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本編(ざまぁ)
それはそれは、頭がズル賢くていらっしゃる。
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「戻りました。」
「ブゴウッ!」
いきなり虚空から現れるパティさん。
それと、手足を縛られ猿ぐつわをされた男女。
「お父様!?」
それは、私の父と義母と義妹。
「申し訳ありません。
全員バラバラの場所だったため、少々遅くなりました。」
「モゴウ!フグゥ!」
何を言っているのか分からないが、まず私の顔に気づき。
そして国王陛下の御前であることに驚き。
そんなところだろう。
「では紹介させて頂きます。
こちらはフィッツ男爵夫妻と、その実子です。
死別した前妻との子であるスーを、外部にバレない程度に家族そろって迫害しておりました。
そして実子フィアンの婚姻相手を世話してもらう謝礼や持参金に困った模様でして。
結果、それらをスーの”不慮の死”による保険金で賄おうとしたようです。」
え?
「それはそれは、頭がズル賢くていらっしゃる。
はじめましてフィッツ男爵。
そなたの娘が紛れ込んだ”魔女の森”に住む吸血鬼のアーシュじゃ。」
心底冷たい笑顔でカップを掲げるアーシュさん。
多分、悪魔ってこういうイメージだ。
「じゃあ…」
「そうじゃ。
我の館から自宅へ戻った後、そなたを納屋で衰弱死させようとした真相じゃ。
死体が無くては保険金は出ないからの。
おそらく死んだ後で遠方へ運ぶ算段だったのじゃろう。
どこか遠くで死体が発見されれば、まぁ普通は貴族を捜査したりしまい。」
茫然とする私の前で、3人は揃ってモガモガ叫んでいる。
「何と…本当ですか、従者殿。」
「吸って確認したので、間違いありません。
全く、不味い血でした。」
国王陛下が促し、宰相様や近衛兵の数人が部屋を出ていく。
おそらく国王憲兵隊が自宅に派遣されるのだろう。
一般の警務隊と違い、対テロや貴族の犯罪を取り締まるエリート部隊だ。
必要とあらば公爵家にすら立ち入りが許されるのに、男爵家が敵うはずがない。
「それでお嬢様、この者は殺せばよいですか?」
「落ち着きなさい、パティ。
あくまでもスーが私の従者になる前の話じゃ。
ならば我らには関係のない話。
童が自国の法と責任において断罪すればよい。」
カップに一口。
そして。
「最も、これが従者になった後の話であれば…の。
パティ、童の国軍と貴族の私兵を壊滅させるのに何日かかる?」
「12時間ほどあれば。」
「だ、そうじゃ。
槍で突こうが矢を射ようが死なぬ我が従者が首を刈りに来ぬよう、努々忘れぬようにの。
言っておくが、我の猟犬は足が速く、容赦がないぞ?」
やってのけると明言したパティさん、微笑んだまま否定しないキャティさん。
そして、この部屋を凍り付かせるような雰囲気を称えたアーシュさん。
誰も、何も語らず。
「ところでキャティよ。
このフィッツ男爵の罪状は?」
「恐れながら、お嬢様。
殺意が明確である以上、まず第一級殺人の未遂。
誘拐と監禁は既遂、詐欺は未遂。
思い浮かぶ範囲では、この程度です。」
「いやはや童よ、思ったより重罪だの。」
微笑むアーシュさんと、顔面蒼白の陛下。
「のうスーや。
そなた、家族をどうする?」
横を見ると、猿ぐつわのまま何かを叫ぶ家族。
それは謝罪なのか、言い訳なのか。
「陛下。」
ソファーの陛下をしっかりと見つめ。
「確かに、私を虐め、あげくに殺そうとしました。
しかし、私にとっては、かけがえのない家族です。
ですので!」
その言葉に3人は心底安堵したような表情。
その顔をしっかりと見た後で。
「ですので、何卒、陛下の御恩情をもちまして!
家族には寛大な処刑をお願い申し上げます。」
「ブゴウッ!」
いきなり虚空から現れるパティさん。
それと、手足を縛られ猿ぐつわをされた男女。
「お父様!?」
それは、私の父と義母と義妹。
「申し訳ありません。
全員バラバラの場所だったため、少々遅くなりました。」
「モゴウ!フグゥ!」
何を言っているのか分からないが、まず私の顔に気づき。
そして国王陛下の御前であることに驚き。
そんなところだろう。
「では紹介させて頂きます。
こちらはフィッツ男爵夫妻と、その実子です。
死別した前妻との子であるスーを、外部にバレない程度に家族そろって迫害しておりました。
そして実子フィアンの婚姻相手を世話してもらう謝礼や持参金に困った模様でして。
結果、それらをスーの”不慮の死”による保険金で賄おうとしたようです。」
え?
「それはそれは、頭がズル賢くていらっしゃる。
はじめましてフィッツ男爵。
そなたの娘が紛れ込んだ”魔女の森”に住む吸血鬼のアーシュじゃ。」
心底冷たい笑顔でカップを掲げるアーシュさん。
多分、悪魔ってこういうイメージだ。
「じゃあ…」
「そうじゃ。
我の館から自宅へ戻った後、そなたを納屋で衰弱死させようとした真相じゃ。
死体が無くては保険金は出ないからの。
おそらく死んだ後で遠方へ運ぶ算段だったのじゃろう。
どこか遠くで死体が発見されれば、まぁ普通は貴族を捜査したりしまい。」
茫然とする私の前で、3人は揃ってモガモガ叫んでいる。
「何と…本当ですか、従者殿。」
「吸って確認したので、間違いありません。
全く、不味い血でした。」
国王陛下が促し、宰相様や近衛兵の数人が部屋を出ていく。
おそらく国王憲兵隊が自宅に派遣されるのだろう。
一般の警務隊と違い、対テロや貴族の犯罪を取り締まるエリート部隊だ。
必要とあらば公爵家にすら立ち入りが許されるのに、男爵家が敵うはずがない。
「それでお嬢様、この者は殺せばよいですか?」
「落ち着きなさい、パティ。
あくまでもスーが私の従者になる前の話じゃ。
ならば我らには関係のない話。
童が自国の法と責任において断罪すればよい。」
カップに一口。
そして。
「最も、これが従者になった後の話であれば…の。
パティ、童の国軍と貴族の私兵を壊滅させるのに何日かかる?」
「12時間ほどあれば。」
「だ、そうじゃ。
槍で突こうが矢を射ようが死なぬ我が従者が首を刈りに来ぬよう、努々忘れぬようにの。
言っておくが、我の猟犬は足が速く、容赦がないぞ?」
やってのけると明言したパティさん、微笑んだまま否定しないキャティさん。
そして、この部屋を凍り付かせるような雰囲気を称えたアーシュさん。
誰も、何も語らず。
「ところでキャティよ。
このフィッツ男爵の罪状は?」
「恐れながら、お嬢様。
殺意が明確である以上、まず第一級殺人の未遂。
誘拐と監禁は既遂、詐欺は未遂。
思い浮かぶ範囲では、この程度です。」
「いやはや童よ、思ったより重罪だの。」
微笑むアーシュさんと、顔面蒼白の陛下。
「のうスーや。
そなた、家族をどうする?」
横を見ると、猿ぐつわのまま何かを叫ぶ家族。
それは謝罪なのか、言い訳なのか。
「陛下。」
ソファーの陛下をしっかりと見つめ。
「確かに、私を虐め、あげくに殺そうとしました。
しかし、私にとっては、かけがえのない家族です。
ですので!」
その言葉に3人は心底安堵したような表情。
その顔をしっかりと見た後で。
「ですので、何卒、陛下の御恩情をもちまして!
家族には寛大な処刑をお願い申し上げます。」
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