どうしてこうなった 最終章

レイちゃん

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エピローグ~記すべき、いくつかの話~

ミュー(注:性的描写あり)

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ひとまずベガドリア男爵領が帝国の侵略を受ける恐れは極めて低くなり。
約束通り、私はアラスタ様に幾度か抱かれた。
接客教練の際に「いいか?」と言われ、そのままソファーに押し倒され。
キューと共に寝室を訪れ、散々尾を愛でられた後、熟睡する妹の隣で。
歩哨や妹に知られないよう必死で声を殺して、何となくの知識で愛し合い。
尾を撫でられながら足を絡め、唇や指で愛され愛し。
隠れて、いけないことをしているような背徳感に興奮して。
何となく、子を諦めて閣下の愛人のようなことをしながらお仕えする未来もいいかと思い始めた矢先、求愛を受けた。
彼は第3支援小隊所属のヒューフォックスだった。
とても誠実そうな人で、ニューのこともよく気にかけてくれると母から聞いていて。

そんな人の求愛を、私は断った。

なぜなら、その彼のことをキューが好きだったから。
私よりも妹の恋が成就することを願った。
そして、そのことがキューの耳に届き、生まれて初めての大ゲンカになった。
私はキューの幸せを願い、キューは私の幸せを願い。
妥協点など見いだせるはずもなく、話は平行線で感情論ばかりが衝突した。
そんなある日、再び接客教練で私はアラスタ様の元を訪れた。
既に私たちのケンカはアラスタ様の耳にも届いていた。

「ミュー、今まで凄く頑張ってきたのだろう。
 姉として母として、一生懸命にキューを守ったのだろう。
 だから、お前はお前できちんと幸せになれ。
 男爵の愛人は、お前の描いていた夢とは違うだろう。」

その言葉に、私の心に引っかかっていた正体不明の何かが消える気がして。
そして気が付くと、私は大声をあげて泣いていて。
何事かと入ってきた歩哨を追い返し、閣下は優しく頭を撫で。
そして閣下は私の尾を撫でることは無く。
翌日、私は彼に断りの返事の取り消しと、再考のための時間を一週間欲しいと言った。
そんな自分勝手な申し入れを彼は快諾してくれた。

一週間後、私は彼とキューを呼び出した。
そして、彼の求愛を受けることを伝えた。
喜ぶ彼とキューに、私は受けるための条件を付けた。
私と同じくらいキューも好きになって、きちんと平等に愛すること。
私から彼を奪うくらいの気持ちで、彼を愛すること。
二人とも「何言ってるの!?」と驚いたが、私の出した結論は変わらず。
そして「上手くいけば彼とも私とも一緒にいられる」と気づいたキューは、あっさりと私陣営に転び。
こうして奇妙な三角関係が出来上がった。




所属する小隊は違っても同じ支援中隊なので、休みはよく合った。
歩兵中隊みたいに領内巡回のような長時間拘束される任務が無いのも幸いだった。
三人で色々なことを話し合い、気が付けば私も彼のことが好きになっていて。
半年後、彼は「これでいいのかなぁ」という、なんとも締まりのないプロポーズをして。
私たちは「これでいいのよ」と即答をして。
聞いた人が驚きと呆れを混じらせながら祝福してくれる、奇妙な結婚が決まった。

母は真新しい白いシーツで、ヒューフォックス伝統の花嫁衣裳を作ってくれて。
第3支援小隊と第7支援小隊の皆が無理やり任務を他の小隊に押し付けて、式に参列してくれて。
アラスタ様やフィーナ様、母やニューの前で、新郎の両隣に新婦がいる、奇妙な結婚式が行われた。
様々な人と相談した結果、私たちの新居は母と同じ村の外れの、比較的新しい空き家になった。
掃除をし、行商人や近所の人たちから生活用品を買いそろえ、一週間ほどで暮らせるようになり。
私たちは一緒に、領館裏の宿舎から新居へと移り住んだ。
初めての夕げは魚が少々焦げたものの、満足いく出来で。
片付けも終わり、体も清め終わり。

私たちは初夜を迎えた。

過去のこともあって、私は男性を相手に不安だった。
しかし大切な人に愛されるということをアラスタ様から学んでいたからか、体や心が拒絶反応を起こすこともなく。
きちんと彼と愛し合え、男性相手という意味では私は彼に処女を捧げ、そして彼は私に童貞を捧げ。
耳元で「愛している」「可愛い」「気持ちいい」と睦言むつみごとをたくさん囁かれ。
横を見ると、顔を真っ赤にしてこちらをじっと見つめるキューと、私たちの影が壁で揺れていて。
そして破瓜の痛みと、お腹に何か入っているような違和感と、大切な人に抱かれた余韻に浸る私の目の前で。
彼は緊張でガチガチのキューを脱がせ、丁寧に愛し。
キューの息が十分に乱れたところで足を割り、ぐっと腰を押し込み。
私以上に痛がるキューを彼は何度も労り、キューは絶対に止めないでと繰り返し懇願して。
そんなキューを、彼は腕の中で優しくいつくしみながらゆっくりと規則的に体を揺らし。
最後に私と同じように抱きしめると、腰を奥まで強く押し込んで、小さく悲鳴を上げるキューの涙を吸い、唇を重ね。
全てが終わって、三人寄りそうように毛布に包まって、彼の腕を枕にして。
破瓜の痛みにスンスン泣いていたキューもいつしか寝てしまい、たきぎぜる音だけが部屋に響いて。

こんな日々を重ねながら家族になっていくんだろうなと、そんなことを思った。
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