どうしてこうなった 最終章

レイちゃん

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第2次ベガドリア戦役(アラスタ視点で)

野戦会議

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「殿下。」

ガーグ将軍の言葉にアラスタ様はギョッとした表情になり。

「総員、気を付け!
 ささぁげェつつ!」

号令に、兵士全員が盾を脇に置き、直立不動でアサルトライフルを体の前で縦に持つ。
まるで騎士の栄誉礼のように。
そのアラスタ様も先ほどの騎士に対し腰を折る。

「アラスタ様?」

「ひかえろ、フィーナ。
 ガーグ将軍は殿とおっしゃったのだ。
 であるならば、我々は今、帝国の皇室に連なる方の御前にいるのだぞ。」

あわてて私も頭を下げる。
ドレスではないので、ただ頭を下げるしかないが。

「勝った側の男爵が、敵国の私に頭を下げるのか?」

「私も貴族であれば。
 敵国であれ、敬意を示すのは人としての義です。」

「…我々が勝てぬはずだ。
 私の部下も、ここまで出来る人間は数えるほどしかいまいよ。
 頭を上げてくれ、ベガドリア男爵殿。」

長身の、美しい女性はニカッと笑う。

「第3皇女、シュシャだ。」




帝国の死傷者を回収するための荷馬車がゴトゴトと音を立てながら脇をゆっくりと進む。
彼らは槍どころか刀すらいておらず。
そのうちの一つが、帝国軍本陣から円卓と椅子を運んできた。
さすがに皇族を立ち話させるわけにもいかないのだろう。

全て、このシュシャ殿下は事前に考え、用意させていたのだろう。
促されてアラスタ様と私も着座する。
私たちの背後には「たぁてェつつ!」の号令と共に整列した兵士。

まるで何かの会談のように。

「それで、殿下。
 なぜ皇族の方が、この様な辺境の戦地にお越しなのですか?」

「皇族といっても継承権9位の末席だ。
 私が皇帝になる見込みは薄いし、私も窮屈な宮廷暮らしは苦手でな。
 だから南方方面軍の、要するに貴国と侵略する組織の責任者だ。」

挑発するようなシュシャ殿下の言葉にも、アラスタ様は眉一つ動かさず。

「まぁ要因はいくつかあるし、理由も複数あるのだが…
 最大の原因は貴殿、ベガドリア男爵殿だ。」

「私ですか?」

「そうとも。
 400で1万を打ち破れる兵力が現れれば、誰しも驚くだろう。
 なので、それなりの対策をして、倍の2万で襲撃してみれば…この有様か。」

重装歩兵は焼かれ、飛竜は撃ち落され。
更なる策が無ければ前回同様、後はアサルトライフルと迫撃砲で大打撃を受けると誰でも想像する。

「ただまぁ、純粋な興味があったのも事実だ。
 どんな老獪な策略家がベガドリアへ”飛ばされた”のかと思えば。」

「こんな小娘とは想像できませんでしたか、殿下?」

「私は神では無いのでな。」

ため息ひとつ。

「それで、どうするねベガドリア男爵殿。
 これだけの戦力、私を捕縛するか?」

「恐れながら、殿下…それはです。」

アラスタ様の言葉に、傍のガーグ将軍の表情が変わる。

「無意味とは、どういう意味でしょうか?」

「私が殿下を捕縛すれば。
 忠義に厚いガーグ将軍は総力を挙げて取り戻そうとするでしょう。」

「当然ですな。」

「そうなると、私はガーグ将軍と有能な将兵を皆殺しにせねばならない。」

アラスタ様は平然と。

「その気になれば、恐れながら。
 私はこの場にいながら皇帝陛下をも殺害できますよ。」
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