どうしてこうなった 最終章

レイちゃん

文字の大きさ
上 下
14 / 22
最大の「ざまぁ」を、あなたに

講和交渉

しおりを挟む
北方のベガドリア男爵領において、小規模な侵略があった。
その報が王宮へもたらされた1か月後、駐在武官が至急報を持って登城してきた。
帝国からの親書を携え、既に第3皇女が帝都を出発したと。
突然のことに王宮は混乱し、御前会議が重ねられた。
全面戦争とは言わないが、交戦している国の元首に連なる者である。
どう対応すべきか、親書の中身はどう推察されるか。
とはいえ追い返すわけにもいかず、結局は相手の様子見という、当たり前の結論に落ち着き。
それなりに礼節ある出迎えをすることとなった。




「ご機嫌麗しく恐悦至極に存じます、国王陛下。」

帝国の第3皇女シュシャは見目麗しく、謁見の間の視線を独占した。
スラリとした長身に、薄紅のドレスがよく映えた。

「遠路はるばる、ご苦労でした。」

「ありがとうございます、国王陛下。
 我が皇帝からの親書でございます。
 ご披見のほど、よろしくお願い申し上げます。」

係の文官がシュシャ皇女から親書を受け取り、受け取った宰相が封を切り、そのまま国王の元へ運ばれる。
親書を広げた国王は、ただただ無言。

「…陛下?」

声をかけた宰相に、国王は親書を手渡す。
内容を目にした宰相も、また無言。

「貴国は…本気なのか?」

「はい、国王陛下。」

皇女シュシャは笑顔で。


「我が帝国は、殿講和します。
 貴国との交渉は、これからですが…出来れば交戦にならないことを願う限りです。
 不幸にも戦闘となったとしても、少なくともベガドリア男爵領は通過しません。」

その言葉に謁見の間がざわつく。
ベガドリア男爵領を通らなければ、帝国は肥沃な王家直轄地への重要な侵攻ルートを失うことになる。

それ以前に、国家が一男爵と講和など理解できない。

「いや、それも理解しがたいのだが…
 この後のものは何だと…」

「皇帝の意はそこにある通りでございます。」

ひときわ大きい声で。


「我が帝国は、貴国の第1王子が王太子あるいは国王に即位した場合。
 あるいは筆頭公爵が大公に任ぜられた場合。
 これらを我が国への宣戦布告と捉え、直ちに対抗措置を発動します。」


「なっ!?」

第1王子が腰を浮かせる。

「内政干渉するのか!?」

「とんでもございません王子殿下、帝国にその様な意図も権限もありませんわ。
 ただ、帝国には自国を守る義務がございます。
 殿下…この前の戦闘勃発時、どちらにいらっしゃいました?」

「北方だ。
 貴国が王国に攻め込むというのでな!」

第1王子の激昂げっこうに、皇女は頭を下げ。

「我が帝国の軍事機密をそこまで正確に掴み、迅速に対応できる。
 それほどまでに有能な方が現在交戦中の国の王太子になどなられれば、我が帝国にはただただ脅威。
 脅威は排除せねばならない。
 極論ですが、安全保障の王道ですわ。」

宰相や官僚の多くが心の中で頭を抱える。

見え透いた安っぽい挑発に乗ったために、第1王子は王太子になれる可能性を大きく失った。
何せ王太子になれば帝国は宣戦布告とみなすと、皇女はこの大人数の前で宣言したのだ。
ベガドリア男爵領への侵略が無いのであれば初手から大規模な軍事力行使も無いであろうが。
関税や通行税の値上げ、第三国への圧力など、やり方はいくらでもある。

そして第1王子の激昂は、マティス公爵の反論機会すら奪ってしまった。
国王陛下がこのことに気づかないわけがない。

(ご愁傷様です、マティス公爵閣下…)

彼らは心の中で思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...