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吸血鬼たちの宴
夕食会2
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「ところでスーの領地経営はどうじゃ。」
「代官が優秀なので。
私としては他に優秀な人が貴族に任ぜられれば、領地を譲ってもいいのですが。」
「それは無理な相談というものじゃろう。
少なくとも国王がその方を手放すものか。
主に身分を偽った近衛をつけたのも、そういうことじゃ。」
「アーシュさ…お嬢様の存在ですか。」
「無理せずとも自然な呼び方で良いよ。
さて、我の存在は当然に秘匿したい最高機密じゃ。
国家を根底からひっくり返しうるほどの存在、その力を知れば暴走するバカ貴族もおろう。
それに、今のところ王国と帝国は友好関係を保ててはおるが、下手すると国一つ滅ぼしうる戦力を有しているとなれば。
国家間の疑心暗鬼が”殺られる前に殺れ”の極論に直結するのは世の常だの。
我を巡って内政干渉、それを突っぱねて戦争勃発、といったところか。」
「実際、それで吹っ飛んだ国が500年ほど前にありましたね。
今の王国が建国される直前の群雄割拠時代に。
スーも歴史で習わなかった?」
「…もしかして、当時この辺を統治していた公国が一夜で滅んだという。」
「正式には一週間よ。
お嬢様の度重なる警告にも関わらず公国の軍門に従えと無理難題、拒否したら森ごと焼き払うと脅す傍若無人。
だから大公と大臣将軍を軒並み誅殺し、穀倉地帯を焼き払ってあげたわ。」
「その情報を敵対勢力に流せば、後は混乱に乗じて勝手に滅ぼしてくれる…と。
結果、それで戦乱を勝ち残ったのが童の先祖、今の王国じゃ。
まぁ数十万人の難民を抱えて解決に苦心しておったが。」
「…公国の滅亡経緯って、歴史のミステリーですよ。
未だに諸説ありますから。」
「500年前に生きていた人間などおらぬからの。
まぁ我が実際に見たという証言が歴史学で通用するとは考えられぬから、ミステリーは解消されぬだろうよ。
ただ伝聞を発表するだけで旋風を起こすことはできるじゃろう。
文官志望のスーには有益かもしれぬの。」
「貴族としては男性と結婚して子を成すのが責務、というべきかもしれませんが。
ただ残念ながら、そういった気はあまり無いんですよね。」
「男性と結婚のぉ…
結婚はどうか知らぬが、とりあえずスーのファーストキスの相手はパティな気がするがの。」
「へ?」
「スーは同性とのそういったことは嫌悪を覚えるかしら?」
「嫌悪というか…そもそも親が期待していた候補は大半が金持ちのスケベジジイでしたから。
私みたいな貧相な体を好む有力貴族の女性がいれば大喜びで売り飛ばしていたかもしれませんが。」
「そういうことならパティは恋人には優秀よ。
基本真面目、猟犬を自認するだけあって外敵からは徹底して守ってくれる。
まぁ私やお嬢様との不倫は目をつむって頂戴な。」
「それ、恋人として最もダメなやつじゃ…」
「良ければレクチャーしましょうか?」
「あ~…スー、気を付けた方がいいですよ。
そこの淫獣に隙を見せると、あっという間に押し倒されますよ。」
「淫獣だなんて失礼ね。」
「あんな大きなモノ二本も生やして、お尻にまで突っ込む人は淫獣よ淫獣!」
「えっ、あの…お尻!?」
「スー、親指と人差し指で丸を作ってみて。
…パティのは、それよりも太いわ。」
「はぁ!?
そんなの無理でしょ!」
「未経験の処女が、いきなり上級者向けの話に加わるでないよ。
心配せずとも、ここにいる者が主にトラウマ刻み込むようなことをするものか。
あとな、慣れれば女の方が快楽は万倍深いから安心せい。」
「5分10分の隙間時間につまみ食いするには便利ですけどね。
『言霊』で催淫させたら、服がシワにならないよう四つん這いにさせるか抱っこして、後は腰を振るだけ。
というか、気持ちよさそうに喘いでいるくせに…」
「あの、キャティさんって、女性ですよね?
その…二本も生えてるんですか…?」
「外見を変化させるくらい造作もないよ。
例えば、ほれ。」
「こ、国王陛下!?」
「この程度なら認識阻害の応用で従者でも可能じゃ。
さすがに体を霧に変えるのは吸血鬼でなければ無理じゃがの。
さて、パティよ。
アレを生やすのが淫獣ならば、我も淫獣ということになるが?」
「と言いますか。
あんなの生やすのでしたら、きちんと孕ませて頂けませんか。
お許し下されば喜んで産みますよ。」
「…さすがに、それは無理じゃ。」
「『言霊』でも無理なんですか?」
「死んだ者が蘇えらぬように、新たな命もまた神の領域じゃ。
いくら外見が本物そっくりであろうと、所詮は虚構。
偽りの精では孕むこと叶わぬよ。」
「そもそも『言霊』とは、その名の通り言葉の念で現実を捻じ曲げる理です。
スーが初めて見た『即死』も、相手の脳と心臓の動きを言葉の力で無理やりに止めるものです。
そもそもスーの弓も、『射た矢で船が貫ける』と強く念じたからこその威力でしょう。」
「今でも破城槌くらいの威力じゃからの。
精進すれば、ここから王宮を吹き飛ばせるようになるかもしれんの。
それはそうと。
パティめ、少々酔っておらぬか?」
「いくらアルコール度数が弱いからって…
パティ、今は何をしているか分かる?」
「…私がスーのお嫁さんになった、お祝い?」
「…そろそろお開きにするか。」
「ベッドに寝かせてまいります。
ほらパティ、立ちなさい。」
「…私、キャティのお嫁さんになるの?」
「そうよ~、お披露目の会場に行くわよ~。」
「…私、お嬢様のお嫁さんじゃなかったっけ?」
「指輪よりも首輪を欲しがる花嫁は、さすがのお嬢様も困ると思うけど…」
「では私も失礼させて頂きます。
デザートも本当においしかったです。」
「いつもの客間を使うとよいよ。
明日の朝食後に王都の邸宅まで送ってやろう。」
「代官が優秀なので。
私としては他に優秀な人が貴族に任ぜられれば、領地を譲ってもいいのですが。」
「それは無理な相談というものじゃろう。
少なくとも国王がその方を手放すものか。
主に身分を偽った近衛をつけたのも、そういうことじゃ。」
「アーシュさ…お嬢様の存在ですか。」
「無理せずとも自然な呼び方で良いよ。
さて、我の存在は当然に秘匿したい最高機密じゃ。
国家を根底からひっくり返しうるほどの存在、その力を知れば暴走するバカ貴族もおろう。
それに、今のところ王国と帝国は友好関係を保ててはおるが、下手すると国一つ滅ぼしうる戦力を有しているとなれば。
国家間の疑心暗鬼が”殺られる前に殺れ”の極論に直結するのは世の常だの。
我を巡って内政干渉、それを突っぱねて戦争勃発、といったところか。」
「実際、それで吹っ飛んだ国が500年ほど前にありましたね。
今の王国が建国される直前の群雄割拠時代に。
スーも歴史で習わなかった?」
「…もしかして、当時この辺を統治していた公国が一夜で滅んだという。」
「正式には一週間よ。
お嬢様の度重なる警告にも関わらず公国の軍門に従えと無理難題、拒否したら森ごと焼き払うと脅す傍若無人。
だから大公と大臣将軍を軒並み誅殺し、穀倉地帯を焼き払ってあげたわ。」
「その情報を敵対勢力に流せば、後は混乱に乗じて勝手に滅ぼしてくれる…と。
結果、それで戦乱を勝ち残ったのが童の先祖、今の王国じゃ。
まぁ数十万人の難民を抱えて解決に苦心しておったが。」
「…公国の滅亡経緯って、歴史のミステリーですよ。
未だに諸説ありますから。」
「500年前に生きていた人間などおらぬからの。
まぁ我が実際に見たという証言が歴史学で通用するとは考えられぬから、ミステリーは解消されぬだろうよ。
ただ伝聞を発表するだけで旋風を起こすことはできるじゃろう。
文官志望のスーには有益かもしれぬの。」
「貴族としては男性と結婚して子を成すのが責務、というべきかもしれませんが。
ただ残念ながら、そういった気はあまり無いんですよね。」
「男性と結婚のぉ…
結婚はどうか知らぬが、とりあえずスーのファーストキスの相手はパティな気がするがの。」
「へ?」
「スーは同性とのそういったことは嫌悪を覚えるかしら?」
「嫌悪というか…そもそも親が期待していた候補は大半が金持ちのスケベジジイでしたから。
私みたいな貧相な体を好む有力貴族の女性がいれば大喜びで売り飛ばしていたかもしれませんが。」
「そういうことならパティは恋人には優秀よ。
基本真面目、猟犬を自認するだけあって外敵からは徹底して守ってくれる。
まぁ私やお嬢様との不倫は目をつむって頂戴な。」
「それ、恋人として最もダメなやつじゃ…」
「良ければレクチャーしましょうか?」
「あ~…スー、気を付けた方がいいですよ。
そこの淫獣に隙を見せると、あっという間に押し倒されますよ。」
「淫獣だなんて失礼ね。」
「あんな大きなモノ二本も生やして、お尻にまで突っ込む人は淫獣よ淫獣!」
「えっ、あの…お尻!?」
「スー、親指と人差し指で丸を作ってみて。
…パティのは、それよりも太いわ。」
「はぁ!?
そんなの無理でしょ!」
「未経験の処女が、いきなり上級者向けの話に加わるでないよ。
心配せずとも、ここにいる者が主にトラウマ刻み込むようなことをするものか。
あとな、慣れれば女の方が快楽は万倍深いから安心せい。」
「5分10分の隙間時間につまみ食いするには便利ですけどね。
『言霊』で催淫させたら、服がシワにならないよう四つん這いにさせるか抱っこして、後は腰を振るだけ。
というか、気持ちよさそうに喘いでいるくせに…」
「あの、キャティさんって、女性ですよね?
その…二本も生えてるんですか…?」
「外見を変化させるくらい造作もないよ。
例えば、ほれ。」
「こ、国王陛下!?」
「この程度なら認識阻害の応用で従者でも可能じゃ。
さすがに体を霧に変えるのは吸血鬼でなければ無理じゃがの。
さて、パティよ。
アレを生やすのが淫獣ならば、我も淫獣ということになるが?」
「と言いますか。
あんなの生やすのでしたら、きちんと孕ませて頂けませんか。
お許し下されば喜んで産みますよ。」
「…さすがに、それは無理じゃ。」
「『言霊』でも無理なんですか?」
「死んだ者が蘇えらぬように、新たな命もまた神の領域じゃ。
いくら外見が本物そっくりであろうと、所詮は虚構。
偽りの精では孕むこと叶わぬよ。」
「そもそも『言霊』とは、その名の通り言葉の念で現実を捻じ曲げる理です。
スーが初めて見た『即死』も、相手の脳と心臓の動きを言葉の力で無理やりに止めるものです。
そもそもスーの弓も、『射た矢で船が貫ける』と強く念じたからこその威力でしょう。」
「今でも破城槌くらいの威力じゃからの。
精進すれば、ここから王宮を吹き飛ばせるようになるかもしれんの。
それはそうと。
パティめ、少々酔っておらぬか?」
「いくらアルコール度数が弱いからって…
パティ、今は何をしているか分かる?」
「…私がスーのお嫁さんになった、お祝い?」
「…そろそろお開きにするか。」
「ベッドに寝かせてまいります。
ほらパティ、立ちなさい。」
「…私、キャティのお嫁さんになるの?」
「そうよ~、お披露目の会場に行くわよ~。」
「…私、お嬢様のお嫁さんじゃなかったっけ?」
「指輪よりも首輪を欲しがる花嫁は、さすがのお嬢様も困ると思うけど…」
「では私も失礼させて頂きます。
デザートも本当においしかったです。」
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