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もう一つの、王都の日常
吸血鬼の日常
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王立学院の男子寮、当然ながら授業やイベントのある時間は学生はいない。
しかし、その学生に仕えるメイドには様々な仕事がある。
洗濯や掃除といった寮内での雑務はもちろんのこと、主に言いつけられた買い出しに街へ出かけることもある。
とはいえ邸宅のメイドと比べると時間的な余裕は多い。
そのため外出ついでにお菓子を食べに行く者もいれば、仲の良いメイドと会話を楽しむ者もいる。
そして。
「…ふぅ…んぅ…」
グッタリとベッドに横たわり、荒い息をさせるメイドもいる。
涙で滲む視界で、濡れた右手を眺める。
「ん…」
右手を口元に持ってくると、吸うように口づけを繰り返す。
困ったことにキャティは、本人よりもパティの悦ばせ方を熟知している。
昨夜は何時間抱かれたか。
(本来の姿だと加減しないからなぁ、キャティ…)
靄のかかったような意識は晴れず、再び左手は胸を転がし、右手は下腹部へと延びて。
「パティ。」
背後からかけられた声に飛び起きる。
「キャ、キャティ!?
何でこんな時間に…」
ヌルという姿で授業に出ているはずのパティは、メイド服姿。
自慰しているところを眺めたり、そのまま犯したりすることなく、静かに。
「お嬢様がお呼びよ。」
余韻など吹き飛ぶ。
ベッドから降りると、呼吸一つ分の時間で身支度を整える。
お嬢様から与えられた正装。
シャツはシワ一つなく、棒タイは左右を完全に対称に、髪は一本のほつれもなく結い上げシニヨンキャップで包み。
「お待たせ。」
「行くわよ、『転移』」
「従者2名、お嬢様の御前にただいま戻りました。」
キャティと並び、お嬢様の前に跪く。
深々とソファに腰を落とし足を組むお嬢様の姿は、優雅で気品にあふれている。
あまりに愛おしく神々しく、全身全霊をもってお仕えしたい存在。
「うむ、ご苦労。
思えば、こうして揃うのも久方ぶりだの。」
「はい、お嬢様。
本当にご無沙汰しております。」
『念話』では毎朝報告をしているが、やはりお顔を見たい。
とはいえ王立学院でスーを護衛するのはお嬢様の勅命である以上、当然そちらが優先される。
「すまぬな。
『念話』で繋いだのじゃが、色々と多忙だったようでの。
キャティには手間をかけたの。」
「とんでもございません、お嬢様。
これからもパティが自慰していたら私にお申し付けください。
ただ急を要するものでなければ私も眺めるか犯すかしますので、少しお時間を頂きますが。」
「キャティ…!」
最低なことを言う同僚を睨みつけるが、そのキャティは平然な表情。
悔しいことに最近は少々強引に抱かれることに気持ちよさを感じるようになってきた気がする。
本来この体はお嬢様のためだけにあるのだが。
「さて、従者に告げる。
仕事の時間じゃ。」
お嬢様が深紅の瞳を細め、空気が一瞬で冷える。
「先日、スーが誘拐された一件は見知っておろう。」
目の前で見ていた。
お嬢様から監視するだけで手出し無用と厳命されていなければ、即座に皆殺しにしたところだ。
「スーを誘拐した実行犯と命令者はラルド伯爵が始末した。
ただ、その命令者をそそのかした貴族がいることが判明した。
キャティ。」
「はい、お嬢様。
王宮で命令者が斬殺された後、その血を舐めました。」
血は嘘をつかない、真実を隠すこともできない。
吸血鬼やその従者にとって、これほど簡単で確実な尋問は無い。
「そういうことじゃ。
ではパティ、我の忠実で優秀な猟犬であることを示す時間じゃ。」
「何なりとお命じください、お嬢様。
そのようにして御覧に入れます。」
「パティよ、スーは我の従者じゃ。
ならば、その従者に手を出した愚か者は相応の報復を受けるべきであろう。」
「もちろんです、お嬢様。」
当然のことだ。
お嬢様の所有物に汚い手で触れることは罪だ。
「それで、その愚か者はいかがしましょうか。
連中が貧民にしたように、バラバラ死体にしてやりましょうか。
一晩頂ければ、家族から使用人まで残らず皆殺しにして、王宮の庭先に放り込むことも可能です。
もしくは監督責任を問うて国王も殺した方がいいでしょうか。」
「待ちなさい。」
横を見ると、心底呆れたような表情のキャティ。
「スーに手を出したことに腹立たしく思うのには同感だけれど。
あなた、それで国家を崩壊させる気?」
「そこまでは無用じゃ。
今回の一件、童の監督責任を問うほどでも無い。
その貴族本人のみじゃ、心臓を止めれば後は病死として扱われるであろうよ。」
「お嬢様が慈悲深いのは存じ上げておりますが…
その愚か者は、一連の殺人を吸血鬼の仕業などと吹聴しました。
それだけで領民丸ごと万死に値しますが。」
お嬢様の決定に異論を唱えるわけではないが、それくらいは常識だ。
スーはお嬢様の所有物であり、仲間であり、家族だ。
「おそらくは偶然、そう推測しておる。
今回の発案者は我らの存在を知っているわけではあるまい。
”魔女の森”と吸血鬼の伝説はよく知られておるから、そこを利用しただけであろうよ。
ま、それも吸えば一切合切分かるであろうよ。
万が一、相手が真祖や他の従者だった場合は全力で逃げ帰るように。」
しかし、その学生に仕えるメイドには様々な仕事がある。
洗濯や掃除といった寮内での雑務はもちろんのこと、主に言いつけられた買い出しに街へ出かけることもある。
とはいえ邸宅のメイドと比べると時間的な余裕は多い。
そのため外出ついでにお菓子を食べに行く者もいれば、仲の良いメイドと会話を楽しむ者もいる。
そして。
「…ふぅ…んぅ…」
グッタリとベッドに横たわり、荒い息をさせるメイドもいる。
涙で滲む視界で、濡れた右手を眺める。
「ん…」
右手を口元に持ってくると、吸うように口づけを繰り返す。
困ったことにキャティは、本人よりもパティの悦ばせ方を熟知している。
昨夜は何時間抱かれたか。
(本来の姿だと加減しないからなぁ、キャティ…)
靄のかかったような意識は晴れず、再び左手は胸を転がし、右手は下腹部へと延びて。
「パティ。」
背後からかけられた声に飛び起きる。
「キャ、キャティ!?
何でこんな時間に…」
ヌルという姿で授業に出ているはずのパティは、メイド服姿。
自慰しているところを眺めたり、そのまま犯したりすることなく、静かに。
「お嬢様がお呼びよ。」
余韻など吹き飛ぶ。
ベッドから降りると、呼吸一つ分の時間で身支度を整える。
お嬢様から与えられた正装。
シャツはシワ一つなく、棒タイは左右を完全に対称に、髪は一本のほつれもなく結い上げシニヨンキャップで包み。
「お待たせ。」
「行くわよ、『転移』」
「従者2名、お嬢様の御前にただいま戻りました。」
キャティと並び、お嬢様の前に跪く。
深々とソファに腰を落とし足を組むお嬢様の姿は、優雅で気品にあふれている。
あまりに愛おしく神々しく、全身全霊をもってお仕えしたい存在。
「うむ、ご苦労。
思えば、こうして揃うのも久方ぶりだの。」
「はい、お嬢様。
本当にご無沙汰しております。」
『念話』では毎朝報告をしているが、やはりお顔を見たい。
とはいえ王立学院でスーを護衛するのはお嬢様の勅命である以上、当然そちらが優先される。
「すまぬな。
『念話』で繋いだのじゃが、色々と多忙だったようでの。
キャティには手間をかけたの。」
「とんでもございません、お嬢様。
これからもパティが自慰していたら私にお申し付けください。
ただ急を要するものでなければ私も眺めるか犯すかしますので、少しお時間を頂きますが。」
「キャティ…!」
最低なことを言う同僚を睨みつけるが、そのキャティは平然な表情。
悔しいことに最近は少々強引に抱かれることに気持ちよさを感じるようになってきた気がする。
本来この体はお嬢様のためだけにあるのだが。
「さて、従者に告げる。
仕事の時間じゃ。」
お嬢様が深紅の瞳を細め、空気が一瞬で冷える。
「先日、スーが誘拐された一件は見知っておろう。」
目の前で見ていた。
お嬢様から監視するだけで手出し無用と厳命されていなければ、即座に皆殺しにしたところだ。
「スーを誘拐した実行犯と命令者はラルド伯爵が始末した。
ただ、その命令者をそそのかした貴族がいることが判明した。
キャティ。」
「はい、お嬢様。
王宮で命令者が斬殺された後、その血を舐めました。」
血は嘘をつかない、真実を隠すこともできない。
吸血鬼やその従者にとって、これほど簡単で確実な尋問は無い。
「そういうことじゃ。
ではパティ、我の忠実で優秀な猟犬であることを示す時間じゃ。」
「何なりとお命じください、お嬢様。
そのようにして御覧に入れます。」
「パティよ、スーは我の従者じゃ。
ならば、その従者に手を出した愚か者は相応の報復を受けるべきであろう。」
「もちろんです、お嬢様。」
当然のことだ。
お嬢様の所有物に汚い手で触れることは罪だ。
「それで、その愚か者はいかがしましょうか。
連中が貧民にしたように、バラバラ死体にしてやりましょうか。
一晩頂ければ、家族から使用人まで残らず皆殺しにして、王宮の庭先に放り込むことも可能です。
もしくは監督責任を問うて国王も殺した方がいいでしょうか。」
「待ちなさい。」
横を見ると、心底呆れたような表情のキャティ。
「スーに手を出したことに腹立たしく思うのには同感だけれど。
あなた、それで国家を崩壊させる気?」
「そこまでは無用じゃ。
今回の一件、童の監督責任を問うほどでも無い。
その貴族本人のみじゃ、心臓を止めれば後は病死として扱われるであろうよ。」
「お嬢様が慈悲深いのは存じ上げておりますが…
その愚か者は、一連の殺人を吸血鬼の仕業などと吹聴しました。
それだけで領民丸ごと万死に値しますが。」
お嬢様の決定に異論を唱えるわけではないが、それくらいは常識だ。
スーはお嬢様の所有物であり、仲間であり、家族だ。
「おそらくは偶然、そう推測しておる。
今回の発案者は我らの存在を知っているわけではあるまい。
”魔女の森”と吸血鬼の伝説はよく知られておるから、そこを利用しただけであろうよ。
ま、それも吸えば一切合切分かるであろうよ。
万が一、相手が真祖や他の従者だった場合は全力で逃げ帰るように。」
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