上 下
26 / 28
吸血鬼たちの宴

夕食会2

しおりを挟む
「ところでスーの領地経営はどうじゃ。」

「代官が優秀なので。
 私としては他に優秀な人が貴族に任ぜられれば、領地を譲ってもいいのですが。」

「それは無理な相談というものじゃろう。
 少なくとも国王がその方を手放すものか。
 主に身分を偽った近衛をつけたのも、そういうことじゃ。」

「アーシュさ…お嬢様の存在ですか。」

「無理せずとも自然な呼び方で良いよ。
 さて、我の存在は当然に秘匿したい最高機密じゃ。
 国家を根底からひっくり返しうるほどの存在、その力を知れば暴走するバカ貴族もおろう。
 それに、今のところ王国と帝国は友好関係を保ててはおるが、下手すると国一つ滅ぼしうる戦力を有しているとなれば。
 国家間の疑心暗鬼が”殺られる前に殺れ”の極論に直結するのは世の常だの。
 我を巡って内政干渉、それを突っぱねて戦争勃発、といったところか。」

「実際、それで吹っ飛んだ国が500年ほど前にありましたね。
 今の王国が建国される直前の群雄割拠時代に。
 スーも歴史で習わなかった?」

「…もしかして、当時この辺を統治していた公国が一夜で滅んだという。」

「正式には一週間よ。
 お嬢様の度重なる警告にも関わらず公国の軍門に従えと無理難題、拒否したら森ごと焼き払うと脅す傍若無人。
 だから大公と大臣将軍を軒並み誅殺し、穀倉地帯を焼き払ってあげたわ。」

「その情報を敵対勢力に流せば、後は混乱に乗じて勝手に滅ぼしてくれる…と。
 結果、それで戦乱を勝ち残ったのが童の先祖、今の王国じゃ。
 まぁ数十万人の難民を抱えて解決に苦心しておったが。」

「…公国の滅亡経緯って、歴史のミステリーですよ。
 未だに諸説ありますから。」

「500年前に生きていた人間などおらぬからの。
 まぁ我が実際に見たという証言が歴史学で通用するとは考えられぬから、ミステリーは解消されぬだろうよ。
 ただ伝聞を発表するだけで旋風を起こすことはできるじゃろう。
 文官志望のスーには有益かもしれぬの。」

「貴族としては男性と結婚して子を成すのが責務、というべきかもしれませんが。
 ただ残念ながら、そういった気はあまり無いんですよね。」

「男性と結婚のぉ…
 結婚はどうか知らぬが、とりあえずスーのファーストキスの相手はパティな気がするがの。」

「へ?」

「スーは同性とのは嫌悪を覚えるかしら?」

「嫌悪というか…そもそも親が期待していた候補は大半が金持ちのスケベジジイでしたから。
 私みたいな貧相な体を好む有力貴族の女性がいれば大喜びで売り飛ばしていたかもしれませんが。」

「そういうことならパティは恋人には優秀よ。
 基本真面目、猟犬を自認するだけあって外敵からは徹底して守ってくれる。
 まぁ私やお嬢様との不倫は目をつむって頂戴な。」

「それ、恋人として最もダメなやつじゃ…」

「良ければレクチャーしましょうか?」

「あ~…スー、気を付けた方がいいですよ。
 そこの淫獣に隙を見せると、あっという間に押し倒されますよ。」

「淫獣だなんて失礼ね。」

「あんな大きな二本も生やして、お尻にまで突っ込む人は淫獣よ淫獣!」

「えっ、あの…お尻!?」

「スー、親指と人差し指で丸を作ってみて。
 …パティのは、それよりも太いわ。」

「はぁ!?
 そんなの無理でしょ!」

「未経験の処女おボコが、いきなり上級者向けの話に加わるでないよ。
 心配せずとも、ここにいる者が主にトラウマ刻み込むようなことをするものか。
 あとな、慣れれば女の方が快楽は万倍深いから安心せい。」

「5分10分の隙間時間につまみ食いするには便利ですけどね。
 『言霊』で催淫させたら、服がシワにならないよう四つん這いにさせるか抱っこして、後は腰を振るだけ。
 というか、気持ちよさそうに喘いでいるくせに…」

「あの、キャティさんって、女性ですよね?
 その…二本も生えてるんですか…?」

「外見を変化させるくらい造作もないよ。
 例えば、ほれ。」

「こ、国王陛下!?」

「この程度なら認識阻害の応用で従者でも可能じゃ。
 さすがに体を霧に変えるのは吸血鬼でなければ無理じゃがの。
 さて、パティよ。
 アレを生やすのが淫獣ならば、我も淫獣ということになるが?」

「と言いますか。
 あんなの生やすのでしたら、きちんと孕ませて頂けませんか。
 お許し下されば喜んで産みますよ。」

「…さすがに、それは無理じゃ。」

「『言霊』でも無理なんですか?」

「死んだ者が蘇えらぬように、新たな命もまた神の領域じゃ。
 いくら外見が本物そっくりであろうと、所詮は虚構。
 偽りの精では孕むこと叶わぬよ。」

「そもそも『言霊』とは、その名の通り言葉の念で現実を捻じ曲げることわりです。
 スーが初めて見た『即死』も、相手の脳と心臓の動きを言葉の力で無理やりに止めるものです。
 そもそもスーの弓も、『射た矢で船が貫ける』と強く念じたからこその威力でしょう。」

「今でも破城槌くらいの威力じゃからの。
 精進すれば、ここから王宮を吹き飛ばせるようになるかもしれんの。
 それはそうと。
 パティめ、少々酔っておらぬか?」

「いくらアルコール度数が弱いからって…
 パティ、今は何をしているか分かる?」

「…私がスーのお嫁さんになった、お祝い?」

「…そろそろお開きにするか。」

「ベッドに寝かせてまいります。
 ほらパティ、立ちなさい。」

「…私、キャティのお嫁さんになるの?」

「そうよ~、お披露目の会場に行くわよ~。」

「…私、お嬢様のお嫁さんじゃなかったっけ?」

「指輪よりもを欲しがる花嫁は、さすがのお嬢様も困ると思うけど…」

「では私も失礼させて頂きます。
 デザートも本当においしかったです。」

「いつもの客間を使うとよいよ。
 明日の朝食後に王都の邸宅まで送ってやろう。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...