9 / 22
第2次ベガドリア戦役(アラスタ視点で)
帝国の奇策
しおりを挟む
「それにしても。」
アラスタ様は双眼鏡で戦場を見つめる。
「何で突撃してこないんだ?」
前回同様、先陣は騎兵隊だ。
しかし、常歩よりも遅い程度で、牛歩のごとくじわじわと進んでいる。
「騎兵の最大の武器は、速さだ。
駈歩で展開し、襲歩で一気に迫る。
ランスを構えて突撃されたら、塹壕やロープで事前準備でもしていない限り歩兵には脅威だ。」
「まぁ前回アサルトライフルで弾幕を張りましたからね。
それなりに対策はしているでしょう。」
おそらく相手も、兵士が持つ鉄の筒からクロスボウよりも高速の矢じりが毎秒何発も打ち出されるのは分かっているはずだ。
射程がどれくらいなのか正確には分からないが、300メートル以内なら軽装の鎧をも貫通できる。
「距離900。」
「あの、撃たないんですか…?」
「あんな遠方の敵、アサルトライフルで届くものか。
対物ライフルなら有効だが、十数丁しかないのに焼け石に水だ。」
「支援中隊の迫撃砲なら十分攻撃できますが、まずは相手の出方を見ましょう。
どのみち我々は防衛側です。」
じわじわと進む何千かの帝国軍騎兵隊。
横一面に、何重にも。
「飛竜確認!
9時の方向!距離2千!」
左側を監視していた作戦本部員が叫ぶ。
私を含め全員が双眼鏡で見ると、空を飛ぶ小さな点が十数個。
「やはりいたか!
支援小隊、第1および第2!スティンガー用意!」
「閣下!正面12時!」
ラッパの音に合わせ、騎兵が一気に左右へ展開する。
まるでカーテンが開かれるように。
そして、そこから現れたのは、荷馬車の上に乗った重装歩兵の大軍。
前後を逆にし、本来は馬に引かせる部分を、背後から人が押している。
「閣下!」
「考えたな。
あれなら足の遅い重装歩兵でも一気に進撃できる。」
アラスタ様の表情に焦りの色が見える。
「支援小隊、第3から第8!弾種、榴弾!目標、重装歩兵!
迫撃砲、発射始めっ!」
大隊長の声に、ボンボンという発射音と、少し遅れて敵陣で爆発音が聞こえてくる。
多くの荷馬車が吹き飛ぶが、それ以上の荷馬車が迫ってくる。
「アラスタ様!
歩兵中隊は…!」
「あの重装歩兵の鎧と大楯はアサルトライフルの弾じゃ抜けん!
支援小隊、第1および第2!目標、9時の飛竜!
スティンガー、攻撃始めっ!」
左翼から、先ほど正体不明の一団を吹き飛ばしたのと同じような物が、続けざまに空へ向かって飛んでいく。
「観測要員、全方向の対空監視を厳にせよ!
空飛ぶトカゲは何匹いるか分からんぞ!
あれに爆弾でも投げ込まれたら一巻の終わりだ!
第3から第8の支援小隊は現在の攻撃を続行しつつ対空攻撃命令に注意!」
『第5歩兵小隊より作戦本部!
敵重装歩兵、距離200!』
無線機で悲痛な叫び声が聞こえてくる。
200メートルといえば、前回の戦いで攻撃を開始した距離だ。
騎馬ほどではないが、荷馬車もそれなりの速度が出る。
アラスタ様は双眼鏡で戦場を見つめる。
「何で突撃してこないんだ?」
前回同様、先陣は騎兵隊だ。
しかし、常歩よりも遅い程度で、牛歩のごとくじわじわと進んでいる。
「騎兵の最大の武器は、速さだ。
駈歩で展開し、襲歩で一気に迫る。
ランスを構えて突撃されたら、塹壕やロープで事前準備でもしていない限り歩兵には脅威だ。」
「まぁ前回アサルトライフルで弾幕を張りましたからね。
それなりに対策はしているでしょう。」
おそらく相手も、兵士が持つ鉄の筒からクロスボウよりも高速の矢じりが毎秒何発も打ち出されるのは分かっているはずだ。
射程がどれくらいなのか正確には分からないが、300メートル以内なら軽装の鎧をも貫通できる。
「距離900。」
「あの、撃たないんですか…?」
「あんな遠方の敵、アサルトライフルで届くものか。
対物ライフルなら有効だが、十数丁しかないのに焼け石に水だ。」
「支援中隊の迫撃砲なら十分攻撃できますが、まずは相手の出方を見ましょう。
どのみち我々は防衛側です。」
じわじわと進む何千かの帝国軍騎兵隊。
横一面に、何重にも。
「飛竜確認!
9時の方向!距離2千!」
左側を監視していた作戦本部員が叫ぶ。
私を含め全員が双眼鏡で見ると、空を飛ぶ小さな点が十数個。
「やはりいたか!
支援小隊、第1および第2!スティンガー用意!」
「閣下!正面12時!」
ラッパの音に合わせ、騎兵が一気に左右へ展開する。
まるでカーテンが開かれるように。
そして、そこから現れたのは、荷馬車の上に乗った重装歩兵の大軍。
前後を逆にし、本来は馬に引かせる部分を、背後から人が押している。
「閣下!」
「考えたな。
あれなら足の遅い重装歩兵でも一気に進撃できる。」
アラスタ様の表情に焦りの色が見える。
「支援小隊、第3から第8!弾種、榴弾!目標、重装歩兵!
迫撃砲、発射始めっ!」
大隊長の声に、ボンボンという発射音と、少し遅れて敵陣で爆発音が聞こえてくる。
多くの荷馬車が吹き飛ぶが、それ以上の荷馬車が迫ってくる。
「アラスタ様!
歩兵中隊は…!」
「あの重装歩兵の鎧と大楯はアサルトライフルの弾じゃ抜けん!
支援小隊、第1および第2!目標、9時の飛竜!
スティンガー、攻撃始めっ!」
左翼から、先ほど正体不明の一団を吹き飛ばしたのと同じような物が、続けざまに空へ向かって飛んでいく。
「観測要員、全方向の対空監視を厳にせよ!
空飛ぶトカゲは何匹いるか分からんぞ!
あれに爆弾でも投げ込まれたら一巻の終わりだ!
第3から第8の支援小隊は現在の攻撃を続行しつつ対空攻撃命令に注意!」
『第5歩兵小隊より作戦本部!
敵重装歩兵、距離200!』
無線機で悲痛な叫び声が聞こえてくる。
200メートルといえば、前回の戦いで攻撃を開始した距離だ。
騎馬ほどではないが、荷馬車もそれなりの速度が出る。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説


婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。


私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる