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本当の本編(メイド無双)

パティ、進撃開始

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「来たの。」

転移した先は、この国の王の私室だった。
お嬢様に対しの頭が少々高いようにも感じるが、他の者が平伏しているので良しとしよう。
まぁスーが床に膝をつくのは仕方ないだろうが。

『パティ。』

お嬢様の念話。
声を介さずに直接頭へと届く御言葉を頂けるのは、私とキャティだけ。

『はい、お嬢様。』

『スーの両親と義理の妹を連れてまいれ。
 殺すでないぞ。』

『はい。
 第三者に妨害された場合、どうしましょうか。』

『極力殺さずに無力化せよ。
 スーに対する無法は、この国の法で裁くべきじゃ。
 我らのようにわけじゃないからの。
 証言は多い方がよかろう。』

『心得ました。』

まず先ほどの倉庫へ飛んで、3人を捕える。
あの家に揃っていてくれれば面倒ないのだが。

「…ではお嬢様、行ってまいります。」

「うむ。」




倉庫へ飛ぶと、その辺を軽く歩いて適当な使用人を探す。
やがて衛兵が駆け寄ってきたので、言霊で動きを止めて喋らせる。
当主は書斎にいたが、奥方はマダムのお茶会で義妹はダンスのレッスンらしい。

お嬢様やキャティと違って、私の言霊は複雑な命令を強制できない。
『黙れ』『動くな』は可能だが『あそこに行って誰々を連れて来い』は無理だ。
仕方ないので家令と御者のみ連れ出し、当主も含め他は倉庫へ放り込んで外から施錠しておく。
おまけにドアをその辺の棚で塞いでおいたので破れないだろう。

「さて、近いのは?」

「お…奥方様の方だ…」

老齢に近い家令はガタガタと震えている。
まぁ嘘は言っていないだろう。
お嬢様の命令は”殺すな”なので、嘘や妨害によりお嬢様の時間を浪費させた場合は殺すだけだ。
メイド長なり執事なり、他に予定を知っていそうな人間はいるだろう。

「ならば、そちらから向かいます。
 適当な理由で連れ出すように。
 余計な真似をした場合、フィッツ男爵と使用人を家族を含め皆殺しにします。」

嘘八百だが、私が言葉一つで体の動きを止めたり沈黙させたりするので、脅しには十分だろう。
既に私という存在が、にいる者だと理解しているはずだ。




やがて馬車はお茶会中のサロンに着き、数分後に厚化粧の貴族を連れてきた。
見ず知らずのメイドが自家の馬車に乗っているのを見て、ギャーギャー。
五月蠅いので言霊で黙らせ、倉庫から持ってきた縄で縛って足蹴にする。

「では、次は義妹です。」

家令を通じて御者に命令する。
あとついでに暴れる厚化粧が鬱陶しいので、吐かない程度に横腹を蹴って大人しくさせる。
お嬢様の命令は”連れて来い”なので、腕一本くらいならへし折ってもいいだろうか。
ただ万が一にもショック死されると、お嬢様に申し訳が立たない。
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