて帰ってくる。
今は1台だけだが、近くの村々も馬車馬の世話を協力してくれるということもあり、数年後には10台体制にと考えている。
ちょうどその荷馬車が村の広場で荷物の積み込みを行っている。
この後に領館へ寄るので便乗させてもらうことにした。
ゴトゴトと揺れる荷台には、野菜と私たちと、護衛当番の第6歩兵小隊と。
話題は自然と私たちの将来のことになる。
再来月に迫ったフィーナ様の結婚式。
その後で現在の中隊を再編成するという計画があるらしい。
帝国との戦闘が起きる可能性が低い上に、私たちのように結婚したり妊娠出産する者も出始めたので、現状に合っていないのだ。
不測の事態に対応する即応部隊、北の村々で暮らしながら野盗やオオカミに備える屯田兵。
徴税官も兼ねた巡回要員、そして輸送隊。
歩兵中隊の大半と支援中隊の一部で、戦闘を主任務とする体制を組むらしい。
私たち支援中隊の再編は後回しらしいが、近衛や儀礼といった任務が主となるだろう。
出来れば領館の、アラスタ様に近い場所でお仕えしたい。
私たち家族に奇跡を起こしてくれて、私の尾を初めて愛してくれて、私を初めて愛してくれた人のお側でいたい。
結婚しても、いつか我が子を抱いても、その気持ちは変わらないだろう。
ただアラスタ様を慕う人は多いので、競争率はとても高そうだ。
(そういえば閣下は今、誰かの尾を撫でているのかしら…)
少しだけ昔のことを思い出す。
もう戻ることは出来ない、淡い思い出。
その領館が近づいてくる。
「ほらジェニス、起きて。」
私の肩を枕にして眠りこけるジェニスを揺する。
「あ~、そんなことしなくても。」
護衛のヒュードックの少年がニヤニヤしながら寄ってくる。
そして私たちの前に膝立ちになると。
「第7支援小隊、捧げェ銃!」
「はっ!
…あ?」
勢いよく立ち上がって腕を上げ、寝ぼけたままアサルトライフルが無いことに焦るジェニス。
そんな姿に私たちは笑い。
「よーし、停止ぃ!」
待ち受けていた第1歩兵小隊の当番が荷馬車を停めると、降ろす荷物のリストを持って乗ってくる。
「じゃあ、ありがとうございました。」
「お疲れ様、任務頑張ってね。」
ジェニスを伴って宿舎へ向かう。
着替えて準備したら、今日も任務が待っている。
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