どうしてこうなった 最終章

レイちゃん

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第2次ベガドリア戦役(アラスタ視点で)

踊る愚者

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「失礼します。
 家令殿、バズル男爵と名乗る方がお見えです。」

「父上が!?」

執務室で仕事をしていると、メイド姿のヒューホースが報告してきた。

「応接室にお通ししておりますが、いかがしましょうか。」

「行きます。」

書類を隣席のデュークに預けて執務室を出る。
先触れもなく父が訪問した?
こんな北の辺境へ?
疑問を抱きながらも応接室へと向かう。

「失礼します。」

「おぉフィーナ!
 久しぶりだな、元気そうじゃないか!」

そこにいたのは確かに父だった。

「おかげ様で、息災にしております。」

頭を下げる。
昨今の事務仕事で目の下にはクマがくっきりと出ているはずだが、父には元気に見えるらしい。


「ではフィーナ、王都へ帰るぞ。」


「は?」

突然の言葉に、耳を疑う。

「お待ちください。
 突然、何を…」

「この様な辺境の、亜人どもが跋扈ばっこする場所で仕事せずともよかろう。
 私がマティス公爵閣下にお願いして、お前のことを…」

「失礼、バズル男爵殿。
 私の家令を勝手に連れ出されては困るのだが。」

振り返ると、そこにはアラスタ様が立っていた。

「アラスタ様!」

「ベガドリア男爵殿。」

「バズル男爵殿、こんな遠方までお越しになられたのです。
 王宮の茶葉には遠く及びませんが、まぁ少しお話など。」

そばにいたヒューホースに紅茶を言いつけると、アラスタ様も着席される。

「さて、バズル男爵殿。
 お越しになられるとの先触れは聞いていないのですが、何用ですか。
 もし当方の連絡不行き届きならば、ご容赦頂きたいのですが。」

「いやいやベガドリア男爵殿。
 急な訪問であったので、こちらこそご容赦頂きたい。
 さて、フィーナを王都へ連れ帰りたいのだが…」


「バズル男爵殿。」


アラスタ様が父の言葉を遮る。

「フィーナ嬢を家令に命じたのは、国王陛下ですよ。
 まさか陛下の御言葉をくつがえすおつもりか?」

「そうではないのですよ。
 マティス公爵にお願いすれば、きっと陛下に取り成して頂けるでしょうからな。」

その名前に、嫌なことを思い出す。
泣き叫ぶ私を容赦なくベッドに押し倒し、犯そうとした男。
乱れた服を必死で抑え、廊下を走り抜け庭を転がり、偶然通りかかった貸し馬車に駆け込んだあの夜。

「失礼ながら…バズル男爵殿。
 その確約は?」

「もちろんあるとも!
 私は先ほど、マティス公爵の御指名により帝国へ親書を届けたところだからな。」

その言葉に私もアラスタ様も目を見開く。

「聞いていないのですが…」


「急なことだったのでしょう。
 何せ陛下が王宮でお倒れになられたですし。」


「陛下が!?
 意識が無いのですか!?」

「不敬ですぞ、ベガドリア男爵殿!
 御前会議でのことだったそうだが、ほんの一瞬とのことだ。
 今はご健康であらせられる。」

父の言葉に、思わず立ち上がったアラスタ様も腰を下ろす。
そして、少し考え込み。

「しかし。
 陛下が皇帝へ親書を送られるのであれば、駐在武官から使節団通過が通達されるはず。
 それすらも聞いていないのですが。」

「急なことだったのでしょう。
 何せマティス公爵閣下のお屋敷で命じられたのですからな。」
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