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本編(ざまぁ)
スーが干からびてしまうよ。
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私は、パティさんに抱きつかれていた。
一方的に。
私の膝に向かい合って座るように、両手を背中に回して服を掴んで。
そして、一心不乱に血を吸っていた。
「う…んふ…」
牙を突き立てられているはずなのだが、痛みは一切感じない。
ただ、シニヨンのメイドの、どこか荒い息づかいに恥ずかしさを感じる。
あと呼吸がくすぐったい。
「ういのう…まるで仔犬がじゃれているようで。」
「私は、パティを抱き枕にお昼寝するお嬢様も好きですよ。」
そんな私たちを生温かな眼差しを向けるアーシュさんとキャティさん。
「んぁ…」
パティさんが顔を離す。
とろんとした目は涙で潤み、小さく開いた口は血で濡れ、頬は興奮したように染まり。
普段の無表情が嘘のように、恍惚とした表情は何ともいえない色気がある。
「もっと…」
再び首筋に顔を埋められる。
「まぁスーも従者になったことじゃし、改めて自己紹介といくかの。
我はアーシュ、吸血鬼の”真祖”じゃ。」
「キャティよ。
生まれは第二次神聖王国末期、元性奴。
人が羨むほどの人心掌握術からエッチのテクニックまで、知りたいことがあればお気軽に。
お嬢様の好みに特化しているけれど、料理の腕も自信はあるわ。」
「そして、そなたの血を吸っているのが雑務担当のパティじゃ。
600年…ほど前になるかの。
野盗に襲われた行商人の、唯一の生き残りじゃ。
警戒心が強く人見知りじゃが、一度仲間と認識すると忠実で愛情深い。
基本的に優秀ではあるが若干詰めが甘く抜けているところもある。
ま、それも魅力じゃがの。」
そして、どうやらこの中で最も私の血を気に入ったらしい。
アーシュさんやキャティさんが指先から吸うのに対し、パティさんは首筋からだ。
まぁ吸血鬼というイメージでは、これが”自然”ではあるのだけれど。
「というか、いつまで吸っておる。
スーが干からびてしまうよ。」
首根っこを掴むと私から引きはがすアーシュさん。
「あの、お代わりは…」
「そのように分別なくがっつくと”お仕置き”されますよ?」
ビクリと体を震わせると、一瞬で大人しくなる。
「あの、アーシュさん。
あまり手荒な折檻は…」
「折檻?
何を言っておる。」
「逆です。
何もしないのですよ。
犬へのお仕置きはおあずけと相場が決まっています。」
キャティさんが私の両肩に手を置くと、耳元で。
「そう。
大好きな大好きなお嬢様が、例えば目の前で私とエッチしていたとしても。
触れることも、自分で慰めることも許さず、ただ見ているだけ。」
「あの泣きそうな表情は反則級に脊髄をゾクゾクさせるの。
ま、従者の色恋に口は挟まぬが…出来ればそなたはピュアバージンを維持してほしいの。」
それは何とも言えない。
ただ、私の血を心底好きになったパティさんが”血の味を失うの?”みたいな、絶望的な表情を浮かべている。
私は異性愛者だと自認しているけれど…うん、これは色々と反則だと思う。
「念のため断っておくが。
そなたは”吸血鬼の従者”とはいえ、生まれたばかりのひよっこじゃ。
牙を生成することも出来ぬし、血を吸うことも出来ぬ。
おそらく無理に血を飲んでも吐くじゃろう。」
「あと言霊は習得した方がいいですよ。
何かと便利です。」
確かに強力で便利なのだろうけど、いいのだろうか。
何の痕跡も残さず移動したり殺したり。
正直、窃盗も殺人も思うがまま、ではないのだろうか。
(まぁしないけど…)
こういうのは力に溺れると、ろくな結果にならないものだ。
一方的に。
私の膝に向かい合って座るように、両手を背中に回して服を掴んで。
そして、一心不乱に血を吸っていた。
「う…んふ…」
牙を突き立てられているはずなのだが、痛みは一切感じない。
ただ、シニヨンのメイドの、どこか荒い息づかいに恥ずかしさを感じる。
あと呼吸がくすぐったい。
「ういのう…まるで仔犬がじゃれているようで。」
「私は、パティを抱き枕にお昼寝するお嬢様も好きですよ。」
そんな私たちを生温かな眼差しを向けるアーシュさんとキャティさん。
「んぁ…」
パティさんが顔を離す。
とろんとした目は涙で潤み、小さく開いた口は血で濡れ、頬は興奮したように染まり。
普段の無表情が嘘のように、恍惚とした表情は何ともいえない色気がある。
「もっと…」
再び首筋に顔を埋められる。
「まぁスーも従者になったことじゃし、改めて自己紹介といくかの。
我はアーシュ、吸血鬼の”真祖”じゃ。」
「キャティよ。
生まれは第二次神聖王国末期、元性奴。
人が羨むほどの人心掌握術からエッチのテクニックまで、知りたいことがあればお気軽に。
お嬢様の好みに特化しているけれど、料理の腕も自信はあるわ。」
「そして、そなたの血を吸っているのが雑務担当のパティじゃ。
600年…ほど前になるかの。
野盗に襲われた行商人の、唯一の生き残りじゃ。
警戒心が強く人見知りじゃが、一度仲間と認識すると忠実で愛情深い。
基本的に優秀ではあるが若干詰めが甘く抜けているところもある。
ま、それも魅力じゃがの。」
そして、どうやらこの中で最も私の血を気に入ったらしい。
アーシュさんやキャティさんが指先から吸うのに対し、パティさんは首筋からだ。
まぁ吸血鬼というイメージでは、これが”自然”ではあるのだけれど。
「というか、いつまで吸っておる。
スーが干からびてしまうよ。」
首根っこを掴むと私から引きはがすアーシュさん。
「あの、お代わりは…」
「そのように分別なくがっつくと”お仕置き”されますよ?」
ビクリと体を震わせると、一瞬で大人しくなる。
「あの、アーシュさん。
あまり手荒な折檻は…」
「折檻?
何を言っておる。」
「逆です。
何もしないのですよ。
犬へのお仕置きはおあずけと相場が決まっています。」
キャティさんが私の両肩に手を置くと、耳元で。
「そう。
大好きな大好きなお嬢様が、例えば目の前で私とエッチしていたとしても。
触れることも、自分で慰めることも許さず、ただ見ているだけ。」
「あの泣きそうな表情は反則級に脊髄をゾクゾクさせるの。
ま、従者の色恋に口は挟まぬが…出来ればそなたはピュアバージンを維持してほしいの。」
それは何とも言えない。
ただ、私の血を心底好きになったパティさんが”血の味を失うの?”みたいな、絶望的な表情を浮かべている。
私は異性愛者だと自認しているけれど…うん、これは色々と反則だと思う。
「念のため断っておくが。
そなたは”吸血鬼の従者”とはいえ、生まれたばかりのひよっこじゃ。
牙を生成することも出来ぬし、血を吸うことも出来ぬ。
おそらく無理に血を飲んでも吐くじゃろう。」
「あと言霊は習得した方がいいですよ。
何かと便利です。」
確かに強力で便利なのだろうけど、いいのだろうか。
何の痕跡も残さず移動したり殺したり。
正直、窃盗も殺人も思うがまま、ではないのだろうか。
(まぁしないけど…)
こういうのは力に溺れると、ろくな結果にならないものだ。
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